第244話 青のブロストⅠ

――時は遡り数分前――




「キキキキキキ、キ」


 ヤタイズナ達は、赤熱色に発光しながら落下して来るエクスプロージョン・ハーヴェスター達を回避しながら玉座の間へと飛んでいた。



「キキキキ……」

「キキキ……」

「くそっ、何匹いるんだこいつらは!」


 余りの数の多さに焦りと苛立ちを感じ始める中、前胸部の角に巻き付いているミミズさんが私に話しかける。


「ヤタイズナ、天井が見えて来たぞ!」


 その言葉を聞いて落ちてくるハーヴェスター達の先を見つめると天井とその近くに上の階への階段があった。


 ようやくか……よし、このままハーヴェスター達を避けながらあの階段、に……

 天井が一瞬蠢いたように見え、天井を凝視した私は、言葉を失う。


 大量のエクスプロージョン・ハーヴェスターが天井に密集し、天井を埋め尽くしていたのだ!

 あの数……最初に遭遇した群れの倍以上はあるぞ!? あんなにいたんじゃ近づくのは危険だ。


 何とか対処法を考えないと……そう考えていたその時、天井にいるハーヴェスターの一匹が私達の存在に気付いたのか、身体を赤熱色に発光させた。


 それに呼応するように周囲のハーヴェスター達も続々と発光する!

 そして、下の私達目掛けて――一斉に落下した。


「……は? はぁっ!?」


 嘘だろ!? あの数が一気に!?

 しかも一気に落ちてくるせいで逃げ道が何処にも無い、弾き返そうにも数が多すぎて間に合わない、回避不能だ!


「ど、どうするんじゃヤタイズナ!?」

「くっ……こうなったら一か八かだが、もう一度やるしかない! パピリオ、奴ら目掛けて粘糸をありったけ出してくれ!」

(分かりました、《粘糸》!)


 私の指示でパピリオが上に大量の粘糸を吐き続ける。

 そしてその粘糸が落下して来るハーヴェスター達に次々と付着する。


「よし、ガタク! さっきと同じように合図したら糸を斬れ!」

「了解で御座る!」


 私の角に粘糸を巻き付け、空中で糸を振り回しハーヴェスター達を巻き込み、螺旋階段での戦いの時と同じ様にハーヴェスターと糸の塊を作った。


「今だガタク、やれっ!」

「《斬撃》で御座る!」


 大きく振りかぶり、私の合図でガタクが斬撃で糸を切断、糸の塊は天井に向かって飛んでいく。

 そしてそのまま天井に激突し、張り付いた。


「全員一か所に集まって、なるべく下に移動するんだ!」


 私の指示で全員が私の元に集合、そのまま下降してハーヴェスター達から距離を取る。


『キキキキキキ、キ』


 発光が最大になったハーヴェスター達が一斉に爆発! 爆炎が舞い、周囲に甲殻の破片が飛び散る!

 破片は周りの壁に突き刺さり、そして下に居る私達にも飛んでくる!


「私達に向かって飛んでくる破片だけを撃ち落とすぞ! 《炎の角》、《斬撃》、《操炎》!」

「了解で御座る、《鎌鼬》!」

(《斬撃》っ!)

(《水鉄砲》!)

(《大鎌鼬》っす!)


 私を筆頭にガタク、ソイヤー、カヴキ、ドラッヘが甲殻の破片を撃ち落とし続ける。


 数十秒後、破片を全部撃ち落とし終えた私は真上を見上げる。

 先程までハーヴェスター達と糸の塊があった場所には巨大な大穴が空き、光が差し込んでいる。


 先程の爆発で上の階へと繋がったのか……あの穴は敵からしても想定外のはずだ、あそこからなら一気に上がれる!


「皆、あの穴から上に行くぞ!」


 私は先陣を切って大穴へと入り、しもべ達がそれに続く。

 煙をかき分けながら進み、大穴から飛び出した私は辺りを見渡す。


 壁や床、柱が滅茶苦茶に壊れているため、この場所が何処なのか一瞬わからなかったが、破壊された玉座を見て、ここが玉座の間なのだと理解した。


 そして私の眼の前に青い鎧を着た男の姿が。


「これはこれは……随分と派手な登場だ……ふふふふふふふ……待っていましたよ、魔蟲王ヤタイズナ!」


 笑みを浮かべて叫ぶブロストに負けじと私も叫んだ。


「この国を、そしてオリーブを返してもらうぞ、ブロストッ!!」






 ――地面に着地した私は、倒れている勇者達の姿を発見する。


「あれほどの力を有していた勇者達がこんな……」

「殿っ!」


 少し遅れて、ガタク達が大穴から出て来た。


「ガタク、お前達は勇者たちの治療してくれ」

「分かったで御座る! バノン殿、手伝うで御座る」

「おう!」


 私の指示でガタク達が勇者達を回収し始める中、ブロストは愉快そうに喋り始めた。


「彼等はとても良い前菜となってくれました、この余興を見ている人間共も楽しんでくれたでしょう……ふふふふふ」

「本当に最低なやつじゃのう……気に入らん」

「これはこれは、お褒めにあずかり光栄です」

「こやつ……」

「落ち着いてよミミズさん、今やるべきはオリーブの救出だ」


 私は天井の繭を見る。

 恐らく、あの中にオリーブが閉じ込められているのだろう。


「オリーブ・アメリアの事はご心配無く、丁重にもてなしていますからねぇ……ふふふふふ!」

「……」


 あの繭を攻撃して中のオリーブを助けたいが……あのブロストの事だ、何か罠を仕掛けている可能性もあるからな……。

 ならやる事は一つ、ブロストを再起不能にしてから繭内のオリーブを助け出す!


「ミミズさん、私から降りて離れていてくれ」

「分かった、油断するでないぞ」


 ミミズさんが前胸部の角から降り、後方へと下がる。


「《炎の角》!」


 私は炎の角を使い、ブロスト目掛けて突進する!


「やる気十分のようですねぇ……ふふふふふ……では始めましょうか」


 ブロストが笑いながら右指を鳴らすと同時に3つの亀裂が出現、それぞれから一匹づつ虫が飛び出した。


「ジィィィィィィィィッ!!」

「ギチィィィィィ!」

「シャアアアアッ!!」

「オ・ケラ! レインボー、それにウィドーまで!」


 オ・ケラは爆発の爪、レインボーは虹の大顎、ウィドーは腹部から糸を射出して私に襲い掛かる!

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