第243話 虫愛づる姫君を救い出せⅨ
ブロストの言葉に動揺するユウヤ。
「そ、そんなあからさまな手なんかに、騙されるものか!」
「これから私が見せるモノは、全て真実……貴方にとっては悲しき現実と言うやつですねぇ」
ブロストが指を鳴らすと、天井から小さな水晶玉が降りて来た。
「この水晶玉には彼女の記憶を複製したモノが記録されてる……それを今から貴方に見せてあげましょう」
「……」
「ふふふふ……やはり気になるみたいですねぇ! ではどうぞご覧ください、オリーブ・アメリアの愛しの君の姿を!」
ブロストが指を鳴らすと同時に水晶玉から光が差し、5メートル程のスクリーンが現れ、映像が映し出された。
『どうも初めまして、ヤタイズナです』
スクリーンに、オリーブがヤタイズナと初めて出会った時の光景が映し出される。
「こいつは……まさか、救国の従魔使いの従魔!?」
「ご名答! この魔物こそが、オリーブ・アメリアの愛しの君なんですよぉ」
ブロストの言葉に衝撃を受けたユウヤが後退る。
「ふざけるなっ! オリーブがあの虫を愛しているなんて、絶対にありえない!」
「やはり受け入れられませんよねぇ……では続きを流しましょう」
スクリーンの映像が変わり、今度は自室でウィズと会話をしている光景になった。
『お姉ちゃん、今ヤタイズナさんの事考えてたでしょー』
『えっ!? どうして分かったの?』
『お姉ちゃんはヤタイズナさんの事を考えている時、頬が少し赤くなってるんだよ?』
『そ、そうなの?』
『お姉ちゃんは本当にヤタイズナさんの事が大好きなんだねー』
『うん……』
「嘘だ嘘だ嘘だっ! これは貴様が造りだした偽物の記録だっ! 俺は絶対に信じない!」
スクリーンから発せられる言葉を、ユウヤは頭を掻きむしりながら否定する中、複数の映像が断続的に映し出される。
『ヤタイズナさん……』
『はぁぁぁ……ヤタイズナさん』
『ヤタイズナさん、会いたかった……会いたかったですよぉ……』
『ヤタイズナさん……ああ、ヤタイズナさん……』
『ヤタイズナさんと話したい、ヤタイズナさんに触りたい、ヤタイズナさんの事を知りたい、もっとヤタイズナさんと一緒に居たい……』
「アアアアアアアアアアアッッッ!! 聞きたくない聞きたくない聞きたくない! この映像を止メロォォォォォッッ!!」
自分は聞いたことも、言われたこともないオリーブの言葉の数々に耳を押さえるユウヤ。
それをブロストは愉快そうに眺めている。
そして、トドメと言わんばかりに映像が切り替わる。
『……最初は大好きなカブトムシさんの事しか目に映ってませんでした……でもそれからヤタイズナさんと話したり、触れ合ったりするうちに、私の想いが変わって来たんです……大好きなカブトムシさんから、大好きなヤタイズナさんに……』
『オリーブ……』
その言葉を聞いたユウヤは恐る恐るスクリーンを見る。
『――ヤタイズナさん、私は貴方を愛しています、種族なんて関係無い、一人の異性として……』
「……あ、あああああ……」
身体を震わせ、呻(うめ)き声を上げるユウヤを見て、ブロストは右手の指を鳴らす。
すると映像が変わり、映し出されたのは――
『ヤタイズナさん……大好きです』
――オリーブがヤタイズナに口づけを交わす映像だった。
「ぅ、ぅァアアアアアアアアアアアアアアアッッ!?」
頭が理解する事を拒むユウヤは剣で水晶球を破壊する!
「アアアア、アアアアアッッッ!!」
そして叫び声を上げながら、剣を振り回し続けている。
「ふふふふふ……ショックが強すぎたようですねぇ……おっと」
自身に向かって振り下ろされた剣を、ブロストは容易く避ける。
「オリーブは……俺を愛しているんだ……俺の、俺だけのオリーブなんだ……あんな汚らわしいモノに愛を囁くなんてありえないんだ……唇を捧げるなんて……俺、俺は、信じないんだァァァァァァァァッッ!!」
半狂乱に陥りながらも、ブロストに攻撃するユウヤ。
「そんな太刀筋では私を斬る事は出来ませんよ……貴方の出番はここまでですよぉ!」
斬りかかるユウヤに対してブロストはカウンターの回転蹴りを腹部に喰らわせる!
「が、あぁぁっ……!?」
ユウヤは吹き飛び、地面に倒れる。
「……」
意識はあるが、既に心は折れており、起き上がろうとする気配も無い。
「さぁ、これで勇者は全員片付きましたねぇ……さて、それじゃあ主菜の到着を待つとしますか……」
ブロストがそう言った瞬間、突如背後の床が爆発した!
「……おや」
床に巨大な穴が開き、煙が舞う中、穴から一匹の昆虫が姿を現す。
「これはこれは……随分と派手な登場だ……ふふふふふふふ……待っていましたよ、魔蟲王ヤタイズナ!」
「この国を、そしてオリーブを返してもらうぞ、ブロストッ!!」
ヤタイズナの言葉に反応し、天井の繭が大きく脈打った。
「第103回次回予告の道ー!」
「と言うわけでクッソ久しぶりに始まったこのコーナー!」
「善戦虚しくも、勇者達は倒されてしまったね……」
「うむ……じゃがそこにさっそうと現れ、決め台詞を発するヤタイズナ! 自分でもカッコいいと思ったんではないのか? んん?」
「それは……少しだけ、思ったけどさ」
「やっぱりお主が照れても、全然可愛くないのう」
「自分で言わせておいてその言い草は酷くない!?」
「さて、それでは次回予告を始めるかのう……遂にブロストとの決戦が始まる中、ブロストは遂に自身の正体を明かすのじゃ!」
「果たしてブロストは何者なのか、そしてオリーブの安否は!?」
「それでは次回『青のブロスト』!」
「「それでは、次回をお楽しみに!!」」
・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます