第236話 虫愛づる姫君を救い出せⅡ
『黄』のザハク……バロムの教え子の一人であり、レイド大雪原で私達と激戦を繰り広げたあのザハクの妹……っ!
「そうか……君がバロムの話で聞いた、ザハクが実の妹のように接していたと言う少女か!」
「……そう、幼い頃から優しく、時に厳しく私に接してくれたザハク兄さんを、私は本当の兄のように思っていた……その兄さんを、お前が……オマエガァァァァァァァァァッ!!」
「ギシャアアアアアアッ!」
ファレナが叫び声を上げ、ガタクと共に私の元に突っ込んで来る!
「《炎の角》!」
「グゥゥッ!」
私は炎の角でファレナの右腕の攻撃をはじき返す!
「《炎の角・槍》!」
そして瞬時に炎の角・槍に切り替え、ファレナを攻撃!
「ギシャアアッ!」
「ガタクっ!?」
――しようとした瞬間ガタクがファレナの前に移動、左の大顎で炎の角・槍を横に受け流した!
私が受け流された先に右腕を構えたファレナの姿が!
「《三重雷球》!」
3発の雷球が撃ち放たれ、私の頭部と胸部に直撃した!
「ぐうっ!?」
強烈な閃光と電撃が私を襲う!
「ギシャアアアアアアッッ!」
「ぐあああああああああっっ!?」
更にガタクが風の大顎で私の腹部を攻撃! 私は衝撃で後方に飛ばされた。
「スティンガー!」
(わかってるよー! きゃっちー!)
スティンガーが尻尾で飛ばされて来た私を巻き掴み、地面にゆっくり置いた。
「ヤタイズナ、大丈夫か?」
「み、ミミズさん……目が少し……チカチカして前がよく見えない……」
さっきの雷球を頭部に喰らった際に発せられた閃光で一時的に視力を失ってしまったようだ……しかも、腹部はガタクから受けた傷から体液が流れ始めている。
くそっ……ガタクの洗脳を解きたいが、あの蜘蛛型魔道具は今まで破壊してきたモノよりも小さいから正確に狙う事が出来ない……もし外せばガタクに深刻なダメージを与えてしまうかもしれないし……何とか動きさえ止められれば……
「ベル、ヤタイズナの傷を癒すのじゃ!」
(はい、《癒しの鈴音》)
ベルの癒しの鈴音によって私の眼と腹部の傷が治り始めた。
「回復の暇など与えない……!」
ファレナの声が聞こえると同時にブォンブォンと風の切る音が聞こえてくる。
これは……ファレナが自らの翅を羽ばたかせているのか? だが何のために――
(ぐ、ああああっ!? なんすか、これはぁぁ……!?)
「ぬぅぅ!? 身体が、急に重く……」
ドラッヘとゴリアテの声が苦しそうな声を上げた。
何だ? あの羽ばたきと同時に何か攻撃を受け……羽ばたき!? まさか!
「パピリオ! 私達の周辺に風の翅を使うんだ!」
(え? わ、分かりました! 《風の翅》!)
パピリオが風の翅で私達の周りを吹き飛ばしていく。
「ギシャアアッ!?」
風向きが変わったのを察して、ガタクが風の範囲内から飛んで逃げるのを、治り始めた眼で視た。
やはりか……恐らくファレナはパピリオと同じ鱗粉か、ドクガの毒針毛を飛ばしていたのだろう。
オオミズアオの成虫には毒は無い……ブロストに複数の虫の力を与えられていたか。
(ご主人、治療完了しました)
「ありがとうベル……次はドラッヘとゴリアテの治療を頼む」
(了解しました)
「よし、ファレナの相手は私がする、残る全員でガタクの洗脳を解くんだ!」
『『了解!』』
私は翅を広げファレナに向かって一気に飛ぶ!
「ギシャアアアッッ!」
(《斬撃》!)
「ギシャアッ!?」
ガタクが私の前に立ち塞がろうとしたが、ソイヤーが斬撃でガタクを足止めし、その隙に私はファレナの元に向かう!
(師匠! 貴方の相手は)
(俺、俺達がしてやる! 言う)
(やってやるぜぇ!)
(肉団子にはしませんが、多少痛い目は見てもらいます!)
ソイヤー、テザー、カヴキ、ティーガーが一斉にガタクに攻撃を開始した!
「《炎の角》!」
「馬鹿が、今度こそ毒毛針の餌食となれ!」
ファレナが再びを翅を羽ばたかせ、風と共に毒毛針を送り込んでくる。
「種が分かれば対策は簡単だ! 《炎の角・鎧》!」
私は全身を炎で包み、そのままファレナに突っ込み続ける!
「……!? なぜ毒が効かない!」
ドクガの毒毛針は身体の皮膚に刺さる事で毒が回る、身体が甲殻である私達虫にも効くと言う事は鱗粉と同じで気管に入っても毒が回るのだろう。
なら、触れる前に全部燃やせば良いだけの話だ!
「うおおおおおおおっ!」
私は炎の角・鎧でファレナに突進攻撃!
「ちぃっ!」
だがファレナは咄嗟に上空に飛び、突進を回避されてしまう。
「躱されたか……!」
「魔蟲王ヤタイズナァァ……!」
ファレナは空中で羽ばたき、毒毛針を周囲に散布し続けている。
「殺す……殺す殺す殺す殺す殺す殺す……絶対に殺してやるゥゥッ! ァァァァァァァァァァ!!?」
「何ッ!?」
ファレナは私に対する殺意を更に増し、苦痛が入り混じった叫びを上げると同時に左腕が膨れ上がり、蠢き始めた!
そして皮膚を突き破り、内部から右腕と同じ異形の左腕が現れた!
「ハァッ、ハァッ……貴様を倒すためならば、この身……異形になる事も躊躇わない……!」
ファレナは両腕を私に向けると、両手指の先に3つの雷球が現れた!
「《六重雷球》!」
そして、私目掛けて6発の雷球が一気に放たれた!
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