第216話 大願成就へ進む者
――一か月前、ランド大樹海北の森、地下神殿。
ヤタイズナ達がギリエルと戦っている間、神殿内に六色魔将、青のブロストが侵入していた。
「魔植王には気付かれて無い……ふふふふ……態々(わざわざ)ギリエルの足止めをしてくれて、彼等には感謝しないとねぇ」
ブロストは神殿内を進み、大広間に出た。
そして、目の前の壁に埋め込まれた黒く光る魔封石を発見した。
「見つけた……」
ブロストが右手を前にかざすと小さな亀裂が入り、そのまま手を亀裂に入れた。
それと同時に魔封石の前に亀裂が入り、中からブロストの手が伸び、魔封石を掴み引っこ抜く。
亀裂から手を引き抜いたブロストは、手元にある魔封石を見て兜の中で邪悪な笑みを浮かべた。
「さて、次は……」
魔封石を懐に仕舞ったブロストは、水晶を取り出した。
水晶には地上の光景が映し出されていた。
水晶に映し出されているのはギリエルの角に挟まれ絶体絶命のヤタイズナと、魔封石を懐から取り出し掲げているバノンの姿だった。
「ふふふふ……ですよねぇ、ギリエルに隙を作るにはその方法しか無い」
バノンが魔封石を投げた瞬間、ブロストは右手をかざし、亀裂を出現させる。
水晶に映されている光景でも亀裂が出現、魔封石が亀裂内に飲み込まれた。
ブロスト側の亀裂から魔封石が飛び出し、それをブロストが掴んだ。
「これで4つ……さぁ次は……!」
ブロストは水晶と魔封石を懐に仕舞い亀裂を出現させ、亀裂内へと入って行った。
――マモン森林、廃城。
玉座の間へと続く扉の前を二人の黒装束の魔人が守っている中、突如亀裂が出現した!
「! 魔人王様万歳魔人王様万歳!」
黒装束の魔人が武器を構え警戒するが、亀裂内から二線の光線が放たれ、黒装束の魔人達の眉間を貫いた!
魔人達は一瞬で絶命し、地面に倒れた。
「ふふふふ……」
亀裂内からブロストが現れ、玉座の間への扉を開き中へ歩いて行く。
玉座の真上には巨大な石版があり、そこに青と緑の魔封石がはめ込まれていた。
「これはこれは魔人王様、ご機嫌麗しゅうございます」
目の前の玉座に鎮座するミイラに対して、ブロストは仰々しく頭を下げた。
『――ブ……ブロス……トー……』
声が聞こえると、ブロストは頭を上げて玉座へと近づく。
「本日は、貴方様の頭上にある魔封石を頂きに参りました」
ブロストは亀裂を出現させ両手を入れ、玉座の真上にある石版にはめ込まれた魔封石を奪い取った。
「ふふふふふ……遂に……総ての魔封石を……手に入れたァァァァッ! ははははははははははは!!」
ブロストが高らかに笑う中、魔人王のミイラから声が聞こえる。
「ーお……愚かーー……貴様、は……愚かも、モノーー……」
「ふん、愚かなのは貴方ですよ魔人王様……声を発する事しかできず、ギリエル達を使わなければ何も出来ない置物が!」
ブロストは魔人王のミイラを蹴り倒した!
「愚かな魔王、貴方の時代はもうとっくの昔に終わっている……貴方の力は有効活用してあげますよ……我が大願成就のためにね……ふふふふ……」
ブロストは愉快そうに笑いながら、亀裂内へと消えていった――
――そして現在、何処かにあるブロストの研究所。
ブロストが水晶で部下と話していた。
「それで、そちらの準備はどうなっていますか?」
『はい……『楔』の打ち込みは完了しました、何時でも起動できます』
「ご苦労、では次の指示まで待機しておきなさい」
「……分かりました」
水晶での通信を終えたブロストは、ガラスの容器に入っている六つの魔封石を眺めて笑みを浮かべた。
「ふふふふ……これで準備はすべて整った……」
『ジィィィィ……』
ブロストの言葉に反応するように、巨大な容器内で浮かぶオ・ケラが鳴いた。
「ふふふふ、貴方達には存分に暴れてもらいますから、頑張ってくださいよぉ」
『ジィィィィィ……!』
オ・ケラの右眼が赤く光り、オ・ケラの後ろの容器に入っているモノ達も、眼を赤く光る。
「ああ……もう直ぐ、もう直ぐ我が大願成就の時が来る……忌まわしきあの地で、私は……!」
ブロストは歓喜と憎悪、二つ感情に身体を震わせ、その眼は赤く光っていた。
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