第208話 黒のギリエルⅣ

 叩き落とされた私の身体は発光が止まり、全身に激痛と物凄い脱力感を感じた。

 そんな……私の最強の攻撃が、一撃で沈められた……?


 身体が動かせない中、ギリエルは悠然と私の元へ歩いてくる。

 私は持ちうる総てを出して戦った……でも、奴はたった一撃で私を倒した……



 ――私では……ギリエルに、勝てない……


 ギリエルが倒れている私の目の前まで来て、角を振り下ろそうとしたその時、無数の岩の槍がギリエルに降り掛かった!


「うおおおおおおおおおお!!」


 ゴリアテだ! 先程倒されたゴリアテがこちらに向かって飛んできて、両前脚で私を掴んでそのままミミズさん達の居る方角まで飛んでいく。


「ご、ゴリアテ……無事だったのか……」

「なんとかな……それよりもひどい傷だ……一刻も早く魔王様達の元に戻って手当を」

「――逃がさん」


 私達が話す中、いつの間にかゴリアテの背後までギリエルが接近してきていた!


「なっ!?」


 ギリエルは蛮勇の角でゴリアテを攻撃!

 回避が間に合わず、ゴリアテは右前翅が砕け散ってしまう!


「ぐぅっ!? バランスが……! だが何としてもヤタイズナを魔王様達の元に……」


 ゴリアテはダメージを追いながらも、何とか空を飛び続けるが、無慈悲にもギリエルは連続で蛮勇の角で攻撃、左前翅も砕け散ってしまった!


「ぐあああああああっ!?」


 ゴリアテは飛行不能となったゴリアテが地面へと落下して行くが、ゴリアテは身体を回転させ自らの身体を下にし、落下の衝撃から私を守ってくれた。


「な、何だぁ!? 昆虫の卵の次はゴリアテが降って来たぞ!?」

「ボロボロではないか……ん? ヤタイズナも一緒か!」

「み、ミミズさん……何とかたどり着けたのか……」

「これは一石二鳥な状況だな」


 私達に続いてギリエルが地面に着地し、魔植王を見た。


「障害を排除すると同時に石も手に入れられる……しかし先に向かわせた部隊は半数以下になってしまったようだな」

「貴様か……黒装束共の頭であり、儂の気配がもっとも強い者は!」

「ん? 貴様何処か見覚えが……まさか魔蟲王! 生きていたとはな」

「元魔王じゃがな……それより貴様がヤタイズナ達を……許さんぞ!」

「ヤタイズナ……? この一本角の名前……成程、この者が今の魔蟲王か……随分と未熟な者を後継にしたものだな……」

「……確かにまだ未熟かもしれん、じゃがそ奴はいずれ儂を超える魔王となる者じゃ! 侮辱するでない!」

「先代を超える……それは不可能だ、今ここで死ぬのだからな……《蛮勇の角》」


 ギリエルの角が再び金色に光り輝く!


「やべぇぞ、このままじゃヤタイズナ達が!」

『させません!』


 魔植王の無数の木の根がゴリアテに向かう!


「邪魔だぁっ!」


 ギリエルが角を勢いよく振り、それにより発生した衝撃波で木の根が吹き飛ばされてしまう!


『何と言う力……!』

「はぁぁぁぁぁっ!」


 魔鳥王が右足で黒装束を一体掴んで飛び、ギリエル目掛けてぶん投げた!

 ギリエルは煩わしそうに右前脚で黒装束を弾き、その隙を狙らって魔鳥王がギリエルの前胸部目掛けて飛び蹴りを喰らわせた!


 だが、それでもギリエルの身体には傷一つ付かない!


「ふぅん!」

「がはっ!?」


 大きく振りかぶったギリエルの蛮勇の角が、魔鳥王の胴部に命中!

 魔鳥王は吹き飛ばされ、魔植王の身体に激突した!


「くぅっ……魔蟲王の過去の記憶を見せるために力を使ってしまったとは言え、私達の攻撃にビクともしないとは……」

『あの者の力は、私達六大魔王に匹敵しているというのですか……』

「さあ、今度こそ確実にトドメを刺してやろう」


 ギリエルが角で私を挟み掴み、持ち上げる。

 そしてそのまま、万力のように角を力を徐々に強め始めた!


「あ……あああああああああああああっ!?」

「このまま身体を両断してやろう」

「ヤタイズナぁっ!!」


 ギリエルの角が私の身体にめり込み始め、絶え間ない激痛が全身を襲う!

 だ、駄目だ……段々意識も、薄れ始めて……


「待ちやがれぇっ!」


 ギリエルが角を振り下ろそうとした時、バノンが大声で叫び懐から何かを取りだした。


「お前の目的は、こいつだろっ!」

「おお……それこそまさしく魔人王様の力が封じられし石!」


 そう、バノンが取りだしたのは、以前ドラン火山で入手した魔封石だった。


「バノン、お前何を考えて……!?」


 ミミズさんが驚く中、バノンがミミズさん達に目配せし、意味を察したミミズさんが頷く。


「こんな物が欲しけりゃ……くれてやる!」


 バノンが魔封石を上空目掛けて投擲する!

 ギリエルの視線が魔封石に向かい、角の力が弱まった。


「魔植王!」

『わかっています』


 魔植王の木の根が地面に倒れているゴリアテとギリエルの角に挟まれている私へと向かう。

 ギリエルは右前脚を魔封石へと伸ばす。


 ――その瞬間、魔封石の前に小さな亀裂が出現し、そのまま魔封石が亀裂内に入って行った。


「はぁっ!?」

「何じゃとおっ!?」

「何ィ!?」


 突然の事に驚くミミズさん達、そしてその隙にギリエルの角に挟まれている私とゴリアテを、魔植王の木の根が引っ張って助け出した。


「しまった!」

『救出成功、これより彼等を治療します……《治癒の蔦》、《癒しの光》』


 魔植王の身体から二つの蔦が伸び、一本がゴリアテに近づき蔦の先から光を発せられゴリアテを包み、二本目が私に触れ、身体を徐々に治し始める中、ギリエルが私達の元へ向かってくる!


「この私を謀るとはな……敵ながら見事と言っておこう……あの石を何処へやった!」

「し、知らねぇよ!」

「さっきの亀裂……まさかまたあの青鎧が……」

「早く答えろ、石は何処に……」


 ギリエルがミミズさん達に詰め寄ろうとしたその時だった!


「キシャアアアアアアアアアアアッッ!」

「クハハハハハハハハハハハハハ!!」


 ギリエルの右後方の森林から、エンプーサとクルーザーが取っ組み合いながら飛び出してきたのだ!

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