第204話 大樹海、炎上Ⅵ
――ヤタイズナ達の居る場所から向かって右側の樹海。
(えーい!)
(《水の鎌》!)
(《岩の鋏》ぃっ!)
スティンガー達はこれ以上火事が広がらないように、次々と燃える木々を切り倒していた。
(ふー……これでこのへんはもうだいじょうぶだねー)
(俺達に掛かりゃあこれぐらい!)
(肉団子を作るよりも容易い!)
火事を防いだスティンガー達の上空にドラッヘがやって来る。
(スティンガー! こっちはどうなってるっすか?)
(もうだいじょうぶー! このあたりのかじはくいとめたよー!)
(そうっすか、じゃあ自分はレギオン達の元に……ん?)
(どうしたのー?)
(何かがこっちに向かって……っ!? お前らそこから離れろっす!)
ドラッヘの言葉から数秒後、スティンガー達の元に何かが落下した!
(うわーっ!?)
(危ねぇっ!)
(何事だ!?)
スティンガー達は四方に散らばり落下物を回避し、落下場所から一定の距離を保ったまま、警戒する。
「ぎ、ギチギチチ……」
(あーっ! おまえはあのときの……)
(バラス砂漠で赤鎧と一緒に襲ってきた腕長!? 何で空から落ちてくるんすか!?)
そう、落ちて来たのはビャハのペットのウデムシだったのだ。
「ギチギチ……ギチ! ギチギチギチギチィィィィィィッ!!」
起き上がったウデムシはスティンガーを視認した瞬間、触腕を大きく広げ、殺気を放ち奇声を上げた!
(なんか、すごいおこってるみたい……)
(砂漠での借りを返すって事っすかね……っ! 来るっすよスティンガー!)
「ギチギチィィィッ!」
ウデムシが触腕を広げたまま、スティンガー目掛けて突進!
(くらえーっ!)
「ギチチギチ!」
スティンガーは尻尾の毒針をウデムシに突き刺そうとするが、ウデムシは瞬時に横に跳び避け、そのまま触腕でスティンガーの胴体を挟み込んだ!
(ぐあああーーっ!?)
(スティンガー! くそっ、ここからだとあいつの身体を狙えねぇ!)
「ギチギチギチギチ!」
(この、このー!)
スティンガーはウデムシを振り払おうとするが、鋏の死角に居られ、尚且つ前脚で尻尾の動きを封じられてしまっている。
ウデムシは徐々に力を強めていき、スティンガーの身体が軋み始めた。
(う、うぐ……)
(《水の鎌》!)
(《岩の鋏》!)
その時、カヴキとティーガーがスティンガーごとウデムシを攻撃した!
(いったーっ!?)
(なぁっ!?)
「ギチギチィィィ!?」
カヴキ達の攻撃を喰らったウデムシはスティンガーを離し、後方に下がった。
(よっしゃあ!)
(奴をスティンガーから離せましたね)
(お前ら何考えてんすか!? 味方ごと攻撃するとか正気っすか!)
(安心しろや、スティンガーなら俺達の攻撃ぐらいで死にはしねぇって)
(ええ、ですがそれでも仲間を傷付けたのは事実……申し訳ありませんスティンガー)
(いてて……あやまらなくていいよー、むしろたすけてくれてありがとー♪)
(スティンガー……お前そこは怒っておくべきだろ……)
ドラッヘが呆れる中、ウデムシが身体を小刻みに震わし始めた。
「ギチ、ギチギチ……」
(こんどはなにー?)
(よく分からないが……このまま全員で一気に潰すっすよ!)
スティンガー達が一斉に攻撃しようとした時、ウデムシは後ろに跳び茂みの中に隠れ、スティンガー達の周囲の茂みの中を回るように移動し始めた!
(攪乱のつもりっすか? そんなもの!)
ドラッヘが空高く飛び、スティンガー達の真上で静止。
(いぶりだしてやるっす、《大鎌鼬》!)
ドラッヘの周りに無数の大鎌鼬が出現し、周囲の茂み目掛けて一斉に撃ち出される!
大鎌鼬によって茂みは切り裂かれ、ウデムシが隠れられる場所が無くなる。
しかし、何処にもウデムシの姿が見当たらない。
(奴は何処に行ったっすか……?)
ドラッヘがウデムシを探す中、近くの木の中から複数の小さなモノがドラッヘ目掛けて飛び出した!
(っ!?)
咄嗟の事で避けられず、小さなモノはドラッヘの右翅の付け根に取り付いた!
「キチキチキチ!」
(何だ、こいつ等……!?)
取り付いたのは、大きさ30センチほどの真っ白なウデムシだったのだ!
小型ウデムシはドラッヘの右翅の付け根に齧りついた!
(痛っあああっ!?)
翅を損傷したドラッヘは地面に落下してしまう!
(ドラッヘー!? このー!)
「キチキチィッ!?」
「キチャア!?」
スティンガーが鋏で小型ウデムシを捕まえ、潰した。
(ドラッヘ、だいじょうぶー?)
(くそっ、翅を二枚やられた……これじゃあ飛べないっす……)
(! おい、周りを見ろ!)
カヴキの言葉でスティンガー達が周囲を見ると、いつの間にか無数の小型ウデムシ達に囲まれていた。
その中にはいつの間にか姿を現したウデムシも居る。
「ギチギチギチギチ!」
『『キチキチキチキチ!』』
(うわー……たくさんいるよー……)
(さっき身体の震わしていたのは、こいつらを産みだすためだったんすか……)
(面倒臭ぇ事しやがって!)
(肉団子の材料共め!)
(スティンガー、ドラッヘ、カヴキ、ティーガー!)
上空から、パピリオがスティンガー達の元にやって来た。
(きゃーっ!? さっき飛ばされて来た奴が沢山増えてますー!?)
(パピリオー! なにかあったのー?)
(はい! ご主人様の元にとても大きな魔物が現れて、エンプーサさんが応戦しているんですー!)
(あっちもあっちで大変って事っすか……っておいお前何を!?)
(パピリオー! うけとってー!)
(うおおおおおおおっ!?)
(きゃあーっ!?)
スティンガーがドラッヘを持ち上げ、パピリオに向かってぶん投げた!
パピリオは驚きながらも、ドラッヘをキャッチした。
(ここはぼくたちでなんとかするから、ドラッヘをベルのもとにつれてって、はねをなおしてあげてー)
(スティンガー、お前……)
(分かりました! 治したら直ぐに戻ってきますからー!)
「ギチギチギチギチッ!」
「キチキチ!」
ウデムシが触腕に小型ウデムシ達を取り付け、飛んでいこうとするパピリオ目掛けて放り投げる!
(そんなもの喰らいません! 《風の翅》!)
「キチキチキチィィッ!?」
パピリオは風の翅でウデムシ達を地面に叩き落としながら、レギオン達の元に向かって行った。
(よーし! カヴキ、ティーガー! こいつらみんなやっつけちゃおう!)
(合点承知の助でさぁ!)
(全員まとめて肉団子にして主様に捧げてやりましょう!)
「ギチギチギチィィィィィィィィッ!!」
奇声と共に、スティンガー達とウデムシ達の戦いが始まった!
「――見つけた! ゴリアテー!」
ガタク達と別れた私は、地面に仰向けで倒れているゴリアテを発見した。
「ゴリアテ、大丈夫か?」
「……う、うう……ヤタイズナか……そうか、私は奴に投げ飛ばされて……」
ゴリアテは身体を動かし、起き上がった。
「あれからどれくらい経った?」
「まだそんなに時間は進んでいないよ……とりあえず君が発見できて良かった」
これからどうするか……ガタク達と合流してまだ燃えている場所の鎮火……いや、魔人族を警戒して念のため一旦ミミズさん達の元に戻――
そう思った瞬間、突如全身に悪寒を感じた。
何だ、これ……ヤバい……何かが来る!
私は振り返り背後を見ると、こちらに向かってくる黒装束の集団の姿が。
そしてその中心に、漆黒の鎧に身を包んだ者が居た。
その者の兜には、直列に並ぶ二本の角の装飾が付けられている。
まさか……あれは、バロムの過去の話に出ていた……
黒装束達は立ち止まり、黒鎧がこちらを見た。
私とゴリアテは即座に戦闘態勢を取った!
「……お前は、何者だ!」
「喋る魔物、貴様が例の従魔か……問われたからには答えよう……我が名はギリエル、六色魔将筆頭、『黒』のギリエルだ」
「第95回次回予告の道ー!」
「と言うわけで始まったこのコーナー!」
「魔人族との戦いの中突如現れたクルーザーとエンプーサの戦い、ウデムシとスティンガー達の戦闘、混戦窮まる中、遂に六色魔将最強の将が私の前に現れた!」
「黒のギリエル……その実力はどれほどのモノなのか、気を付けて掛かるのじゃぞヤタイズナ!」
「それでは次回、『黒のギリエル』!」
『『それでは、次回をお楽しみに!!』』
・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので、次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。
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