第203話 大樹海、炎上Ⅴ
私は現れたクルーザーに鑑定を使い、ステータスを確認した。
ステータス
名前:クルーザー
種族:イビルセンチピード
レベル:180/300
属性:地
ランク:A+
称号:西の森王、暗殺者、力の渇望者
スキル:猛毒の牙、毒耐性レベル5、怪力鋏、粘着の息吹
エクストラスキル:昆虫の重鎧、自己修復
ユニークスキル:穴堀の超人、蠱毒
西の森王!
と言う事はエンプーサから聞いた西の森王を倒したと言うセンチピードと言うのは、やはりクルーザーの事だったのか!
しかもさらに進化してA+になっており、身体も以前より巨大で頑強そうな甲殻で包まれている。
頭部の色は赤で胴体はワインレッド、節目の関節がピンクで脚の色が黄色……間違いなくペルビアンジャイアントオオムカデだ!
ペルビアンジャイアントオオムカデとは、オオムカデ科に属するムカデの一種で体長はおよそ20~30cm、最大40cmを越えるという世界最大のムカデだ。
主にペルーやブラジルなどの南米熱帯雨林に生息し、名前にあるペルビアンは英語で『ペルーの』という意味を持ち、他に別名としてペルーオオムカデ、ダイオウムカデ、ギガスオオムカデなどと呼ばれている。
基本的に夜行性だが、獲物を求めて昼間に行動し、木に登る事もある。
食性は肉食で、昆虫類を始め、クモやサソリ等の節足動物からトカゲ、カエル等の爬虫類や両生類、更にはネズミや小鳥、小型の蛇まで食べてしまうのだ。
その性格は荒く乱暴、自分に触れたものには手加減なく噛みつく恐ろしいムカデだ。
攻撃方法はまず首を持ち上げて獲物を威嚇。
そして強力な牙で嚙みつくのだが、その威力はプラスチックを噛み砕いてしまうほど強力なのだ。
ペルビアンジャイアントオオムカデの毒の強さは不明とされているが、体が大きく一度に大量の毒を打ち込むことができるので、その毒は非常に危険。
大人が噛まれても場合重症になることはあまりないが、過去海外でペルビアンジャイアントオオムカデに噛まれた子どもが死亡した事もあり、毒への抵抗力の少ない子供や老人は注意が必要だ。
自分よりも大きな動物をも喰らい毒も持っていて一見無敵に見えるが、天敵も存在する。
それがダニである。
あまりにも小さいダニに対してペルビアンジャイアントオオムカデは無力であり、一度寄生されれば為す術は無く、頭部に寄生されたら死んでしまう事もあるのだ。
そんなペルビアンジャイアントオオムカデだが、実はペットとして飼うことも出来るのだ。
飼育するには温度管理が重要となるが、体が大きくて丈夫なので、比較的飼育は容易であり世界最大のムカデとして非常に人気がある種なのだ。
無論危険なムカデであるため、脱走しないようにしっかりした飼育施設が必要だ。
ムカデは基本的に生命力がとても強く体を半分に切断され、餌を与えられなかったとして1週間も生きることが出来るのだが、中でもペルビアンジャイアントオオムカデは飼育下では10年以上生きると言う恐るべき生命力を有しているのだ。
まさかクルーザーが世界最大のムカデに進化していたとは……さらに称号に力の渇望者、ユニークスキルに蠱毒と言うスキルが追加されている。
蠱毒……確か壺の中に毒虫達を入れ喰い合わせ、最後に残った虫を使って行う呪術だったか……
「キシャアアアアア……」
私が考える中、クルーザーがゴリアテとゴールデン、そして魔人達を見た。
「な、何かこっち見とるでゴリアテ!?」
「言わなくても分かっている……」
「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
クルーザーがゴリアテ達目掛けて突進する!
「離れろゴールデン!」
「うおわああああ!?」
前脚でゴールデンを弾き飛ばしたゴリアテは、そのままクルーザーの突進を受け止めた!
「ぬうぅぅぅぅぅ!」
「キシャアアアアアアア……!」
クルーザーは顎肢でゴリアテの前胸部を掴み、身体を起こして持ち上げた!
「何ぃっ!?」
「キシャアアアアアアアアアアア!!」
そしてそのままゴリアテを強引にぶん投げた!
「ぐおおおおおおおお!?」
「ゴリアテぇっ!」
ゴリアテは数十メートル先の木々の中に落下して行った。
あの最重量級昆虫であるゴリアテを軽々と投げ飛ばすなんて……以前戦った時なんて比べ物にならないほど強くなっている……
「キシャアア……キシャアアアアアアア!」
「う、うわあああああああ!?」
「た、退避! 退避ー!」
クルーザーは次にゴリアテ達と戦っていた魔人達を見て、そのまま襲い掛かった!
クルーザーは無数の脚を巧みに使い、魔人達を捕らえていく。
「や、やめろ……! 来るな、来るなあがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「ぎゃああああああああ!?」
そして一人目の魔人が顎肢で掴まれ口に運ばれ、無残にも噛み砕かれた!
クルーザーは次々と捕らえた魔人達を喰らっていき、喰い終わると次はガタクとヒヨケムシを見た。
「キシャアアアアアアア!」
「ギチュチュチュチュ!?」
クルーザーの突進をヒヨケムシは素早く避けると、クルーザーは次にガタクに向かって突進!
「くっ……《鎌鼬》!」
ガタクは鎌鼬でクルーザーの頭部を攻撃するがまるで聞いておらず、そのまま突っ込んでくる!
「なんて硬さで御座るか……!」
ガタクは翅を広げ、間一髪回避!
するとクルーザーは次にバロムとゼキアに向かっていく!
ゼキアは逃げ出すが、バロムは先程の怪我のせいでまだ動きが鈍い、このままでは!
空を飛んでいた私は一目散にバロムの元に向かい、クルーザーと対峙する!
「キシャアアアアアッ!!」
「《炎の角》!」
私の炎の角とクルーザーの顎肢が激突する!
お、重い……なんて突進だ……
「キシャアアアアア!」
「ぐあああああああっ!?」
力負けし私は後方へ弾き飛ばされる!
「殿ぉっ!?」
「っ……!」
私は翅を羽ばたかせて何とか空中で静止し、クルーザーを睨む。
「キシャ? ……! キシャアアアアアアア!!」
クルーザーが私を確認し、殺気立つ。
どうやら私の事を憶えていたようだな……こうなった以上、戦うしかない!
「行くぞ、クルーザー!」
「キシャアアアアアアアッッ!」
私とクルーザーは同時に突進、ぶつかり合う!
――と思われたその時、右側から巨大な衝撃波が飛んできて、クルーザーの身体を切り裂いた!
「キシャアアアアアアア!?」
クルーザーは悲鳴を上げ、切り裂かれた場所から体液が漏れ出る。
私は衝撃波が飛んできた方向を見ると、そこにはエンプーサが居た。
「面白い……ようやく我の退屈を晴らす強者が現れたか!」
「エンプーサ、気を付けろ! そいつは西の森王だ!」
「ほう! お前が西の森王を倒したセンチピード種か! ますます面白い!」
「キシャアアアアアアア……」
クルーザーは自らのエクストラスキル、自己修復によって身体の傷を修復、エンプーサを睨んだ。
「さぁ! 貴様と我、どちらが強いか勝負と行こうではないかぁ! 《暴風の鎌》、《暴風》!」
「キシャアアアアアアアアアアアアアア!!!」
エンプーサは自らの身体に暴風を使用して加速、そのままクルーザー目掛けて暴風の鎌で攻撃した!
二匹のぶつかり合いで発生した衝撃波によって森が騒めく!
この迫力……あの時見た西の森王とエンプーサの戦い以上だ!
「クハハハハハハハハハハ!!」
「キシャアアアアアアアア!!」
クルーザーの顎肢が鋭く尖り、先端から毒が漏れ出る、猛毒の牙だ!
暴風の鎌と猛毒の牙がぶつかり合い、再び衝撃波が大樹海に響き渡る!
「ビャハハハハハ……巻き添えになったら面倒だ、一旦この場から離れるかねぇ」
「ギチュチュチュチュ!」
ビャハがヒヨケムシに乗り、森の中に逃げていく。
「ゼキア様!」
「分かっている……総員一時撤退!」
ゼキアは一瞬バロムを見た後、魔人達と共にこの場所から逃げて行った。
その後に私はバロムの元へと飛んでいった。
「バロム、足の怪我は……」
「大丈夫だ……止血は済ませた……しかし戦闘には多少問題が出てしまうな……」
私とバロムの元にガタクとゴールデンがやって来る。
「殿、これからどうするで御座るか?」
「ゴリアテの事も心配やな……」
「うぅむ……」
どうするか……クルーザーはエンプーサが抑えてくれているが、まだ樹海の火事や魔人達の事もあるし……
「……よし、ガタクとゴールデンはバロムの怪我を治すため、レギオンとベル達の元に行ってくれ、私はゴリアテの元に行く」
「了解で御座る! さぁバロム殿、拙者に乗ってくだされ」
「すまない……」
ガタクがバロムを乗せて空を飛びゴールデンと共にレギオン達の元に向かい、私はゴリアテが投げ飛ばされた場所へと移動を開始した。
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