第201話 大樹海、炎上Ⅲ
「――前進だ! 火の手が我等を遮る前に魔王の元へたどり着くのだ!」
白のゼキアが兵を連れ燃える森の中を駆けていた。
「ビャハハハハハハハ! 必死だなゼキアぁ、もうちょっと余裕を持って行動した方が良いんじゃねぇか?」
「よくもそんな戯言をほざけるものだな……!」
「ビャハハハハハ、冗談が通じねぇ奴だなぁ……あん?」
「どうした?」
「……なーんか前から風切り音が……」
そう言った直後、ビャハ達の前方から、巨大な衝撃波が木々を切り倒しながら飛んできた!
「何っ!?」
「ちぃー! 跳べ!」
「ギチチチィィィィ!」
「ギチュチュ!」
ビャハの命令でウデムシとヒヨケムシが跳躍し衝撃波を回避、ゼキアも瞬時にスライディングをして避けた。
「がぁぁっ!?」
「うげぇあ!?」
「あばぁぁっ!?」
数人の魔人達が衝撃波を避けられず、身体を真っ二つに両断され絶命した。
「今の衝撃波は何だ?」
「ビャハハハハハハハ! どうやらお出ましの様だなぁ! 行くぞてめぇ等!」
「ギチチチィィィィィィィィィィィ!」
「ギチュチュチュチュ!」
ビャハを乗せたウデムシとヒヨケムシが走り出した。
「もしや例の従魔使いが……ドラン火山での汚名を今晴らしてくれる!」
ビャハ達を追って、ゼキア達も前へ進んで行った。
「――全く、我の斬撃で木を切るだけとは……退屈な仕事だ」
「エンプーサ殿、文句を言わずこれ以上火が回らぬように頑張るで御座るよ!」
「言われなくてもやってやる、奴との戦いのためにな!」
エンプーサとガタクが斬撃で木々を切り倒していく。
現在私達は、炎が別の木に燃え移らないように周囲の木々を切り倒していた。
「ふん!」
ゴリアテが体当たりで木を薙ぎ倒す。
「すまない木々達を……これも大樹海を守るためだ」
「感傷に浸ってないで、早く次の所に行くでー!」
「そう言う貴様も働かんか」
「いやいや自分には木を倒すなんてできんわ」
「役立たずめ」
「なんやとー!」
ゴリアテの隣でゴールデンが怒っていた。
「《斬撃》、《斬撃》、《斬撃》、《斬撃》!」
私も斬撃で木々を切り倒して行く。
「よし、この辺の火事はもう大丈夫だろう……」
(ご主人様ー!)
私達の上空にパピリオがやって来る。
(ここから真っ直ぐで火事が起きてますー!)
「ありがとうパピリオ、早速その場所に……」
「待つんだヤタイズナ!」
バロムが私の言葉を遮り、前方を注視する。
「……何かがこちらに向かってきている」
「何かが?」
私も前方を注視すると、何かが木々を破壊しながら、向かってきていた。
「まさか魔人族が……皆戦闘準備だ!」
「ギチチチィィィィィィィィィィィッ!」
私がそう言った瞬間、茂みから巨大な虫が飛び出してきた!
「あれはウデムシ! と言うことは……!」
「ビャハハハハハハハハハッ!!」
ウデムシの背中から大きな笑い声を上げて飛び降りる人影が!
「久しぶりだなぁ、一本角ぉっ!」
「あいつは……ビャハ!」
飛び降りて来たのは以前バラス砂漠で戦い、魔鳥王に吹き飛ばされ撤退した六色魔将、赤のビャハだった。
「バラス砂漠での続きだぁ! 楽しませろやぁぁぁぁぁっ!」
「っ! 《炎の角》!」
槍を構え、私目掛けて落下してくるビャハに、私は炎の角で応戦しようとした時、バロムが割って入り、剣でビャハの槍を受け止めた!
「ビャハァ!?」
「久しぶりだな……ビャハ」
バロムは剣振りビャハを後方に飛ばすが、ビャハは何事も無かったように地面に着地、バロムを見て笑みを浮かべた。
「ビャハハハハハハハ! やっぱり生きてたかバロム……魔人王様から離れて随分と姿が変わったみてぇだな?」
「そう言う貴様は、数百年経っても相も変わらず外道のようだな」
「ビャハハハハハハハ! 口数の少なかった奴が随分と喋るようになったなぁ……今の老いたお前を見たらギリエル様も驚くぜぇ」
「……来ているのか、ギリエルが」
「ああ、もうじきここに到着されるぜぇ」
「なら話は早い、奴が来る前に貴様を始末する!」
「ビャハハハハハハハ! 言うねぇ! ……あの時はギリエル様に止められたが……今度こそ止めを刺してやるよぉ!」
ビャハがバロム目掛けて突進、そのまま槍で刺突!
バロムは容易く槍を回避、右足でビャハ胴体を蹴った!
「ごはぁっ!?」
ビャハは後方に吹き飛び、木に激突した。
そのままバロムは接近し、ビャハに斬りかかる!
「ギチュチュチュチュ!」
そこにビャハの後ろから新たな虫が飛び出した!
あれはヒヨケムシ!
「くっ!」
バロムは咄嗟に後方へと跳んだ。
「ギチュチュチュ!!」
ヒヨケムシの地面の土が浮かび、無数の球へと変化し、そのままバロム目掛け飛ばされる!
「危ない! 《斬撃》、《操炎》!」
私は炎の分裂斬撃で土球を撃ち落とし、バロムの前に出る。
「助かったよヤタイズナ」
「礼なら良いです……ガタク、エンプーサ、ゴールデン、ゴリアテ! 奴らを倒すぞ!」
「了解で御座る!」
「まかしといてや! 行けゴリアテ!」
「貴様に命令されんでも叩き潰す!」
「少しは我の退屈を紛らわせる相手なら良いがな」
「痛つつ……ビャハハハハハハハ! 良いね良いねぇ、そうでなくちゃなぁ! こいつ等も仲間殺された恨みを晴らしてぇからなぁ」
「ギチチチィィィィィィィィィィィ!」
「ギチュチュチュチュチュ!」
ウデムシとヒヨケムシが殺気を立てて私達と対峙する。
とそこに、ビャハの背後から白い鎧の魔人と、白マントの集団が現れた。
「見つけたぞ、例の従魔使いの従魔達! 貴様らが持つ石と魔植王が持つ石を手に入れさせて……貰う、ぞ……」
あれは……ミミズさん達がドラン火山であったと言っていた白の六色魔将か……
だが様子がおかしい、白の魔将が私達を……いや、バロムを見て硬直した。
「……ゼキアだね、立派になったものだ……」
「先生……何ですか……? 生きて、おられたのですか……」
「先生……! バロム、まさかあの魔将は」
「そうだ、私の教え子のゼキアだ」
ゼキア……バロムの話に出て来た三人のうちの一人か!
「ビャハハハハハハハ! 随分と縺(もつ)れてきたなぁ、まぁ下らねぇ話してねぇで始めようかぁっ!」
「来るか! 皆行くぞ!」
「待てビャハ! 私は先生に話が―」
ゼキアの制止は無視され、私達と魔人族の戦いが始まった!
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