第190話 魔植王

「――次元のはざまを飲まれ意識を失った私は、気が付いた時には何処かの平原に倒れていた……」

「そうだったんですか……」

「プロストめ……本当に最悪な奴じゃのう……」

「しかしバロムの話を聞いた感じ、魔人族の秘密を知っていたのはギリエルと言う魔人と、ビャハだけだったと言うことなのかな?」

「うむ……六色魔将の中においても、そ奴らは特別な位置に居ると言うことじゃのう……」

「奴の攻撃から私を庇ってヴィシャスは死んだ……その間際、彼は私にこれを渡したのだ」


 そう、バロムが懐から袋を取り出し、中身を見せた。


「これは……魔蟲の宝珠!?」

「なぬっ!?」


 ミミズさんはバロムが取りだした魔蟲の宝珠に近づき凝視する。


「うむ……邪悪な気配の中に確かに儂の気配を感じる……こ奴の言った通り、間違いなく儂の一部を使用しておるな……」

「これは君達が持っておくべき物だ、受け取ってくれ」

「そう言うことなら受け取っておくかのう……バノン、取れ」

「え゛、なんでまた俺が……」

「懐にしまえるのはお前だけじゃろうが、さっさと受け取らんか」

「わ、分かったよ……」


 バノンは恐る恐る宝珠の入った袋を手に取り、懐にしまった。


「では話を戻そう……目を覚ました私は彼女の、ロディアの考えていたことを実行した……多くの他種族と交流しながら、この大陸を放浪した……そして数百の時が経ったころ、この大樹海で彼女に出会ったんだ」


 バロムは背後の魔植王を見た。


「その後は君達に言った通りだ、彼女に魔人族の事などを話し、そして彼女は私の話と自身の記憶などを照らし合わせた、大方の事を理解した……そして彼女は私に協力を求めたんだ、君達のために力を蓄える間、この樹海にあるであろう魔蟲王のしもべの遺体の捜索を」

「それでゴールデンとゴリアテの遺体を見つけて、魔植王が二匹を蘇生させたのか……」

「それだけじゃない、彼女は自らの力で私のこの身体を……魔人王によって支配されし肉体に老いを与えてくれたんだ」

「老いを!?」

「成程のう、あの魔植王ならば可能じゃろうな」

「ええ、彼女は私達の力を増すだけでなく、生命を活性化させることも出来る……その力で肉体を活性化させたと言う所でしょう」

「私は歓喜した……遂に私は、『人』になれたんだと……」


 バロムはその時の事を思い出し、涙を流していた。


「……すまない、感極まってな……魔植王が眠りにつく前、私は彼女に頼まれ、ある国の王族と接触するために行動を開始した、そこで私は多くの仲間と……大切なモノが出来た……そして十数年の時が経ち、その国の王族とも接触できた私は、君達がそろそろ魔植王に接触すると思い、この樹海へと戻って来たんだ」

「成程……」

「待て、何故儂らが魔植王に接触すると分かったんじゃ? 魔鳥王のように未来を視ることが出来るとかなら分かるが、魔植王にそんな力は無いはずじゃぞ?」

「……それは」


 バロムが話そうとしたその時、背後の魔植王が動き始めた。

 そして老木の表面が盛り上がり巨大な木の瘤が出来、それが人の顔の形になった。


『……久しぶりですね、魔蟲王、魔鳥王……二人とも元気そうで何よりです』

「魔植王! やっと起きよったか」

「貴女も元気そうで何よりです」


 巨大な木の顔が私を見た。


『……大方の事は理解しています、貴方が魔蟲王の後継ですね』

「はい、初めまして魔植王」

『初めまして……私は生命を守り育む者……六大魔王が一体、魔植王イグドリュアスである……ゴールデン、ゴリアテ、彼らを導いてくれてありがとう』

「れ、礼なんて良いですって魔植王様~」

「むしろ礼を言いたいのはこちらの方です……私達をもう一度魔蟲王様に会わせていただけて、感謝しかありません……」


 ゴールデンとゴリアテに礼を言った魔植王は、バロムを見る。


『バロム、貴方にも礼を言います……』

「いいさ、私もあの国で大事なモノを得たのだから……」

『……魔蟲王、魔鳥王、そして魔蟲王の後継よ……早速ですが、私の力で魔蟲王の記憶を取り戻しましょう』

「うむ、相変わらず話の速い奴よ……さっさとお主の力で魔鳥王の力を強化するのじゃ」

『魔鳥王、準備は良いですね?』

「ええ、何時でもどうぞ」


 魔鳥王がそう言うと、地面から木の根っこが飛び出し、魔鳥王の頭の上に根っこが触れた。


『《魔植の加護》』


 根っこを通して魔植王の力が魔鳥王に伝えられ、魔鳥王の身体が光り輝いた。


「力が漲る……これで長時間魔蟲王に過去を視せる事が出来ます」

「よし、それでは儂の過去を……」

『待ってください』


 地面から再び根っこが現れる。

 根っこは先端から二つに割れ、一つはミミズさん、もう一つは私の頭の上に乗った。


『《魔植の恩恵》』

「な……何じゃこれは?」

「これは……ミミズさんと繋がっている?」

『そうです……後継よ、これで貴方にも魔蟲王を通じて、魔鳥王の見せる過去が見れるはずです』

「え、どうして私も?」

『貴方は魔蟲王の後を継いだのでしょう? ……ならば魔蟲王の過去を見ておくべきです……きっと貴方のためになるでしょう』

「よく分からないけど……そこまで言うなら……」

「では始めますよ……!」


 魔鳥王の両目が赤く輝き、ミミズさんが硬直する。

 それと同時に、一瞬私の目の前が真っ暗になり、それから一気に頭の中に物凄い速さで大量の情報が流れる。



 ……あが、あがががががががががががががががががががかががががかっ!?



 あ、頭が……頭が割れそうだ……!?

 とてつもない頭の痛みが延々と続き……そして――










『――……? ここ、は……?』


 気が付くと周囲には誰も居らず、私は一人で薄暗い森の中に立っていた。













「第93回次回予告の道ー!」

「と言うわけで今回も始まったこのコーナー!」

「魔植王の力によって私も共にミミズさんの過去を追体験することとなった私、一体ミミズさんの過去に何があったのか!?」

「うむ、そして何故儂の記憶は改竄されたのか? その理由も明らかとなるのじゃ!」

「それでは次回『過去への旅』!」


「「それでは、次回をお楽しみに!!」」


 ・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので、次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。

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