第189話 異端Ⅺ

「くっ!」


 バロムは剣で大顎を受け流し、デスラーの前胸部に剣を振り下ろす!


 ガキィィンッ!


 しかし剣は弾かれ、前胸部に傷一つ付けられない。


「なんて硬さだ……!」

「ギシュアアアアアアアアアアッ!」


 バロムはデスラーの前脚攻撃をブリッジで回避、そのまま後方へと跳び、それをデスラーが追いかける!


「……」


 後方に跳んだバロムは着地と同時に地面に落ちていた戦鎌を拾い、鉤縄を外してデスラー目掛けて戦鎌を投擲!

 それをデスラーは素早い動きで回避、戦鎌はそのまま地面に突き刺さった。


「ギシュアアアアアアッ!」


 デスラーの大顎がバロムに迫る!


「っ!」


 バロムは地面を蹴り跳躍、デスラーの上空から落下し、前翅に剣を突き立てた!


「ギシュアアアアア!?」


 全体重を乗せた一撃だったが、剣の切っ先が前翅に刺さっただけで致命傷には至らなかった。


「ギシ、ギシュアアアアア!」


 デスラーは身体を振り回し、バロムを振り払う!


 宙を舞うバロムに、デスラーは後ろを向き腹部をバロムに向けた。


「っ!?」


 危険を感じ取ったバロムは先程回収した鉤縄を投げ、木の枝に巻き付かせ、引っ張って移動。

 その数秒後にデスラーの腹部後方から液体が噴射した!


 液体の一部がバロムのマントに付着、一部が溶け始めた。


「溶解液か……!」


 バロムは溶けている一部を剣で切断する。


「ギシュアアア……」


 デスラーは大顎をカチカチと鳴らし、再びバロムに腹部を向け溶解液を噴射!


「くっ!」


 バロムは横に跳び回避するが、デスラーは溶解液を噴射しながらバロムに向け腹部を動かし続ける。

 液体が付着した木や石がドロドロと溶けていく。


「このままでは……」


 逃げ続けても体力が消耗し、いずれは溶解液を喰らってしまうと考えたバロムは、意を決して地面を蹴り上げ跳躍、デスラーの真上を取る。


「ギシュッ!」

「先程傷付けた場所をもう一度……!」

「ギシュアアアアアアアアアッ!」


 前翅目掛けて剣を突き立てようとしたバロムに対し、デスラーは腹部を上に向け、溶解液を噴射した!


「何っ!?」


 上にも噴射できるのか!? と驚きながらも、バロムは咄嗟に身体を回転させて回避する。


「ぐぅぅぅっ!?」


 だが完全に回避できず右足の一部に溶解液が付着してしまった!

 態勢を崩したバロムは地面に落下、右足が溶解し始めた。


「くっ……」


 バロムは即座に剣で溶解液が付いた部分をそぎ落とし、マントを破り止血し立ち上がる。

 デスラーが腹部をバロムに向ける。


 バロムは右足を負傷している、先程までの動きはもう出来ない。

 ここまでか……バロムがそう思った瞬間、デスラーの真上に跳ぶ者が!


「うおおおおおおおおおおっ!」

「ヴィシャス!?」


 そう、ヴィシャスがデスラーの真上を取り、前翅の傷付いた部分に剣を突き立てた!


「ギシュアアアアアアアアアアアッ!?」


 剣が前翅を貫通、腹部に突き刺さりデスラーが悲鳴を上げる!


「バロム! 今のうちだ!」


 ヴィシャスの言葉を聞き、バロムは移動し、地面に突き刺さっていた戦鎌を引き抜いた。


「ギシュ、ギシュアアアアアッ!」


 ヴィシャスを振り払おうと大暴れする!


 バロムは左足に力を振り絞り、大きく跳躍!


「ヴィシャス!」


 バロムの声を聴き、ヴィシャスが剣を引き抜き、デスラーの背から飛び降りた。

 それほぼ同時に、バロムは戦鎌を傷穴に突き刺した!


 戦鎌は腹部を完全に貫通、下腹部から鎌の先端が飛び出した。


「これで……終わりだ!」


 そのまま戦鎌を引き、デスラーの腹部を引き裂いた!


「ギシュアアアアアアアアアアアアア!!?」


 デスラーは悲鳴を上げて倒れ、裂かれた腹部からは体液と臓物が溢れ出る。


「ギ、ギシ……裏、ギリ者、共メェェェェェェェェ……」


 その言葉を最後にデスラーは動かなくなり、やがて全身が灰色となり、崩壊した。


「終わったな」


 バロムの元に、ヴィシャスが歩いてくる。


「……何故手を貸した? お前まで……」

「ああ、俺もお前と同じ裏切り者だな」

「……」

「あの人ならざる力……アレを目の当たりにしてはな……俺はお前を信じる、魔人族としてではなく、お前の友として」

「ヴィシャス……」

「バロム、共に戦おう……っ!?」


 何かに気付いたヴィシャスがバロムを突き飛ばした!


「何を……!?」


 その瞬間、一本の光線がヴィシャスの心臓を貫いた!


「がはっ……!?」

「ヴィシャス!」


 倒れるヴィシャスを、バロムが受け止めた。


「ヴィシャス、しっかりしろ!」

「バ、ロム……これを……げほぁっ!」


 ヴィシャスは懐から何かを取り出し、バロムの懐に入れた。


「全く、二人まとめて始末してあげようと思ったのに……」


 バロムが声の方を向くと、そこには空に浮かぶ球体と、六色魔将、青のプロストが森の中から歩いて来た。


「しかしデスラーが死ぬとはねぇ……まぁ、六色魔将の中ではパッとしない奴でしたけど」

「プロスト……!」


 バロムが剣をプロストに向けるが、その一瞬で球体が光線を発射、バロムの左足を貫通した。


「ぐぅっ……!?」


 バランスを崩したバロムが地面に倒れ、プロストがバロムに近づき頭を踏みつけた。


「本当貴方は異端な存在ですねぇ……人種の命など、どうでもよいでしょうに」

「貴様……!」

「しかしヴィシャス、貴方もその異端に加担するとは、愚かですねぇ……ヴィシャス?」


 プロストがヴィシャスを蹴るが、ヴィシャスは既に事切れていた。


「何だもう死んだんですかぁ? つまらないですねぇ……ではバロムにも止めを……」


 バロムの真上に球体が移動する。


「……いや、それよりもっと面白い実験をしましょう」


 プロストはヴィシャスの死体を蹴りバロムから引き離し、懐から水晶玉を掲げ、唱えた。


「《開きなさい》」


 その言葉と同時に、バロムの倒れている地面に亀裂が入った。


「これは……!?」

「私が開発した、転移魔法を発動させる魔道具です……しかしまだ不安定でしてねぇ……中に入ったモノが何処に行くのかが分からないんですよぉ……で、まだ人体実験は行っておりませんので、貴方で実験しようと思うんですよぉ」

「貴様……」

「この亀裂に人が入ったらどうなるんでしょうねぇ……次元のはざまを永遠に彷徨うのか、いや入った瞬間体がバラバラに千切れ飛ぶとかですかねぇ……ふふふ……」


 プロストはバロムを踏みつけていた足を下げ、亀裂から距離を取った。


「ではさようならバロム……もし生きて会えたら、転移魔法の感想を聴かせてくださいねぇ」


 バロムは亀裂内に飲み込まれた。


「ぐあああああああああああああああああああ……!」


 バロムの叫びが聞こえなくなると、プロストは亀裂を閉じた。


「ふむ、入った瞬間死亡はしなかったか……まぁ良い、早くこの装置を安定させる方法を考えなければ……我が大願成就のために」


 プロストは笑みを浮かべながら、森の中へ消えていった。











「第92回次回予告の道ー!」

「と言うわけで、超久々に始まったこのコーナー!」

「本当に久しぶりだよね……まさか過去編がここまで長くなるとはね……」

「うむ、もう少し短くできたかもしれないと、作者も反省しておるみたいじゃ」

「まぁその話はこの辺にして、次回予告を始めよう!」

「魔人族過去編が終わり、次はやっと儂らサイドへと話が戻るぞ」

「そう、そして遂に最後の魔王が目を覚まし、ミミズさんの真実が明らかとなる時が来たんだ! それでは次回『魔植王』!」

「「それでは、次回をお楽しみに!!」」


 ・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので、次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。

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