第180話 異端Ⅱ
六色魔将!?
その言葉を聞いた私達は男から離れ、警戒する。
「な……何で魔人族が魔王の遣いを!?」
「おのれ……儂らを誘き寄せるための罠だったか!」
「落ち着いてくれ、六色魔将『だった』と言っただろう? 私は魔人族との繋がりを絶っている」
「繋がりを絶っているじゃと? そんなもの信用できるか! 儂らが今まで出会った六色魔将は5人、貴様が最後の一人ではないのか!」
そう、私達が出会ってきた六色魔将は全部で五人(そのうち二人に私は直接会っていない)、このバロムと言う男が最後の将と言う可能性も十分にあり得る。
「……最初に正体を明かさなかったのは確かにこちらに落ち度がある、それは謝罪する……だがこれだけは信じてほしい、私は君達の敵ではない」
男……―バロムは真剣な眼差しで私達を見た。
「……ミミズさん、彼を信じよう」
「なぬぅっ!? 何を言うとるのじゃヤタイズナ! こ奴は魔植王が眠っているのを良い事に、儂らを騙そうとしているかもしれんぞ! 何故敵ではないと断言できるのじゃ?」
「いや、理由は無いけど……私はこの人は本当に敵じゃないと思うんだ」
「確かに、少なくとも彼からは邪心を感じません、信用しても良いでしょう」
「魔鳥王お主まで……ええい分かった! お主達が言うなら儂も信じてやるわい!」
「……信じてくれてありがとう……彼女が起きるまでまだ少しかかる、その間に君達に話しておきたい……私の事、そして魔人族たちについての事を」
バロムが地面に座り、私達も地面に座り込んだ。
「まず私達魔人族について話そう、魔蟲王……いやミミズさん、そして魔鳥王、君達の記憶には魔人族と言う種族は存在しないはずだ」
「うむ、しかしそれは魔人王の記憶改竄魔法のせいじゃろう?」
「それは違いますミミズさん、私は本来の記憶を取り戻してはいますが、魔人王は亜人種やゴブリン、オーガなどの種族を造り出していましたが、魔人族と言う種族はいませんでした」
「何? どういうことじゃ?」
「魔人族は魔人王がミミズさん達に封印された後に造り出された種族って事?」
「その通りだ、我々魔人族はミミズさん、貴方が勇者に倒されてから造り出されたんだ」
「待て、封印されているのにどうやって造り出したのじゃ?」
「……奴らの居城には魔人王の骸が玉座に置かれていた」
「……成程、私としたことが記憶が戻った時点で奴の肉体がどうなったかを確認すべきでしたね……」
「それってつまり、魔人王の骸を持ち去り、魔人族誕生を手助けした奴がいたって事?」
「そういうことになりますね……」
「全くなんて奴じゃ、もしそ奴と会うことがあればこの儂がぶっ叩いてくれるわ!」
「それだけじゃない、そいつと魔人王は魔人族の他にもう一つ道具を作りだした……その名も『魔蟲の宝珠』」
「魔蟲の宝珠……! それってまさか、あいつらが使っていた生物を虫に変える珠の事!?」
「そうだ、あの珠はミミズさん、君の肉体を使用して作られた物だ」
「成程のう、どうりで儂の気配を感じるわけじゃ……大方勇者に倒された時の儂の亡骸を使用したのじゃろう」
「でしょうね、いくら魔人王といえ人間に他の生物の特性を付与するならともかく、完全に別の生命体に改造することは難しい、しかし生物を司る魔王の肉体を使えば可能なはずですからね」
「うむ……しかし複雑な気分じゃのう……儂の肉体によって作りだされた物に今まで苦労させられてきたとは……」
「確かにね……」
「魔蟲の宝珠は使用した者の肉体を虫に変えるが、その肉体の細胞の質によってより強い虫に姿を変貌させる……よって魔人族の中でも一番質の高い細胞を持つ者達、六色魔将に一つづつしか与えられない物なのだよ」
「一つづつ? ブロストの奴はたくさん持ってたけど……」
私の言葉にバロムが反応し、私を見る。
「それは本当か?」
「うん、ねぇミミズさん」
「うむ、めっちゃ持ってたのう」
「……恐らくオリジナルを元に量産したのだろう、奴ならそれぐらい造作も無い事だろうからな……」
バロムは嫌悪の表情でそう言った。
「話を戻そう、魔人王には協力者が存在し、その者によって魔人族が誕生、魔蟲の宝珠が作りだされた、ここまでは良いか?」
「うむ、そこまでは良い……しかし今だ解せんのは貴様自身の事じゃ、貴様が魔人族を裏切った理由は何じゃ? ヤタイズナと魔鳥王が貴様を敵じゃないと言おうと、そこを話さん限り儂は貴様を信用せん」
「ミミズさん……」
「……私が魔人族との繋がりを絶ったのは、魔人族と言う種族の歪さを知ってしまったからだ」
「歪さじゃと? どういう事じゃ?」
「……私達魔人族は、歳をとらないんだ」
「何ぃっ!?」
「歳をとらないって……不老って事!? でも貴方は今まで戦ってきた魔人族よりも年齢が……」
「正確に言うと魔人族は『魔人王の加護』によって一定の年齢で肉体の老化を止められるんだ」
「魔人王の加護?」
「儂らのような存在ならまだしも、人間種にそのような事が可能なのか?」
「少なくとも、魔人王はそのようなスキルを持っていなかったはずです」
「その通りだ……魔人王の加護はそのような物ではない……歪で悍ましい、魔人族の『業』そのものなんだ」
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