第178話 北の森Ⅴ

「ぬおおおおおおおおおおおおお!? バノン、早く逃げるのじゃあああああああああっ!!」


「言われなくても逃げてるよぉっ!」


「こりゃ本当にあかんわ!」


「魔王様、俺の背にお乗りください!」


「おお、すまんなゴリアテ!」


「お、俺も乗せてくれぇっ!」





ミミズさんとバノンはゴリアテの背に乗り、死神の暴風刃から逃げる。





(きゃああああああ!?)


(こいつぁヤバ過ぎるぜ!)


(私達が肉団子になってしまいますね!)


(本当ですね!)


(総員、退避であります!)





ハピリオ達も巻き込まれずに何とか逃げられている。





(にげろにげろー!)


(何考えてんすかあのデカブツは!)





死神の暴風刃は勢いを増しながら移動し始め、周りの木々ごとボタニックの蔦と食虫植物達を巻き込んで行く。


死神の暴風刃の内部に入った木々と食虫植物達は次々と切り刻まれて行く。





「相変わらず凄い威力だな……! ガタク、大丈夫か?」


「はい! 何とか……」





私とガタクは死神の暴風刃の風圧で飛ばされないように木に掴まった。


死神の暴風刃の勢いは衰えぬまま、奥へと進んでいく。














―そして数分後、ようやく死神の暴風刃の勢いが衰え始め、そのまま消滅した。


死神の暴風刃が通った後は地面がむき出しの状態で草木一本残っていなかった。





それと同時に頭に声が響いた。








《ボタニック・モンスターを撃退した。 ヤタイズナはレベルが106になった。》








どうやら死神の暴風刃でもボタニック本体を倒せなかったみたいだが、ボタニック本体は逃げたようだ。


とりあえず危機は去ったというわけだ。





「逃げたか……まぁ良い、姿も見せない臆病者など興味が湧かぬからな」


「おいエンプーサ! 何故儂らが居るのにあのスキルを使ったのじゃ! 危うく巻き込まれる所だったではないか!」


「何故だと? あのようにちまちまとつまらん事を続けるのも飽きたからだ、それも分からんのか?」


「分かるか! 貴様の勝手な行いで儂らは死ぬかもしれんかったのじゃぞ!」


「それがどうした? 我にとって貴様らが死のうがどうでもいいことだ」


「貴様と言うやつは……!」





ミミズさんがエンプーサに怒る中、ゴリアテがエンプーサに詰め寄った。





「貴様……魔王様を危険な目に遭わせた上になんて傲慢な態度だ! もう許せん! 貴様はこの俺が処罰してくれる!」


「良かろう、物足りなかった分は貴様との戦いで満足させてもらおうか!」


「止めるんだ!!」





私は大声で叫んで二匹を止めた。





「エンプーサ、確かに死神の暴風刃のお蔭でボタニックを退けることは出来たよ……でも仲間を危険に晒すような真似は本当に許せない」


「弱者など放っておけば……」


「弱者も強者も関係ないよ、仲間を傷付ける奴とは戦う気にはなれない、今回の事が終わってもお前とは戦わない」


「何だと!? ふざけるな!」


「それが嫌なら今後はしもべ達を馬鹿にしたり蔑ろにはしないで極力仲良くすること、私の許可無しには死神の暴風刃を使わない、この二つを守るなら約束通りお前と戦うよ、良い?」


「……分かった、貴様と戦えなくなるよりはましだ」





私の提案にエンプーサは両鎌を擦り合わせながら渋々承諾した。





「ゴリアテもここは引いてくれ」


「……了解した」





そう言うとゴリアテはエンプーサから離れていく。


全く……エンプーサには本当に困ったものだ。





「ヤタイズナ、見事な止め方じゃったぞ」


「そうかな? 私は思ったことを言っただけだよ」


「いやいや凄いですって」





いつの間にか私の隣にゴールデンが居た。





「さっきあのエンプーサはんに物申していた姿はかっこ良かったわ、昔の魔王様に少し似てたし」


「昔のミミズさんに?」


「ああ、やはり子は親に似るんやなー、なぁ魔王様?」


「だから儂は別にお主らを産んだわけでは……まぁ良い、お主が立派な魔王になり始めているのは確かじゃからな……これからも精進するのじゃぞ!」





ミミズさんは嬉しそうにそう言った。











その後も私達はゴールデン達に案内されて奥へ奥へと進んでいく。


あの後からボタニックは現れず、何も起こらずに安全に進めた。





「近い……近いで」


「ああ……俺も感じるぞ、あの先だ」


「ということは、ミミズさん」


「うむ、北の森の中心地……もうすぐ魔植王に会えるぞ!」


「これでミミズさんの過去を見ることが出来、本当の記憶を視せられるでしょう」





遂に最後の魔王との対面か……少し緊張してきたな……





「そうと分かれば善は急げじゃ! 行くぞお前たち!」


「あっ、待ってよミミズさん!」





ミミズさんが茂みの中へと入っていき、私達も続いて茂みへと入った。


がさがさと茂みをかき分けて進んでいくと、開けた場所に出た。





「ここは……」


「ここだけ木々が生えていませんね」


「魔植王ー! 何処に居るのじゃー! 儂と魔鳥王が来てやったぞー!」





ミミズさんが大声が森に木霊する。





「ゴールデン、ゴリアテ! 魔植王は何処じゃ? 姿が何処にも見えぬぞ?」


「おかしい……凄く近くに居るのは分かるのですが……」


「もうちょっと奥かもしれへんなー」


「……ん? おいアレ見ろよ!」





バノンが指を指した場所を見ると、そこには小さな小屋があった。





「小屋? なんでこんな場所に小屋が?」


「誰かが暮らしているのではないのかのう?」


「誰が? 一体何のためにこんなところで?」





私達が疑問に思う中、突如背後から声が聞こえた。





「待っていたよ」


『『!?』』





私達は振り返り、戦闘態勢を取った!


背後にいたのはグレーのローブを纏った40歳前後の男だった。





全く気付かなかった……いつの間に私達の背後に居たんだ?


私達が警戒する中、男は静かに笑いながら喋り始めた。





「安心してくれ、私は敵ではないよ……ゴールデン君、ゴリアテ君、案内ご苦労だったね」


「お前たち、この人間と知り合いなのか?」


「い、いえ、知りません」


「完全に初対面ですわ……」


「君達の事は彼女から聞いていたよ」


「彼女……もしかして魔植王?」


「お察しの通りだ……待っていたよ魔蟲王に魔鳥王……案内しよう、彼女の眠る場所に」









































「第91回次回予告の道ー!」


「というわけで今回も始まったこのコーナー!」


「ボタニックを退け北の森の中心地にやってきた私達、そこに現れた謎の男性、一体何者なのか!?」


「その正体は次回『異端』で明らかになるぞ!」


『『それでは、次回をお楽しみに!!』』





・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので、次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。

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