第176話 北の森Ⅲ
「完全に囲まれているで御座る!」
(こいつらいったいなんなのー!?)
私達は無数の蔦を警戒する。
先程バノンを喰らおうとしていた二枚貝のような葉はハエトリソウ……この蔦たちの正体は恐らく食虫植物だろう。
食虫植物とはその名の通り、虫を食べる植物食虫という習性を持っている被子植物門に属する植物の総称で、他にも食肉植物、肉食植物と呼ばれる事もある。
特徴として葉や茎などが捕虫器官になっており、昆虫や動物プランクトンをおびき寄せて捕らえ、消化吸収する能力を持ち種によっては誘引する機能や消化機能がないものも存在している。
誤解されがちな事だが、食虫植物は「虫を食べる植物」ではあるが、虫だけを食べてエネルギーを得ているのではなく、基本的には光合成能力があり、自ら栄養分を合成して生育する能力を持っているのだ。
一般に食虫植物は日光や水は十分であるが、窒素やリン等が不足しているため他の植物があまり入り込まないような土地、いわゆる痩せた土地に生息するものが多く、不足する養分を捕虫によって補っているのだ。
「成程な……さっきから虫を一匹を見なかったのはこいつらが原因か」
恐らくこの蔦たちが北の森に生息する虫達を襲い、虫達は他の森に移ったのだろう。
食虫植物と言えば世界的に有名な配管工のゲームに出てくる植物の敵を思いつくだろう。
しかし実際にはあのように動き回って捕食するということはできないし、土管から一定の間隔で飛び出してくるなんてありえない。
食虫植物にできることは、ある種の罠を仕掛け、ひたすら虫が引っかかるのを待つことだけ。
だから先程のように蔦がバノンを襲うようなことは本来ありえないのだ。
私は蔦の一部に鑑定を使用すると、ステータスを確認できた。
ステータス
名前:無し
種族:ボタニック・モンスター
レベル:50/75
ランク:B+
称号:魔王のしもべ
属性:地
スキル:甘美な香り、棘鞭、捕食袋、捕食葉、捕食毛
魔王のしもべ! ということはこいつは……
「ミミズさん、あの蔦は魔植王のしもべだよ」
「何じゃと!? 本当かヤタイズナ!」
「魔王のしもべの称号を持っていたから多分ね」
「恐らく彼女が防衛手段として召喚していたのでしょう」
「なら何故儂らを攻撃するのじゃ! 儂らはともかくゴールデンとゴリアテの事はしもべに教えているはずじゃろう?」
「それは分かりませんが……話が通じる相手では無い事だけは確かのようですね」
魔鳥王が前方を注視していると、蔦以外にも先程のハエトリソウが無数に出現した!
ハエトリソウは、北アメリカ原産の食虫植物で別名ハエジゴクとも呼ばれている。
葉の中に虫が入った瞬間、動物が食事をするかのようにパクっと葉を閉じて獲物を挟み込む捕らえ、消化液で吸収する挟み込み方式の食虫植物だ。
本来は内部のセンサーのような感覚毛に獲物が2回センサーに触れた瞬間、葉を閉じて動けないようにするのだが、あの葉はさっきのように蔦で捕らえて喰らうようだ。
「あっちはやる気満々のようだな……ゴールデン、魔植王はどの方角に居る?」
「えっと……あの蔦どもの先に感じるで!」
ゴールデンは前脚で無数の蔦の奥を指した。
「それじゃあ魔植王に会うにはやはりこいつ等を蹴散らすしか無いようだな……行くぞ皆!」
「ついに再び殿と共に戦える日がきたで御座る……あのような蔦、切り刻んでやるで御座る!」
(ぼくのはさみでちょんぎってやるー!)
(頑張りますよー!)
(ぶっ飛ばしてやるぜぇ!)
(植物では肉団子は作れませんね)
(僕は皆をアシストしますよ)
(ったく、面倒っすねぇ……)
「植物が相手か……どれほど楽しめるだろうか」
(総員、戦闘開始であります!)
『『ギチチチィィィィィィィィ!!』』
ボタニックの蔦とハエトリソウが私達に襲い掛かる!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます