第175話 北の森Ⅱ
前回までの、三つの出来事!
「なんやなんや急に叫びだして……頭でも打ったんか?」
「毎度のことじゃ、放っておいてかまわんぞ」
一つ、魔植王の居場所を探す中、中央の巨大樹に辿り着いた私達は死んだはずのミミズさんのしもべ、ゴールデンとゴリアテと出会った!
「魔王様、あの者は大丈夫なのですか?」
「良いのじゃ、いつもの事じゃから言い終わるまで待ってやれ」
二つ、ゴールデン達によって魔植王が北の森に居ることを知った私は最強のしもべ、元東の森王であるエンプーサをメンバーに加え、北の森へと向かった!!
「いつもこんなことやっとんのか……末の子はおもろい奴やな~」
三つ、エンプーサはミミズさんを非常食と呼ぶだけでなく、魚の餌と呼んだのだった!!!
「やはりそう来たか! それを最後に持ってくることは分かっていたぞ、お主のパターンなどお見通しじゃ!!」
(ひじょうしょくたのしそうだねー)
と言うわけで、今回も私が好きな某特撮ヒーローのあらすじ風にまとめてみた。
北の森に入っておよそ一時間、私達はゴールデン達を先頭に森の中を進んでいく。
「……静かだね、ミミズさん」
「うむ、不気味なぐらい静かじゃのう……」
北の森の景色は南や東とあまり変わらない、しかしあまりにも静かすぎる。
南や東だったら何かしら虫の一匹や二匹は出ていた。
だがこの北の森は虫が一匹も出てこないのだ。
「一体どうなっているんだ……?」
「何も起きないに越したことはないが、ここまで何も無いと逆に不気味じゃのう」
「魔植王が何も備えていないとは考えられません、もう少し進んだ先に何かあるかもしれません」
「とにかく、今は進むのみじゃな」
「何が来ようと、殿の敵は拙者が倒すで御座る!」
(ぼくもがんばるよー!)
(私だってがんばりますよー♪)
(あっしだって!)
(敵は全て肉団子にしてやります)
(僕もいつも通り皆をサポートしますね)
(まぁ、やってやるっすよ)
(魔王様のために命懸けで戦うであります!)
『『ギチチチチィィィィィ!!』』
「早く強者と戦いたいものだな」
私達は北の森の奥へと進んでいく。
「―ところでさゴールデン、昔のミミズさんってどんな感じだったの?」
北の森の中心地に道中、私はゴールデンに話しかけた。
「なんや急に? 昔の魔王様?」
「うん、私は昔のミミズさんがどんな感じだったのか知らないからさ、ちょっと気になってたんだよね」
「まったくお主は今更なことを聞くのう……そんなもの決まっておろう? しもべ達に敬われていた最高の魔王じゃ、のうゴールデン?」
ミミズさんが自画自賛する中、ゴールデンが上を向いて考え始めた。
「……魔王様は何というか……尊大で、結構我が儘なところもあって、馬鹿な事もたまに言う……」
「今とあんまり変わらなかったんだね」
「なわけあるか! おいコラゴールデン! お前儂のことそんな風に思っていたのか!?」
ゴールデンの発言にミミズさんはショックを受けていた。
「……でも、しもべ達のこと労り、大事に思っていてくれている……凄く尊敬できるお方なんや」
「な、なんじゃ最後に褒めよってからに……そんな言葉で最初の言葉を許すと思うでないぞまったく……」
そう言いながらも、ミミズさんは嬉しそうに体をくねらせていた。
「……やっぱりミミズさんは昔から変わっていない」
「うむうむ」
「素敵な元魔王(笑)だね」
「ヤタイズナァァァァァッ!! (笑)はやめろと言うとるじゃろうがぁ!!」
「ごめんごめん、ついね」
「ったく、儂が気にしとる事をお主は……!」
「ははははは……本当に魔王様は変わっとらん、なぁゴリアテ?」
「ああ、魔王様は昔と変わらず、お優しく素晴らしきお方だ……」
ミミズさんに怒られながらも、私達は中心地に向かって移動し続ける。
―更に一時間後。
「だいぶ歩いたね……ゴールデン、魔植王の居場所まであとどれぐらい?」
「……近いで、今までよりも近くに感じるようになったわ……」
「俺も感じるぞ……魔植王様の場所までもうすぐだ」
「あと少しで魔植王に会える……」
「うむ、これで儂の過去に何があったのかも……む?」
「どうしたのミミズさん……っ!」
「お主も気づいたかヤタイズナよ……」
ざわ……ざわざわざわ……ざわ……
今まで静かだった森が、ざわざわと騒がしくなる。
これは……まるで森全体が揺れているようだ……
「全員、周囲を警戒するんだ!」
私の指示でエンプーサ以外のしもべ達が背中合わせに円陣を組み、周囲を警戒する。
すると突然、甘い香りを感じた。
「何だこの香りは……何か、頭が……」
甘い香りを嗅ぐと、何か頭と体が妙な脱力感を感じた。
「この香りは何で御座るか……」
(なんかへんなかんじー……)
(体が……おかしいですー……)
「一体なんやねんこれは?」
ガタクやゴールデン達の体にも異常が出ているようだ。
そんな中、バノンが私達の元から離れ、勝手に歩き始めた。
「バノン! 一人で動いたら危険だ!」
「あ、あああ、ああああああ……」
私がバノンを制止するが、バノンは虚ろな表情を浮かべたまま、私達から離れていく。
これって……カトレアの花の鎌を食らった奴らの症状と似ている……まさかこの匂いは!
私がこの匂いの正体に気づいたその時、バノンの足に蔦のようなモノが絡みつき、一瞬でバノンが宙吊り状態になった。
「バノン!」
「あああああああ……」
宙吊りのバノンの真下に巨大な二枚貝のような葉が現れ大きく口を開くように葉を広げた。
そして宙吊りのバノンがその中に降ろされ始める。
「不味いっ! 《斬撃》!」
私は斬撃でバノンを捕まえている蔦を切断、そのまま翅を広げて飛び、落下するバノンを角でキャッチした。
「バノン、大丈夫か!」
「ああああああ……あ、あれ? 俺は一体……確か甘い匂いがしてそれで……」
正気に戻ったバノンを連れ、私はしもべ達の元に戻る。
「あの匂いは獲物をおびき寄せるためのモノで間違いないでしょうね」
「ええ、そしてバノンを喰おうとしていたあの葉は……」
「殿っ!」
ガタクの言葉を聞き周囲を見渡すと、無数の蔦が私達を取り囲むように出現していた。
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