第171話 大樹海の守り神Ⅱ
―南の森から出発して1時間が経過し、私達は巨大樹の真下にやって来た。
「……うん、改めて見て実感するけど、超デカいね……」
50メートル以上はあるな……
「どうやって調べるんだこんなデカいの……」
「とりあえず一番上付近に何かあるのではないか?」
「確かに……よし、上まで飛んで何かあるか調べて来るよ」
ミミズさんが私の前胸部の角に巻き付かせ、私は翅を広げて巨大樹を昇って行く。
私の後にはパピリオと魔鳥王が続き、スティンガー達には下で待機させている。
「うーん……特に変わったモノは見当たらないな……」
「こちらも何もありませんね」
(こっちもですー)
昇りながら巨大樹の表面を見るが、何も見当たらない。
巨大樹が魔植王なら私達が近づいたら何かしら反応を示すと思ったけど……何も無い。
「この巨大樹はハズレかな……」
「いや、まだ一番上は調べておらん、ハズレと決めつけるのは早計じゃろう」
「確かにその通りだねミミズさん、よし、上に行こう」
私達は巨大樹の一番上を目指して昇って行く。
―十分後。
私達は巨大樹の最上部に到着した。
「風が強いな……」
「下手すると吹き飛ばされてしまうかもしれんのう」
私達は風で吹き飛ばされないように木の表面につかまり、表面を歩いて最上部を調べ始めた。
「うーん……やっぱり何もないね……」
「儂の導き出した答えが間違っていたのか? だとしたら結構恥ずかしいんじゃが……」
「ミミズさん凄い自信満々に言ってたもんね……ん?」
ミミズさんと喋りながら表面を移動していると、私達が最上部に到着した時に居た場所のちょうど反対部分の場所に2メートルほどの穴がぽっかりと空いていた。
「あれは何だろう? ……大きさから言って巨大鳥の巣穴とか?」
でもこの大樹海でそんな大きな鳥は見かけたことは無いしな……
「ミミズさん、どうする?」
「どうするも何も調べる以外に選択肢はないじゃろう、ひょっとしたら何かあるかもしれんしな」
「だよね……よし」
私は穴に近づき、中を覗いた。
内部は入り口よりも広くおよそ3メートル程の広さだ。
「やっぱり何かの棲み処のようだね」
「うむ……む? 奥に何かあるぞ!」
ミミズさんに言われて穴の奥を見ると、何か山のように盛られている物を見つけた。
私はミミズさんを下して恐る恐る穴の中に入り、奥にある物の正体を確認した。
「……葉っぱ?」
そう、奥にあった物の正体は山のように盛られた葉っぱだったのだ。
この巨大樹の葉っぱだろうけど……ひょっとして食料か?
そう考えていると、突如葉っぱの山がガサガサと動き始めた!
「っ!?」
「何じゃ!? 中に何か居るのか!?」
私は戦闘態勢を取り、葉っぱの山を警戒していると、一匹の生物が葉っぱの山の中から出てきた。
「こ、こいつはまさか!」
あの金属のように光り輝く金色の身体は……間違いない!
「プラチナコガネだ!!」
プラチナコガネは中南米に生息するコウチュウ目コガネムシ科昆虫で主に山地の雲霧林に生息し、独特の金属光沢が特徴だ。
主に山地の雲霧林に分布し、大きさは2から3cmとコガネムシ科としてはやや大きめで、食性は広葉樹から針葉樹まで多様であるが食べる物によって模様が違う。プラチナコガネはその光沢から「ジュエル」「森の宝石」などと呼ばれ、標本は高値で取引されている。
プラチナコガネは個体や種類ごとに色が違うものが多く、金色や銀色のほか、赤や緑の個体も存在し、周辺の風景も写るほどの光沢がある。しかし金色や銀色に輝く種類の生態や必要性は分かっていない。
私はプラチナコガネを凝視する。
なんて美しいんだ……様々な色が存在する中でもやはり金色のプラチナコガネが一番綺麗だと私は思っている。
生物でありながら金属のような輝きを放つなんて魅力的すぎるよ……まさに昆虫界のC-3PO!
ああ……美しい……美しいすぎるよ……
……ハッ!? いけないいけない……またトリップしてしまった……このプラチナコガネが敵か分からないのに、反省しなければ……
……ん? そう言えば普段ならミミズさんが私を張っ叩いてくるけど、今回は何もしてこなかったな。
私は隣に居るミミズさんを見ると、ミミズさんはプラチナコガネを見たまま硬直している。
どうしたんだ? と思っていると。
「ご、ご、ごごごごごご……」
「ミミズさんどうしたの!? しっかりしてよ!」
「ふわぁぁぁ~……誰やねんアンタら」
「喋った!?」
ミミズさんが壊れたかと思ったら、今度はプラチナコガネが喋ったのだ!
私が驚く中さらにミミズさんが大声で叫んだ。
「ゴールデン!? お前生きておったのかぁ!?」
「その声……ひょっとして魔王様でっか!?」
「ミミズさん、このプラチナコガネと知り合いなの?」
「知り合いも何も、こやつは千年前に死んだはずの儂のしもべ、ゴールデンじゃ!」
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