第170話 大樹海の守り神Ⅰ

「帰って来たね、ミミズさん」


「うむ、久しぶりの故郷じゃ」


(かえってきたー!)


(奴の胃袋から生きて出られ再び帰ってこれた……このソイヤー感激です)


(僕もですよ)


(早く帰ってご飯が食べたいですわ)


(俺、カトレアに同感、言う)


(この森の魔物の肉団子が早く食べたいですね)


(ま、自分にとってここは故郷って実感ないっすけどね)


(全員無事でよかっであります!)


『ギチチチィィィィィィィィィィィ!』











―バラス砂漠を出て三日、私達は故郷ランド大樹海へと戻って来た。


巣の皆は元気にしているかな……早く会いたいな……





「ヤタイズナ、ミミズさん早く貴方達の巣へと戻り、魔植王の探索を行いましょう」


「分かっていますよ魔鳥王、よし皆、巣に帰るぞ!」





魔鳥王に急かされて、私達は巣に向かって移動し始めた。


























(ご主人さま! おかえりなさいませー!)


(ご主人のご帰還、心より祝わせてもらいやす)


『ギチチチチィィィィィィィ!!』





巣に戻った私達をパピリオとカヴキ、アント達が盛大に出迎えてくれた。





「皆ただいま、あれ? ガタクが居ないみたいだけど……どこに行ったんだ?」


(ガタクさんならエンプーサさんの所に特訓に行ってますよ)


(早くご主人の力になるために頑張らなければって言ってましたぜ)


「そうか、エンプーサの所に……」





エンプーサと特訓……ガタクの奴大丈夫かな……エンプーサは色々と危険だから無茶な事してないと良いけど……


ガタクが戻って来るまで、パピリオとカヴキに私が居ない間にあった事と新しく生まれたしもべの事を聞いた。





私が留守にしていた一週間半の間、異変は特に無く、孵化した卵は5つで全部アーミーアントが生まれてきたそうだ。


これでアント達の総数は235匹となった。





そして今回の旅で進化したスティンガーの姿を見て、パピリオとカヴキはとても驚いていた。





(ほ、本当にスティンガー何ですか?)


(そうだよー、ぼくすっごくつよくなったでしょー?)


(スゲェ立派な姿だ……)


(ふふーん♪ そうでしょー)





パピリオとカヴキの反応を見て、誇らしそうに尻尾を振り回すスティンガーだった。








その後、私は巣の中の自室に戻り、ミミズさんとバノン、魔鳥王と魔植王の探索について。





……何か、また私の石像が増えてるんだけど……





部屋にある石像がバラス砂漠に出発前の倍に増えていた。


アント達の気持ちは嬉しいけど、流石に多すぎるよ……





「ヤタイズナよ、どうしたのじゃ?」


「何でもない、とりあえず魔植王の事を考えようか」





魔植王はこのランド大樹海にいると魔鳥王は言った。


問題はランド大樹海の何処に居るのかだ。





「魔鳥王、魔植王の正確な位置は分からないんですよね?」


「ええ、私が視たのはこのランド大樹海だけ、魔植王がどのあたりに居るかまでは分かりませんでした」


「そこが分かれば問題解決じゃと言うのに……お主の未来予知も使えんのう」


「そもそも魔植王がこの大樹海に居る事を知らなかった貴方よりは使えると思いますよ」


「何じゃとぉ!」


「それは確かにそうですね」


「そうだな」


「お主らまで!? 何じゃどいつもこいつも儂を馬鹿にしよって……」





ミミズさんが部屋の隅で落ち込む。





「まぁミミズさんは放っておくとして、とりあえずこの南の森に居ない事は確定だろうね」


「ああ、居たらとっくに会ってるか、いつも森で木の実とか採りに行っているレギオン達が見つけている可能性があるしな」





東の森も魔植王が居る可能性は低いだろう……となると居場所の見当は二つに絞れる。





一つ目は西の森だ。


今まで西の森には探索はしたことは無い、可能性はあるが……問題はあのクルーザーが西の森王だと言う事だ。





奴が前の西の森王を倒したと言う事はエンプーサから聞いたが、奴はその後姿を消したと聞いている。


クルーザーがどうなったかは知らないが……一応念の為しもべ達には西の森に近づかないように言っている。


もしクルーザーが現れ、襲われたら危険だからな。





二つ目は北の森だ。





西の森同様、北の森は探索した事は無く、どうなっているかも分からない。


ただ前にバノンにこの大樹海周辺に伝わる短歌を聴かせてもらったことがあった。





『南は安全、東西危険、北には絶対近寄るな』





この歌の通り北の森には立ち寄ってはならないと古くから言い伝えられているそうだが……





「どう思うヤタイズナ?」


「うん、一番可能性があるのは北の森なんじゃないかな?」


「私もそう思います、人が立ち寄らない場所の方が魔植王の居る確率は高いでしょう」





よし、それじゃあ魔植王探索最初の場所は北の森で決まりだな。





「ちょっと待つのじゃ!」





とその時、さっきまで部屋の隅で落ち込んでいたミミズさんが私達に待ったをかけた。





「どうしたのミミズさん急に?」


「お主……何か大事な事を見落としておらぬか?」


「大事な事?」





何だ? 一体何を見落としているって言うんだ?


私が考える中、ミミズさんが話し始めた。





「その短歌をバノンから聴いた後、こやつは何か言うんとらんかったか?」


「え、俺?」





突然ミミズさんに名指しされて戸惑うバノン。





「バノンが言っていた事……?」


「うむ、思い出さんか?」





うーん……そう言えば何か言っていたような……何だっけ?





「思い出せんなら言うぞ、こやつはこう言ったのじゃ……『この森の中央の木には守り神がいるという伝説』があると」


「あー! 確かに言ってたね……ってミミズさんもしかして」


「そうじゃ! 儂は魔植王がこの大樹海に居ると聞いて確信したのじゃ! この大樹海にある巨大樹こそ魔植王じゃと!」


「あの巨大樹が!?」





ミミズさんの言葉にバノンが驚きの声を上げた。





「中央の巨大樹が魔植王か……」


「うむ! 間違いないのじゃ!」





確かにあり得そうな話ではあるな……





あの巨大樹には何度も言ったことがある。


あそこでエンプーサとの決闘も行ったけど、よくよく考えてみればあの巨大樹を詳しく調べたことは無かったな……





他の森に比べて行くのも簡単だし、一度詳しく調べてみるか。





「分かった、それじゃあ最初に中央の巨大樹を探索しよう」


「うむ、善は急げじゃ!」





私達は中央の巨大樹探索の準備をするため外に出た。





「ん?」


「スティンガー、少し見ない内に立派になったで御座るな」


(えっへん! ぼくつよくなったんだよー)


「確かにそうで御座るな……だが拙者も負けてはおらんで御座るよ! もうじき進化も出来るで御座るからな」


「ガタク、戻って来たか」


「殿! おかえりなさいで御座る!」





スティンガーと話していたガタクが私の元に走って来た。





「申し訳ないで御座る、特訓に行っていたためお出迎え出来ずに……」


「べつに良いさ、それよりも傷だらけじゃないか……ベルに直してもらって来い」


「分かったで御座る」




















―数十分後。





「準備出来たか? ヤタイズナよ」


「ああ、それじゃあ巨大樹探索に出発だ!」





準備を整えた私とミミズさん、バノンと魔鳥王、そしてスティンガーとパピリオ、レギオンとガーディアントとソーアントそれぞれ5匹づつを連れて探索へと向かった。

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