第165話 偽りと真実Ⅲ
魔植王が……ランド大樹海に……
「それは本当か魔鳥王! 魔植王がランド大樹海に居ると言うのは!?」
「はい、間違いないでしょう」
「ま……全く気付かんかった……そんな目と鼻の先におったなんて……」
ミミズさんがショックを受け、地面に項垂れる。
「……まぁ確かにミミズさんが一番に気付く場所だよね、自分の棲み処なんだから……」
でもこれで魔植王に会う事は比較的簡単だと言う事が分かった。これは良い知らせだ。
「そうと分かれば、急いでランド大樹海に戻ろう!」
「同感です、しかし私達は魔人達との戦いなどで力を使い過ぎています……今日一日は休んで、万全の状態で戻るべきでしょう」
「確かに……ここぞという時に力が出なければどうしようもないですからね……」
―こうして私達は明日ランド大樹海に戻る事にして、この廃墟……いや魔鳥王の神殿で休むことにした。
夕飯はウモウ達が持っていた干し肉などを食べた。
ウモウ達は平伏した状態で魔鳥王に干し肉を献上し、お礼を言われると号泣していた。
―そして翌日、私達は出発の準備を整えて神殿の外に出ていた。
「とりあえず、ウモウ達の集落を経由してからランド大樹海に向かう事で良いんですか?」
「はい、急いでいるとは言え、今まで私の予言を守ってくれていた彼らに礼を言わなければなりませんから……」
「おお、火の神よ……」
「勿体無きお言葉です……」
「皆、貴方様の慈悲深さに感涙するはずです……」
ウモウ達は未だに平伏したいた。
「あれ疲れんのかのう」
「野暮なこと言うもんじゃねぇよ」
「ははは……ん? モンゴリアンデスワームがいない?」
辺りを見渡すと、倒れていたモンゴリアンデスワームの姿が消えていたのだ。
「恐らく目を覚ましてまた地面に潜ったのでしょう……これでこの地の生態系も元に戻るでしょう」
(……あのー)
スティンガーが魔鳥王の元にやって来た。
「? どうかしましたか?」
(ぼくあたまよくないからうまくいえないんだけどー……フェネはもう、フェネじゃなくなっちゃったのー?)
「……」
スティンガーの言葉を聞いて、魔鳥王がスティンガーを見つめた。
(ふんいきもかわっちゃったけど……フェネはフェネだよね? ぼくとドラッヘのともだちだよねー?)
(スティンガー……)
「……記憶が戻った時点でフェネと言う少女の人格は消えました、私は魔王の一体、魔鳥王フェネクスなのです」
(そう……なんだ……フェネはもういないんだー……)
スティンガーは悲しそうに鳴いた。
「……ですが、貴方達との記憶が消えたわけではありません」
(?)
「フェネとしてではなく、フェネクスとしてなら貴方と一緒に遊びますよ、スティンガー……私達は」
魔鳥王はとても良い笑顔でこう言った。
「『トモダチ』ですからね」
(! ……うん! ぼくたちともだちー!)
そう言ってスティンガーは右の鋏を前に出し、魔鳥王が鋏を足で握った。
「スティンガーの言葉は俺には分からねぇけど、嬉しそうだな」
「友達のう……」
(……良かったっすね、スティンガー……)
「……」
私はドラッヘを見る。
(ん? 何すか? こっちを見て……)
「ドラッヘ、スティンガーと仲良くなったんだね」
(は!? 急に何言ってんすかお前!)
「他のしもべ達と仲良く出来ているか心配だったけど、早速仲が良い友達が出来たみていでなによりだよ」
(……確かにあいつとは友達にはなったっすよ……だからってまだお前を主だなんて認めてないっすからね! 憶えとくっす!)
そう言うとドラッヘはスティンガーと魔鳥王の元に飛んで行った。
「……まだ私を信じてはくれないか……」
「面倒くさい奴じゃのう……あれか? お主の記憶で視たツンデレと言う奴か?」
「ミミズさん……だからどこまで私の記憶を視たんだよ……まぁいいや、それじゃあ皆、出発するぞ!」
こうして私達のバラス砂漠での戦いは幕を下ろし、魔植王に会うための旅が始まったのだった。
―数時間前、バラス砂漠のとある場所。
「はぁ……はぁ……」
六色魔将、緑のディオスが夜の砂漠を真っ直ぐに移動していた。
「……あの時、空に現れた巨鳥に気付き、瞬時に離脱を選んで正解だった……敵の追手も見られない……」
ディオスは懐から黄色く光る魔封石を取り出した。
「任務は達成した……後は部隊と合流するだけ……」
「やっと見つけましたよぉ」
「っ!? 誰だ!」
突如背後から声を掛けられたディオスは振り返って短剣を構えた。
「私ですよ、ディオス」
「……ブロストか、驚かせるな……だが合流出来たのは重畳だ……他の部隊は何処に……」
ディオスはブロストに近づこうとしたが、足を止めて短剣を構えた。
「何のつもりですか?」
「ブロスト……貴様何故私に殺気を向けている?」
「……気付かなければ楽に殺してあげたと言うのに……」
「答えろブロスト! 一体何のつもり―」
ディオスが喋り終わる前に、ディオスの後方から光線が飛んで来る!
ディオスは瞬時に身体を動かしたが、右足の脹脛部分に光線が命中し、鎧を貫通して大きな風穴が開いた。
「ぐぅ……!?」
「今のを避けますか、やりますねぇ」
ディオスは右膝を地面に着けながらも、短剣をブロストに向け続ける。
「いやしかし本当に貴方は良い仕事をしてくれましたよぉ……貴方は私の期待通り石を手に入れた」
「……どういう意味だ?」
「ビャハが手に入れていたら面倒でした……奴はまだ本気を見せていませんから……」
「どういう意味だと聞いているんだ!」
「貴方からなら楽に石を奪えるという意味ですよ」
再びディオスの後方から光線が飛ばされる!
「くぅっ!」
ディオスは紙一重で光線を回避する。
「……裏切ると言う事か! 仲間を! 魔人王様を! 貴様には戦士としての誇りは無いのか!」
「裏切る? ……ははははははは……」
「何がおかしい!?」
「ディオス、私はね……貴方達を仲間だなんて一度も思ったことはありませんよ」
「っ!? 貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ディオスは左足で地面を蹴って跳び、ブロストへと突っ込んだ!
「死ねぇっ!!」
そして兜の目の部分に短剣を突き刺した!
「殺った!」
「……無駄ですよ」
「な!? 馬鹿な……手応えが、無い!?」
ディオスが驚愕しているその時、背後から何者かがディオスに短剣を突き刺した!
「ぐぅっ……!?」
ディオスは血を吐きながら後ろを向き、目を見開いた。
「ブロストが……二人!?」
そう、ディオスの背後に居たのは、二人目のブロストだったのだ!
「この短剣は貴方が奴らとの戦いで落としたものですよね、鎧を貫通できるなんて良い短剣ですよねぇ」
「ぐっ………がっ……!?」
正面のブロストがディオスの首を掴み、懐から魔封石を奪い取った後、ディオスを投げ捨てた。
「……ぐ、ブロスト……!」
「もう貴方は終わりです、その短剣には毒を縫っておきましたから」
背後に居たブロストが正面に居たブロストから石を受け取った。
「その毒はじわじわと貴方を蝕んでいく……貴方はこの砂漠で惨めに死んでいくのです……なんて愉快なんでしょうねぇ……」
ブロスト達がディオスから離れていく。
「ブ……ブロストォォォォォォォォォォォォォ!!!」
ディオスは力を振り絞って短剣を背中の引き抜き、左脚で跳躍、再びブロスト達に襲い掛かる!
「《開きなさい》」
しかし、魔封石を持った方のブロストが右手をかざし、言葉と共にブロストの正面に亀裂が出現。ディオスは亀裂に中に消え、そのまま亀裂が閉じた。
「ああいけない、今の転移は咄嗟だったせいで座標を定めていませんでした……ディオスは一体どうなったんでしょうね……ふふふふ……さて、ビャハ達と合流しますかね」
ブロストはもう一人のブロストの下に亀裂を出現させ、もう一人のブロストはそのまま亀裂に飲み込まれた。
「これで残るは二つ、あと少し……もう少しで我が大願が……ふふふふふ……ははははははは………」
ブロストはとても愉快そうに笑いながら、夜の砂漠を歩き始めた。
「第86回次回予告の道ー!」
「と言うわけで今回も始まったこのコーナー!」
「今回は沢山の事が明かされた話だったね」
「多すぎじゃ、儂の記憶の事とか衝撃じゃったわ……」
「それだけじゃない、とうとうブロストが大願とかのために本格的に動き始めたって感じだったね……」
「うむ、ここから更なる激戦が儂らを待っているはずじゃ……では次回予告を始めるぞ!」
「魔鳥王編は今回で終わり、次回からは新章魔植王編がスタートするよ! そしてその第一回目を飾るのはアメリア王国の話だ!」
「あの小娘の話か、本当に久しぶりじゃから忘れている奴らも居るのではないか?」
「そんな事無いって! 皆オリーブたちの事を憶えてくれているよ! それでは次回『虫愛づる姫君の決心』!」
「「それでは、次回をお楽しみに!!」」
・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。
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