第162話 魔鳥王Ⅱ
「輪廻転生……」
確か死んであの世に還った魂が、この世に何度も生まれ変わってくるって言う意味だったな……
「輪廻転生は私の肉体が生命活動を停止した時、魂と肉体を切り離し肉体を分解、再構築し、魂を肉体に組み込むするスキルなのです、しかし再構築したばかりの肉体では私の力に耐えきれません、だからまず仮の肉体を構築、その後本来の肉体を圧縮して仮の肉体の内側に閉じ込めるのですが、仮の肉体の姿形がどうなるのかは分からないのです」
「成程……つまりその仮の肉体が今回はハーピーのような姿に再構築されたわけですね」
「そうです、そしてこのスキルには欠陥もあります」
「欠陥?」
「このスキルにより私が死ぬことはありません、しかしそのかわり私は千年周期で肉体の生命活動が停止してしまいます、さらに転生後は大半の記憶が封印されてしまうのです」
「そうか……スティンガーとドラッヘに自分の事を話さなかったのではなく、記憶が無いから話せなかったんですね」
「本当、面倒なスキルじゃのう……」
「仕方がありません、これが私に与えられた役割なのですから……それに封印された記憶もおよそ三百年程度で戻りますから」
三百年程度って……流石六大魔王、年月の基準が違い過ぎる。
「……しかし、今回は魔人達との戦いで肉体が大きく負傷したショックで目覚めが早まったようですね……少しの間無意識で動いてしまったようですし……」
「でもその無意識のおかげで私達は助かりました、だよねミミズさん」
「うむ、まぁ今回は助かったぞ」
私とミミズさんがお礼を言うと、魔鳥王は少し照れ臭そうに首を動かした。
「それで魔鳥王、さっき言っていた壁画を造らせたと言うのは……」
「そのままの意味です、そこにいる彼らの祖先達に私が造らせたのです」
魔鳥王が横を向くと、そこには平伏しているウモウ達の姿があった。
「よくぞこれまでの間私の命令を聞き、彼らが来るのを待ち続けてくれました、貴方達にはとても感謝しています」
「ひ、火の神……なんと勿体無きお言葉を……」
魔鳥王の言葉を聞いたウモウ達は涙を流し、歓喜していた。
「造らせたのう……しかし魔鳥王、これに描かれているのは儂で良いのか?」
ミミズさんの言葉を聞いて、魔鳥王が頷いた。
「そうか……しかしもうちょっとましに描けんかったのか? これではまるで儂が全てを破壊尽くしているようではないか、のう?」
「!!」
破壊……全てを破壊しつくす?
魔鳥王は過去と未来を視ることが出来る……ま、まさか……
私が最悪の答えを考えていると、魔鳥王が話し始めた。
「貴方が今考えている通りですよ、新たなる魔蟲王よ……この壁画は私が視た未来の出来事を描いた壁画なのです」
「未来の出来事……」
それじゃあ、やっぱりこの壁画に描かれているのは……
「そうじゃ! 未来の事で思い出したぞ! おい魔鳥王よ、お主儂が死ぬのを視ていたのか!」
「……」
「おい答えんか! どうなんじゃ!」
「ええ、視ていました、今からおよそ千年程前に」
「千年前じゃと!?」
千年前って……確かミミズさんが話してくれた、国を滅ぼして人間と戦争になった時のはず。
「千年前から儂が死ぬことが分かっておったのに、何故儂にその事を伝えなかった!」
「……ミミズさん、仮にその事を伝えたとしても貴方が死ぬ未来は変わらなかったでしょう」
「な、何じゃと!?」
魔鳥王の言葉を聞いて驚くミミズさん。魔鳥王はそのまま話を進める。
「私が視る未来には二つの未来があります、一つは確定した未来、もう一つは確定していない未来」
「確定した未来と確定していない未来じゃと?」
「そう、私が貴方と魔獣王が二日酔いになる未来を教えた事があるでしょう」
「うむ、言ったのう」
「あの時視た貴方達の姿はぼやけていて、鮮明には視えなかったのです」
「んん? それがどうしたの言うのじゃ?」
「鮮明に視えなかった……つまり未来が定まっていなかったって事ですか?」
「その通りです新たなる魔蟲王、鮮明に視えない未来は分岐点がある未来なのです」
「分岐点? どういう事じゃ?」
「簡単に言うと、二つの道があるってことなんだよ」
「二つの道じゃと?」
「そう、ミミズさんが魔鳥王の忠告を無視して二日酔いになる道に進んだけど、その時にミミズさんが忠告をちゃんと聞いて酒を飲まなければ二日酔いにならなかった未来に進めてたって事なんだよ、ですよね?」
「そうです、貴方はミミズさんと違って早く理解してくれるので助かります」
「何かよく分からんが今儂馬鹿にされたよな?」
「対して、ミミズさんが死ぬ未来はとても鮮明に視えた、つまり分岐点が無い未来だったのです」
つまり鮮明に視えない未来は二つの道を選ぶことが出来、鮮明に視える未来は選ぶことの出来ない一本道と言う事だ。
私はその事をミミズさんに説明した。
「な、成程のう……」
「言った所で変わらない、そんな未来を伝えてもかえって混乱を招くだけなのです」
「伝えなかったのは魔鳥王なりの気遣いでもあったんですね……と言う事は、私達が魔鳥王を探しにくる未来は鮮明に視えていたんですね」
「そうです、しかしその時には私は次の転生まで時間がありませんでした……だから彼らの祖先達に貴方達が来たときにこの場所に案内するように集落の壁画を造らせたのです……しかし私が視たのは貴方達が来ると言う事だけ、その先の事は分かりませんでした……その結果残念ながらここにあった石は奪われてしまいましたが……」
「やはりここにも石が……」
私は壁画をよく見ると、石がはめ込まれていたであろう場所を見つけた。
「記憶の大半を無い状態でも、あの石を守る事だけは憶えていたのですが……無念です」
「魔鳥王……貴方は知っているんですね? 光る石が一体何なのか、魔人達が狙う理由も」
「……ええ、その通りです」
「何!? それは本当か! ……しかし他の奴等は知らなかったはずなのに、何故お主だけが知っているのじゃ?」
確かにそうだ、ミミズさんを含めて私達が今まで出会った他の六大魔王はこの石の事を何も知らなかった。
なのに何故魔鳥王だけは光る石の事を知っているのか、とても気になる。
「バノン、石を出してくれ」
「ああ、分かった」
私の言葉を聞いてバノンが懐から白く光る石を取り出す。
「教えて下さい魔鳥王、この石は一体何なんですか?」
「……その石の名は『魔封石』」
「魔封石? 封って事は……何かを封じている?」
「そうです、それはかつての我らの同胞、『七大魔王』の一体、『魔人王』の力が封じられている石です」
「第85回次回予告の道ー!」
「と言うわけで今回も始まったこのコーナー!」
「遂に明らかとなった石の名前、その名も魔封石!」
「それだけではない、何やらとんでもない事が明らかとなったぞ!」
「今まで名前だけ出ていた魔人王とは一体何なのか? そして七大魔王とはどういう事なのか!」
「その答えは次回『偽りと真実』で明かされるのじゃ!」
『『それでは、次回をお楽しみに!!』』
・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます