第161話 魔鳥王Ⅰ

廃墟に向かう途中で穴の中に隠れていたバノンと合流し、私達は廃墟の中へと入った。





廃墟内を見ると、部屋の中心部分に不自然に抉られた床の穴を発見した。





「これは……明らかに破壊された感じだよね」


「うむ、お主らが戦っていた隙を突いたのじゃろうな」





私とミミズさんが話していると、ドラッヘが私に話しかけてきた。





(そう言えば、あのビャハって奴と戦う前にもう一人緑色の奴がいて、この廃墟に向かっていってたっすね)


「緑の魔将……」





と言う事は、ブロストも含めて3人の魔将がこのバラス砂漠に来ていたのか……





「狙いは間違いなくここにあったであろう光る石だよね、ミミズさん」


「じゃろうな、まぁ今その話は後で話すとして問題は……あ奴じゃな」





ミミズさんが後ろを向く。





ミミズさんの視線の先には仰向けで寝かされている魔鳥王と、それを心配しながら見守るスティンガー。そして……





「我らが火の神よ……」


「どうかお目覚めください……」


「火の神様………」





魔鳥王に祈りを捧げるウモウ達の姿があった。





「あ奴に目覚めてもらわんと話が進まんからのう……さっさと目覚めんかあ奴め……」


「そうだね……」

















魔鳥王の目覚めを待つ中、私はしもべ達と話し始めた。





「今回は色々大変な事があった、バラバラにはぐれた時は本当に心配したけどけど、こうやって再び皆と再会できて私は本当に嬉しいよ」


(我らも主殿の元に帰ってこられて本当に嬉しいです)


(僕たちあのまま食べられて終わりかと思いましたもんね……)


(奴の糞などになってたまるかと、必ず主様と再会するという気持ちで肉団子を食べていました)


(改めて、我ら一同魔王様の元に帰ってきましたであります!)


『ギチチチィィィィィィ!!』





モンゴリアンデスワームに喰われていたソイヤー達は生きて私に再会できたことをこれでもかと喜んでいた。





(本当、無事でよかったですわ)


(俺、カトレアに同感、言う)


(……)





その光景を、ドラッヘはじっと見つめていた。


一方ミミズさんとバノンは今回のバラス砂漠での出来事を思い返していた。





「本当、あのモンゴリアンデスワームが出てきた時はもう終わりだと思ったぜ」


「それどころか生贄にされそうになったりしたからのう……まぁよい、おいヤタイズナ」


「ん? どうしたのミミズさん」


「あの床の下に行くぞ」


「え? でもまだ魔鳥王は目覚めてないけど……」


「下を調べに行くぐらいならあ奴が目覚めなくても出来るじゃろうが、いいから行くぞ」


「分かったって、そんなに急かさないでよミミズさん」





私はミミズさんに急かされながら、床の穴から下に続く階段を下りていった。





そして階段を下り終えると、高さ10メートルはあるとても広い部屋に着いた。





「もの凄く広い場所だな……」


「うむ……む? 奥に何かあるぞ」





ミミズさんが何かを発見し、私達は部屋の最奥に移動する。





「これは……壁画か?」





部屋の奥で見つけたのはとても大きな壁画だった。





その壁画には、巨大な三つ首の竜または蛇のような生き物が描かれており、その生き物が周りの生物と建造物を破壊し、喰らい尽くしているようだった。





その姿はとても禍々しく、そして既視感を憶えさせる壁画だった。





「この壁画に描かれた生き物……まさか、ミミズさんなのか?」





そう、この壁画に描かれた生き物は私が生まれた時に初めて見たかつてのミミズさんの姿にそっくりなのだ。


これは偶然なのか? ……いや、今までの廃墟は何かしら六大魔王と関係があった。





この絵もミミズさんと何か関係しているに違いない。





「その壁画は私が作らせたのです」


「!」





私が考えていると背後から声が聴こえ、振り返るとそこには階段を下りてくる魔鳥王の姿があった。





(フェネー! おきたばっかりでうごいたらあぶないよー!)


(つーかあいつ、喋りが流暢になってないっすか?)


「火の神が目覚められた……」


「火の神よ……」





それに続いてスティンガーとドラッヘとウモウ達、さらにはバノンと他のしもべ達も下りてくる。





「おお、目覚めたのか魔鳥王よ!」


「久しぶりですね魔蟲王ヤタイズナ……失礼、今はミミズさんでしたよね、そして初めまして新たなる魔蟲王よ」





そう言うと魔鳥王は翼を羽ばたかせて空を飛んだ。


そしてその身体が炎に包まれ、徐々に大きくなって行き、先程見せた巨鳥の姿になった。





「私は過去と未来を視る者、そして迷える者を正しき未来へ導く存在……六大魔王が一体、魔鳥王フェネクスである」





口上を終えると、魔鳥王は地面に着地した。





「……一応決まりとして口上を言わせてもらいました、仰々しくて申し訳ありません」


「何が仰々しいじゃ! 口上は儂ら六大魔王にとって大事な事なのじゃぞ! それを魔海王や魔竜王の奴等は勝手に口上を変えたり忘れたりして居る始末、更にお主は口上が仰々しいとは何じゃ! 仰々しいとは!」


「貴方は相変わらず変な所に情熱を持っていますね、恥ずかしくないんですか?」


「何じゃとこの焼き鳥野郎めが~……」


「……」





な、何て事だ、この魔鳥王……ま……





「まともだ……!」





今までの六大魔王は子煩悩だったり、人の姿になって歌姫活動してたり、山の上でずっと眠ってたりと何かしら変な部分が一つはあった。





しかしこの魔鳥王はそんな変な部分が見当たらない、ここにきてまさかのまともな魔王!


六大魔王にもまともなのがいたんだ……





「おいどうしたのじゃヤタイズナ? 身体を震わして……」


「いや大丈夫、ちょっと感動しちゃって……ところで魔鳥王、なぜ少女のような姿をしていたんですか? それにスティンガーとドラッヘに自身の事を伝えてなかったのは何故ですか?」


「……それについては私のスキルについて話さねばなりません、私のユニークスキル《輪廻転生》について」

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