第159話 目覚めし者Ⅱ

―廃墟の内部。





「どこだ……どこにある、必ず何処かに仕掛けがあるはず……」





六色魔将、緑のディオスが廃墟内を調べている。





「! この部分の床だけ砂を被って無い……ひょっとして……」





ディオスは懐から正方形の小箱を取り出して床に置き、小箱に付いている導火線に火を付け、後ろに下がった。





数秒後、導火線が小箱内に達すると、小箱は爆発し辺りに爆風が舞う!





「……」





数十秒後、煙が収まると、床の岩が大きく抉れ小さな穴が露出していた。





「あれはもしや……」





ディオスは抉れた場所に小箱を置き火を付けて離れる。





数秒後、再び爆発が起き、更に地面が抉れて地下への階段が姿を現した。





「地下への階段! 間違いない、この下にあの石が……」





確信を得たディオスは、地下への階段を下りて行った。






































「キシャアアアアアアアア!」





モンゴリアンデスワームが私達目掛けて毒の息吹を吐く!


私達は毒の息吹を避けつつ、モンゴリアンデスワームへと接近する。





「ソイヤー、ティーガー、ドラッヘ、カトレア! 私達は空から攻撃を仕掛けるぞ!」


(御意!)


(分かりましたわ!)


(了解しました!)


(言われなくてもやってやるっすよ)





私達は空を飛び、モンゴリアンデスワームの頭部に向かって突き進む!





「キシャアアアアアッ!!」





モンゴリアンデスワームの周囲に無数の砂球が作りだされ、空中の私達目掛けて放たれた!





「くそっ、この……!」


(なんて数の砂球だ……)


(これでは近づけませんわー!)


(おのれ……)


(面倒っすね……)





まるで機関銃の弾のごとく飛んで来る砂球に、私達は避ける事しか出来ず、モンゴリアンデスワームに近づくことが出来ない。





(ごしゅじんたちがぴんちだよー!)


(我々も奴の頭部に接近するであります!)


(しかしどうやってですか?)


(自分に策があるであります!)


『ギチチチィィィィィィ!!』





「キシャアアアアアアアアアアアアア!!」





モンゴリアンデスワームは延々と砂球を放ち続け、私達を頭部に近づけさせようとしない。





こうなったら超突進を……いや駄目だ、失敗したらそれで終わりだ。


ならエッグホームラン……駄目だ。頭部の蜘蛛だけをピンポイントに狙える精度が出せない。





どうすれば……ん?





下の方に視線を向けると、地面から突き出ているモンゴリアンデスワームの根元近くに動く影を見つけた。





「あれは……スティンガー達!?」





スティンガー達がモンゴリアンデスワームの根元付近にまで接近していたのだ!


モンゴリアンデスワームが空の私達だけを注意していたから、近づくことが出来たのか。





(よし! 総員、準備は良いでありますな!)


『ギチチチィィィィィィ!』


(スティンガー、頼んだでありますよ)


(わかったー!)


(よし、行くであります!)


「ギチチチ!」





レギオンの指示で一匹のソーアントがスティンガーの尻尾を掴み、スティンガーはそのまま尻尾を振り回し始めた!





(よし、離せぇ!)


「ギチチチィィィィィィ!」





ソーアントが尻尾から脚を離し、モンゴリアンデスワームの胴体目掛けて飛んで行く!


そしてそのままモンゴリアンデスワームの胴体に取り付き、上に向かって登り始めた。





(次!)


「ギチチチィ!」





次はガーディアントが尻尾を掴み、スティンガーが勢いよく尻尾を振り、ある程度勢いが付いたら離す。


それを何度か繰り返し、アント達全員がモンゴリアンデスワームの胴体に取り付き、登って行く。





(俺、飛ぶ、言う!)


(その次は僕ですね)


(最後は自分であります!)


(いけー!)





テザーとベル、そしてレギオンが同じ方法で飛び、登って行く。





(よし、それじゃあぼくはてったいだー!)





役目を終えたスティンガーがモンゴリアンデスワームから離れて行く。





(全員どんどん登るであります!)


『ギチチチィィィィィィ!』


(俺、とにかく登る、言う)


(僕も何とかついて行きます)


「キシャア!? キシャアアアアアアアアアアアアア!」





自らの身体を登るレギオン達に気付いたのか、モンゴリアンデスワームは身体を捩らせて暴れ始め、レギオン達の居る部分を地面に叩き付けて潰そうとする!





(全員、反対に移動であります!)


『ギチチチィィィィィィ!!』





レギオン達はモンゴリアンデスワームの胴体の反対側に移動し、押し潰し攻撃を回避する!





「キシャアアアアアアアアアアアアア!」


(また来るであります! 移動であります!)


『ギチチチィィィィィィ!』





再び移動して回避、そして着々と頭部に向かって登って行くレギオン達。


そんなレギオン達に注意が向いたおかげか、先程まで私達に放たれていた砂球が動きを止め、消滅していく。





よし、これで近づくことが出来る!





私達は身体に取り付いたレギオン達を潰そうと暴れるモンゴリアンデスワームの頭部へと接近する。





「キシャアアアアアアアアアアアアア!!」





私達の接近に気付いたモンゴリアンデスワームは再び砂球を放とうとするが時すでに遅し。遂に私はモンゴリアンデスワームの頭部に到達した!





「蜘蛛は……見つけた!」


「キシャアアアアアアアアア! キシャアアアアアアアアア!」





頭部にしがみ付いた私を振り払おうと、モンゴリアンデスワームが身体を大きく揺らす!





「《炎の角》!」





私は炎の角を使い、振り払われないように一歩一歩しっかりと踏みしめて頭部に付いている青蜘蛛に近づいて行く。





「これで……終わりだぁ!」





炎の角が届く距離に来た私は、一振りで青蜘蛛を真っ二つに焼き切った!





「キシャ、キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア………」





青蜘蛛が外れたモンゴリアンデスワームの水晶玉のような眼が色を失い、そのまま力なく地面に倒れた。





「ふぅ……やっと終わった……」


(ごしゅじんー)





私の元にスティンガー達がやって来る。





(やったねー、さすがはごしゅじん!)


(主殿、見事でした)


(流石は主様です)


(本当、お見事でしたわ)


(自分達も頑張ったのでありますが、役に立てずに申し訳ありません……)


『ギチチチ……』


(俺、同じく、言う)


(面目ないです……)


「そんなことないよ、レギオン達があいつの注意を引いてくれなければ私もあそこまで接近できなかったよ、レギオン達もいたからこその結果だよ」


(魔王様……このレギオン感激であります!)


『ギチチチィィィィィィ!』


(俺、感激、言う)


(ええ、本当に嬉しいですね)





とりあえずモンゴリアンデスワームはしばらく動かないはず、後はミミズさん達と合流して……





「ビャハハハハハハハハハハ! 凄かったぜぇお前ら」





声を聞き、前方を見ると拍手をするビャハとヒヨケムシ、サソリモドキを抱えたウデムシの姿が。





「隠れて見てたが面白かったぜぇ、それじゃあ邪魔な奴も静かになったことだし……続きをやろうぜぇ!!」





ビャハが槍を構え、ヒヨケムシが鋏角を打ち鳴らす!





モンゴリアンデスワームを止めたというのに……戦うしかないか。





「ジィィィィィィィィィィィ!!」





私達が戦闘態勢を取ったとき、背後から奴の声が!





「オ・ケラ!」





後ろを向くと、私が吹き飛ばしたオ・ケラが戻って来ていた。





くそっ……またさっきの戦いの繰り返しか……だがやるしかない!


私達がビャハ達とオ・ケラとの戦闘を行おうとした、その時だった!





「ビャハハハハハハハ……あ?」





動こうとしたビャハの視線が上空に向けられた。





何だ? 突然何を見て……





私も上空を見ると、そこにはあのフェネと言う少女が翼を羽ばたかせて飛ぶ姿があった。





「あれは……」


(フェネー! めがさめたんだー!)


(いや……でもあいつ、なんか変っすよ、ぼーっとしているというか……)





ドラッヘの言う通り、あの少女の様子はおかしい。


けどそれ以上に何か……あの少女から何かを感じる……





「あいつ目が覚めたのか……今はこいつらと殺り合うんだよ、また眠ってろぉっ!」





ビャハが少女目掛けて槍を投擲!





(フェネー!)





スティンガーが叫んだ瞬間、少女の瞳の色が赤く輝き、ビャハが投擲した槍が弾かれる。





「ビャハァッ!?」





驚くビャハを尻目に、少女の身体は突然発火し始めた!





(フェネ!?)


「こ、これは一体!?」





炎は少女の身体を包み込み、そして炎は徐々に大きくなっていく。





「ビャハハハハハ、そう言う事か……」


「これは……炎が……」





鳥の形に……





「砂漠の、不死鳥……」


「やはりそうであったか」


「ミミズさん!? いつの間に」


「あの娘が突如起き上がった時から感じていた懐かしき感覚、どうやら間違いではなかったようじゃのう」


「懐かしき感覚って、それじゃあ、あれが……」


「そうじゃ、あれこそが六大魔王が一体、『魔鳥王』フェネクスじゃ!」

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