第158話 目覚めし者Ⅰ
「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
突如現れたモンゴリアンデスワームが私達の居る場所に倒れてくる!
「ぬおおおおおおおおお!? こっちに倒れてくるぞぉっ!」
「皆避けろォォォォォォッ!」
私達は倒れてくるモンゴリアンデスワームから逃げ、何とか回避する。
モンゴリアンデスワームはその巨体を起こし、今度はビャハ達の方に倒れ込んだ!
「チィーッ!」
ビャハ達もモンゴリアンデスワームの倒れ込み攻撃を回避した。
「キシャアアアアアアア! キシャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
その後もモンゴリアンデスワームは身体を地面に叩き付けて、見境なく暴れまくっている。
「ヤタイズナよ、あ奴何か様子がおかしくないか?」
「うん……」
本来は月に一度くらいしか地上に現れないとウモウが言ってたけど……何か原因があるのか……?
私が考えていると、ドラッヘが私の元にやって来る。
(ヤタイズナ、お前らとはぐれている時にあいつに遭遇したんすけど、あいつの頭部に小さい蜘蛛みたいなのが付いてたっす、多分それが暴れている原因っす)
「小さな蜘蛛? それって……」
おそらくはブロストが魔竜王を操るために使った物と同じ物だろう。と言う事はやはり今回もブロストの仕業か……しかしあの暴れ方、ただ操られているだけには思えない。何か苦しんでいるようにも見える。
だが、これで奴を止める方法が分かったな。
私がそう思う中、モンゴリアンデスワームが再び私達目掛けて倒れて来る!
「キシャアアアアアアアアアアアアア!!」
「また来たぞぉ!」
「避けるんじゃぁぁぁぁっ!!」
倒れてきたモンゴリアンデスワームを回避する。
「ビャハハハハハハハハハハ! こいつは一旦引いた方が良さそうだなぁ……」
ビャハがウデムシ達を連れ、後方に下がって行く。
「ヤタイズナ、儂らはどうするのじゃ?」
「決まってるよ、あいつを暴れさせている原因である蜘蛛を破壊する! ミミズさんとバノンはフェネと言う子を隠してる場所で隠れていてくれ」
「分かったのじゃ、行くぞバノン」
「おう!」
ミミズさん達が後方に走って行く。
「よし、行くぞ皆!」
(わかったー! いくよドラッヘー!)
(ったく仕方ないっすね……)
(俺、あのデカブツの腹かっ捌く、言う!)
(捌いた肉は私が食べますわ)
「キシャアアアアアアアアアアアアア!!」
モンゴリアンデスワームが三度私達目掛けて倒れて来る!
「皆散れ!」
私の指示を聞き、しもべ達が四方八方に散る!
「ドラッヘ、大鎌鼬で奴の頭部の蜘蛛を攻撃だ! 《炎の角》、《斬撃》!」
(言われなくても分かってるっすよ! 《大鎌鼬》!)
私の炎の斬撃とドラッヘの大鎌鼬がモンゴリアンデスワームの頭部に向けて撃ち出される!
「キシャアアアアアアア!」
しかしモンゴリアンデスワームが暴れまくるせいで狙いが定まらず、炎の斬撃と大鎌鼬は胴部に当たってしまう。
「くそっ、まずは動きを止めないと……」
(ぼくたちにまかせてー!)
(俺、あいつの動き止める、言う)
スティンガーとテザーが暴れるモンゴリアンデスワームに向かって走って行く。
「スティンガー、進化したからって無茶な事は……」
(だいじょーぶ! ぼくたちにまかせてー!)
「キシャアアアアアアアアアアアア!」
暴れるモンゴリアンデスワームの身体がスティンガー達のいる場所に向かって倒れてくる!
(いくよテザー!)
(《岩の鋏》ィッ!)
スティンガーは鋏を上に構え、テザーも岩の鋏を上に構える!
まさか……あの巨体を受け止める気か!? いくら今のスティンガーでも……だが上手くいけば……
モンゴリアンデスワームの巨体がスティンガー達にどんどん近づいて行く!
「ええい! 悩んでいる暇は無い!」
私は翅を広げ空を飛び、スティンガー達の元に降りた。
(ごしゅじんー!?)
「私も一緒にやるぞ!」
カブトムシの私の力と、スティンガーとテザーの力を合わせれば!
「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「どっせぇぇぇぇぇい!!」
(おりゃー!)
(しゃおらぁぁぁぁッ!)
私達は倒れてきたモンゴリアンデスワームの巨体の巨体を受け止めた!
脚が地面にめり込み、私の角とスティンガー達の鋏がモンゴリアンデスワームの身体に突き刺さる。
「うおおおおおおおおおおおお……」
(ぬぐぐぐぐくぐぐー……)
(俺、絶対離さない、言う……)
お、重い……だが、受け止めたぞ……!
「ドラッヘっ! 今だ攻撃しろ!」
(《大鎌鼬》!)
ドラッヘの大鎌鼬がモンゴリアンデスワームの頭部の蜘蛛に向かって撃ち出される!
「キシャアア! キシャアアアアアアアアアアアアア!!!」
「うおおおおおおお!?」
(うわー!?)
(俺、脚が地面から離れた、言う)
動きを止められたのは数秒程度で、モンゴリアンデスワームは身体に角と鋏が突き刺さしている私達ごと起き上がった!
(くそっ! また外したっす!)
「キシャアアアアアアアアアアアアア!」
モンゴリアンデスワームが再び暴れ始めた。
(俺、何も出来ない、言う)
(くそー! これでもくらえー!)
スティンガーが尻尾の毒針をモンゴリアンデスワームの身体に突き刺しまくるが、効果はあまりないようだ。
私も今は随分と間抜けな状態になってしまっているが……角が突き刺さっているこの状態なら!
私は翅を広げ身体を前に押し、モンゴリアンデスワームの身体に角を更に深々と突き刺す。
「《炎の角》!」
そして炎の角を使い、突き刺さった部分からモンゴリアンデスワームの身体を焼いて行く。
「キシャ!? キシャアアアアアアアアアアアアア!?」
身体の異変に気付いたモンゴリアンデスワームが悶え、更に暴れまくり口から毒の息吹を吐き続ける。
(きゃああっ!?)
(ったく汚いもん吐きまくってるっすね!)
カトレアとドラッヘが毒の息吹を避けていく。
「よし、このまま……」
私は炎の角でモンゴリアンデスワームの身体を焼き切りながら、一気に下に降りて行く。
「オラァァァァァァァッ!!」
炎の角によってモンゴリアンデスワームの肉が焼き裂け、大きな傷跡が出来た。
「キシャアアアアアアアアアアアアアッ!?」
モンゴリアンデスワームが悶え苦しむ。
(おっ、とれたー!)
(俺、やっと地面に足着けられる、言う)
スティンガー達はモンゴリアンデスワームの身体から鋏を抜く事に成功、地面に着地し私の元にやって来た。
「しかし……あれだけの傷を受けてなおあそこまで暴れられるとは……」
少しでも動きを止められれば頭部の蜘蛛を破壊できると思っていたが……一体どうすればこいつの動きを止められる……
そう思った時だった。
私が作ったモンゴリアンデスワームの傷口から何か衝撃波が飛び出してきた!
「何だ!?」
私が驚く中、傷口から再び衝撃波が飛び出して来る!
「あれは……まさか、斬撃?」
私が衝撃波の正体に気付く中、モンゴリアンデスワームの身体の傷口から複数の影が飛び出した。
(外だ! 外に出られたぁぁっ!)
(何十時間ぶりの日の光ですねー!)
(肉団子には困らぬ場所だったが、やはり外が一番)
(全員、よくぞ耐え抜いたであります!)
『ギチチチィィィィィィ!!』
「あれはソイヤー! ベルにティーガー、それにレギオン達も!」
そう、出てきたのは私が探していた残りのしもべ達だったのだ。
(その声は……! やはり主殿!)
私の姿を視認したソイヤー達が私の元に来る。
(ご主人、外に出られた瞬間に会えるなんて……何と幸運なんでしょうか)
(主様、ご無事で何よりです)
(我ら一同、魔王様の元に戻ってきたであります!)
『ギチチチチィィィィィ!』
ベル達が歓喜の言葉を上げる。
「お前達、何でモンゴリアンデスワームの体内から?」
(はい、実は主殿とはぐれた我々は、不覚にも奴に喰われてしまい……)
(その後溶かされないように何とか内壁にしがみ付きながら奴の消化液から逃れ、奴の身体から作った肉団子を食べていました)
(奴はそれを感じていたのか、更に動き回ってたみたいですね)
成程……苦しそうにしていた理由は、ソイヤー達に身体を食われて痛がっていたのか……さしずめ悪い寄生虫に寄生されて身体が不調をきたしたって所か。
(そして何やら肉壁からうっすらと光が差し、試しに斬撃を放ってみたら外に繋がったので、脱出したのです)
「そうか……なにはともあれ、みんな無事で本当に良かったよ……」
(ソイヤーたち、ぶじでよかったー♪)
(俺、同感、言う)
(す、スティンガーなのか!?)
(随分と大きくなりましたね……)
(立派になったでありますな!)
「キシャアアアアアアアアアアアアア!!!」
モンゴリアンデスワームが毒の息吹を吐きまくり、無数の砂球を四方八方に撃ちまくる!
「もっと再会を祝いたい所だが、まずはあいつの頭部にある蜘蛛を破壊しなくては! 行くぞ皆!」
(わかったー!)
(了解しました!)
(奴を巨大肉団子にしてやります!)
(後方支援は任せてください)
(総員、戦闘準備であります!)
『ギチチチィィィィィィ!!』
―ミミズさん達が隠れている穴。
「……キシャアアアアアアアアアア……」
「まだ戦いは続いているか……だが奴ならば勝てるはずじゃ、奴は儂が選んだ……」
「おわあああああっ!?」
「何じゃバノン急に叫びよってからに! 何かあったのか……ぬおおおおっ!?」
ミミズさんがバノンの方を向くと、そこには身体を起こして立ち上がっているフェネの姿が。
「き、急に何の前触れも無く起き上がったんだよ」
「よく分からんが、起きたのは良い事じゃ……おいフェネとやら!」
ミミズさんの声に反応し、フェネがミミズさんの方に顔を向ける。
しかしフェネの瞳は輝きを失っており、虚ろな表情をしている。
「お、おい、大丈夫か?」
「まだ意識が定まっておらんようじゃのう……しかしこやつ、何か……」
バノンが心配し、ミミズさんが考える中、フェネはじっと虚空を見つめていた。
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