第156話 スティンガーの決意Ⅱ


(いいっすか? お前の尻尾の毒はまだ使えるはずっす、それをあいつらの身体に打ち込みつづけるんすよ!)


(わかったー!)


(よし、それじゃあ飛ばすっすよスティンガー!)





ドラッヘは真下に居るオニグモ目掛けて一気に急降下する!





「急降下してきたぞ!?」


「ん……? あの姿、もしやドラッヘか!?」





(よし、離すっすよスティンガー!! 行けぇぇっ!)





オニグモの近くにまで降下したドラッヘはスティンガーをオニグモ目掛けて投げると同時に急上昇する!





(うおおおおおおおおおーーーー!!)





スティンガーはオニグモの頭胸部にしがみついた!





「キチチチィ!?」


(な、何ですの!?)


(俺、スティンガーだ、言う)


(くらえー!)





スティンガーは右の鋏に掴んでいる尻尾をオニグモの頭胸部に突き刺した!





「キチチチィィィィィ!?」


(この、この、このー!)





スティンガーは何度何度も毒針を頭胸部に刺し続け、毒を注入していく!





「キチ、キチチチチチィィィィィ!」





オニグモはスティンガーを振り払おうと、暴れ始めた!





(うわぁっ!? このー! 絶対に離れないぞー!)





スティンガーは8本の脚でしがみつき、毒針を刺し続ける。





「キチチチチィィィィィィィィ!」





オニグモが右前脚でスティンガーを攻撃する!





(《岩の鋏》!)





そこにテザーが岩の鋏でオニグモの攻撃からスティンガーを守った。





(テザー!)


(俺、スティンガー無事で良かった、言う)


(《花の鎌》!)





カトレアが花の鎌の匂いを散布させるが、オニグモは左前脚で花の鎌の匂いを再び吹き飛ばす。





(カトレアー!)


(あなた何で上から? しかもさっきのは多分ドラッヘですわよね?)


(はなしはあとでするからー、いまはこいつをやっつけさせてー!)





テザーとカトレアの手助けもあり、スティンガーは毒針を注入し続ける。





そして数分もしない内に毒が回り、オニグモの動きが鈍くなっていく。





「キチ……キチチィ……」





毒が体に回ったオニグモの声が弱弱しくなり、遂に地面に倒れた。





そしてそのまま動かなくなった。





(や……やったー! たおしたー!)





スティンガーがオニグモを倒したのを確認したドラッヘが降りて来る。





(スティンガー、レベルはどうなったっすか?)


(んとねー……43になったよー!)


(よし! それじゃあもう一匹も行くっすよ!)





ドラッヘはスティンガーを掴み、ウモウ達と戦っているオニグモに向かって飛んで行った。





(あっ、ちょっとお待ちなさい! 話は!?)


(俺、全部終わってから聞けばいい、言う)














「キチチチィィィィィ!」


「くぅぅぅっ!」


「ウモウ様!」


「かすり傷だ、問題ない! しかしこのままでは……」


(行って来いっす!)


(とりゃーっ!)





ウモウ達が戦う中、スティンガーが二匹目のオニグモの頭胸部に取り付き、毒針を突き刺す!





「キチチチィィィィィ!?」


「何だあの魔物は!? もしや新手……」


「お主ら、あれはヤタイズナのしもべじゃ! 敵ではない!」





ミミズさん達が穴から出てきて、ウモウ達にスティンガーが敵でないことを話す。





「良いか、お主達は敵の脚をスティンガーに向けさせぬようにするのじゃ!」


「分かりました、行くぞお前達!」


『オオオオオオオオオ!!』





ウモウと戦士達はオニグモの脚に攻撃を仕掛ける!





「キチチ、キチチィ!」


(えい、えい、えーい!)





オニグモが足掻くが既に毒が体に回り始め、動きが鈍っていく。





「キチチチィィィィィ……」





そして最後はよろよろと地面に倒れ込み、絶命した。





(やったよー! れべるが45になったー!)


(よくやったっすよ、スティンガー)


(ありがとードラッヘー! よーし、しんかだー!)





その言葉と共に、スティンガーの身体が光り始めた!





「うおお!? スティンガーの奴が光ってるぞ!」


「この光……成程スティンガーめ進化するためにあのような事を……」






































「―はぁっ、はぁっ……」


「ジィィィィィィィィィィィィィ!!」


「ぐぅ! オラァッ!」





私は飛び掛かって来たオ・ケラの右前脚攻撃を受け止め、投げ飛ばした!





「ジィィィィィッ!?」


「ギチチチィィィィィィ!」





投げ飛ばした方向には、触肢を大きく広げたウデムシの姿が!





「ギチチチィッ!」


「ジィィィィィッ!」





ウデムシが触肢を閉じようとした瞬間、空中のオ・ケラは両前脚を輝かせて打ち付け、大爆発を起こした!





「ギチチィッ!?」





爆風に怯んだウデムシの動きが止まったその一瞬でオ・ケラは地面に着地、ウデムシの懐に入り込み左前脚でウデムシの頭胸部をぶん殴った!





「ギチチチィィィィィィ!?」





オ・ケラに殴られたウデムシは後方に吹き飛んだ!





「ジィィィィィィィィィィィィィッ!」





そのままオ・ケラは再び私目掛けて突進してくる!





「ギシシシシィィィィ!」


「ギチュチュチュ!」





後方からはサソリモドキとヒヨケムシが迫る!





「これならどうだぁっ!」





私は角で地面の砂を巻き上げ、辺りに砂煙を舞わせた!





「ジィィィィィッ!」


「ギシシシィィ!」


「ギチュチュチュ!」








オ・ケラ達は突進を止め、砂煙が収まるのを待った。





しかし、砂煙が収まると、私の姿は何処にもなかった。





「ジィィ!?」


「ギシシィ!?」


「ギチュチュ!?」








私の姿が消えた事でサソリモドキとヒヨケムシは戸惑い、オ・ケラは驚きながらも周囲を警戒する。





その時、オ・ケラ足下の地面が盛り上がる。





「ジィ?」





オ・ケラが下を見たその瞬間。





「オラァァァァッ!」


「ジィィィィィィィィィィッ!?」





私が地面から飛び出し、オ・ケラに炎の角・槍を喰らわせた!





そう、私は先程の砂煙を舞わせると同時に地面に潜っていたのだ。





私の攻撃を喰らったオ・ケラは一瞬宙に舞い、そのまま地面に落下した。





「……ジ、ジィィィィィ……」





オ・ケラが起き上がる。





どうやら先程の炎の角・槍は奴の首輪に当たったらしく、体へのダメージはほとんどないようだ。





私の炎の角・槍を受けて傷一つ付かないとは……一体何で出来ているんだあの首輪は……





「ビャハハハハハハハハハハッ!」


「っ!」





ビャハの声を聴き、右を見ると、ビャハの槍が私目掛けて飛んで来ていた!





「はぁぁっ!」





私は槍を弾き、槍が宙を舞う。





またあの不意打ちが来るかもしれない、注意して……





「ギシシシシィィィィ!!」





上に注意を向けた隙を狙い、サソリモドキが触肢で私を攻撃!





「なんのっ!」





私は上に跳び、サソリモドキの攻撃を回避する!





「貰った! 《炎の角・槍》!」





私は炎の角・槍でサソリモドキを攻撃!











―しようとした瞬間、上からビャハの三又槍が降ってきて私の角を三又部分に引っ掛け、地面に固定した!





「何っ!?」


「ビャハハハハハハハハハハ! 上への注意を怠ったなぁ!」


「ギシシシィィィ!」








ビャハが笑う中、サソリモドキが目掛けて酸液を噴射した!





しまった、動けない……





「ぐぅぅぅぅぅぅぅ!?」





サソリモドキの酸液が体に付着し甲殻を溶かすが、私のスキル酸耐性レベル3のおかげで表面が少し溶けただけで重傷には至っていない。





こいつの酸液、アントエンプレスよりも強力のようだな……





「ギシシシシィィィィ!」





サソリモドキが再び私目掛けて酸液を噴射しようとする!





「そうは……いくかぁぁぁぁぁっ!」





私は角を上げて槍を引き抜き、サソリモドキ目掛けて槍を角で打った!





「ギシシシシィィィィ!?」





サソリモドキは噴射態勢を止め、横に移動し槍を回避、槍はそのまま地面に突き刺さった。





……あの槍、てっきりサソリモドキの前で止まると思っていたが……何故ビャハは槍を宙で止めなかった?





「ギチュチュチュ!」





私がその答えを考える中、ヒヨケムシが攻撃を仕掛ける!





「この……野郎ぉっ!」


「ギチュチュチュァァ!?」





私はヒヨケムシの攻撃を受け止め、そのままヒヨケムシを後方へと投げ飛ばした!





「ジィィィィィィィィィ!!」





その一瞬の隙を突き、オ・ケラが私の懐に入り込んだ!





「しまった……!」





オ・ケラの両前脚が光り輝いている。





不味い! あの攻撃をまともに……





「ジィィィィィィィィィィィィィッッ!!!」





オ・ケラの両前脚が私の身体に直撃、そして大爆発が起きた!





「ぐあああああああああああああああ!?」





両前脚での爆発の爪を喰らった私は遥か後方に吹き飛び、地面に激突する!





「う……うう……」





な、何とか一撃で戦闘不能にはならなかったようだな……!





「ギチチチィィィィィィ」





前方から、ウデムシが歩いてくる。





身体は……よし、何とか動く。





私は起き上がり、ウデムシを迎撃しようとする。





「……!?」





しかし起き上がろうとするが足がよろけ、上手く起き上がれない。





ま、まさかさっきの爆発の衝撃で脳が異常をきたし、一時的に平衡感覚を失っているのか!?





ウデムシが徐々に近づいてくる。





「ぐ……ぐぅ、ぅぅ……」





何とかして起き上がるが、直ぐに足がよろけて再び地面に倒れてしまう。





空を飛んで……駄目だ…平衡感覚に異常がある状態ではまともに飛べるはずが無い。





だがこのままでは……





「ギチチチィィィィィィ……」





私の目の前にまで来たウデムシは触肢を広げ始めた。





「ぐ、ぐぬぅぅぅぅ……」





こんな所で……終わってたまるかぁぁぁぁ……





「ギチチィィィ!」





ウデムシの触肢が私を襲う!














―その時だった。





私の目の前に突如謎の生物が現れ、その大きな鋏でウデムシの触肢から私を守った。





「ギ、ギチチチィィ!」





触肢を鋏で掴まれたウデムシが暴れるが、なぞの生物はびくともしない。





そして謎の生物はウデムシを振り回し、そのままぶん投げた!





「ギチチチィィィィィィ!?」





ウデムシは遥か後方に飛んで行く。





この生き物は……まさか……





生物の体長はおよそ2メートル半、光沢のある黒い身体に大きな円形の鋏、八本の脚に毒針の付いた尻尾、この生き物は……





「ダイオウサソリ……」





ダイオウサソリは、サソリ目コガネサソリ科に分類されるサソリ目最大級の種で熱帯雨林の林床に生息している。





夜行性で昼間は地面に掘った巣穴や倒木の下などで休む。





食性は動物食で、昆虫類や節足動物などを食べ、獲物は触肢で捕らえて切り刻んでから食べるのだ。





巨大でとても強力な毒を持ってそうだが、実は毒性は弱いと言われ、刺されても命に別状はない。しかし反面鋏はとても太く、頑丈で力は強く人間でも挟まれれば痛く出血することもあるほどだ。





ダイオウサソリはペットとして飼われる事が多く、私も飼育した事がある。








しかし何故ここにダイオウサソリが……でも私はこいつを前から知っている気が……





私がそう思っていると、ダイオウサソリが私を見た。





(ごしゅじんだいじょうぶー?)


「その声……まさかスティンガーか!?」


(そうだよー! ぼくしんかしたんだー!)





スティンガーは嬉しそうに尻尾を振り、ブォンブォンと風切り音が鳴る。


私はスティンガーに鑑定を使い、ステータスを確認する。


























 ステータス


 名前:スティンガー


 種族:タイラントテールスコルピオン(希少種)


 レベル:1/150


 ランク:A


 称号:魔王のしもべ


 属性:地


 スキル:毒耐性、怪力鋏、尻尾攻撃


 エクストラスキル:昆虫の重鎧


 ユニークスキル:暴君の毒針


























タイラントテールスコルピオン……遂にAランクに進化したのか……





しかし暴君か……大王を皮肉ったような名前だな。





(ごしゅじん、これでぼくもうあしでまといじゃないよねー? ごしゅじんといっしょにあいつらをたおせるよねー?)


「スティンガー……」





あの時私が言った言葉を気にして……





「……ああ、もちろんだスティンガー、今のお前と私が力を合わせたら、絶対にあいつらを倒せる」


(ごしゅじんー!)





私は身体を動かし、起き上がる。





よし、もう身体の異常はもう収まったみたいだな。





「ギシシシシィィィィ!」


「ギチュチュチュ!」


「ジィィィィィィィィィィィィィ!!」





私達の前方にヒヨケムシとサソリモドキ、さらにオ・ケラが現れ、突っ込んでくる!





「来るか! 行くぞスティンガー!」


(うんー! あいつらをこてんぱんにやっつけてやるー!)

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