第155話 スティンガーの決意Ⅰ
「《炎の角・槍》!」
「ビャハァッ!」
炎の角・槍とビャハの三又槍がぶつかり合う!
「ビャハハハッ! やるなぁ、ならこれはどうだ!?」
ビャハは一歩後退し、そのまま勢いを付けての片手突きを放った!
「ハァァッ!」
角を右に振り槍の刃に当て、槍の軌道を逸らした!
「何ィ!?」
片手突きを外したビャハが態勢を崩し、隙が生まれる。
「喰らえぇっ!」
私は炎の角・槍でビャハの胴体を狙う!
「へっ!」
ビャハは右足で地面を蹴り跳躍、私の背中に飛び乗った!
「何っ!?」
「ビャハァッッ!!」
ビャハが三又槍を私の前翅部に突き刺す!
「ぐぅっ!? このぉっ!」
「ビャハハハハッ!」
私は身体を回転させて、ビャハを振り落とした!
背中は……よし、そこまで深くは刺さっていないようだ、これなら飛ぶのに支障は無い。
「ビャハハ、頑丈だなぁ……んじゃあ次は関節狙いで行くかぁ!」
ビャハが私目掛けて突進してくる!
「《炎の角》、《斬撃》!」
私は炎の斬撃を放つ!
「こんなもん当たるかよぉ!」
ビャハは左に跳び、炎の斬撃を回避する!
「《操炎》!」
私は操炎を使い、炎の斬撃を無数に分裂させた!
「何ぃっ!? ちぃぃぃっ!」
ビャハは槍で分裂斬撃を弾いていくが、分裂斬撃の一つがビャハの右腕部に命中する!
「ビャハァッ!? 痛ぇぇっ!」
炎の分裂斬撃はビャハの右腕部の鎧を貫通し、ダメージを与えた。
「ビャハハハハハハハハハハ、いいねぇ! 楽しくなってきたぜぇ!」
くそっ、浅かったか……奴の右腕はまだ使えるようだ。
「ビャハハハハハハハハハハ!! 喰らえぇぇっ!」
「何っ!?」
なんとビャハは自らの得物である槍を、私目掛けて投合してきた!
私は右に移動し槍を回避、槍はそのまま私の後方の地面に突き刺さった。
自分の得物を手放すだなんて……どういうつもりか知らないが、今が好機!
私はビャハ目掛けて突進する!
「ビャハハハハハハハ」
私が向かって来るというのに、ビャハは笑いながらその場に突っ立っている。
……何かを狙っている? 私は警戒しつつ、ビャハに攻撃を仕掛け―
(ごしゅじんうしろー!)
「!」
―ようとした瞬間、後方からの声が聴こえた。
後ろを振り向くと、先程地面に突き刺さった槍が私目掛けて飛んで来ていた!
「っ!?」
私は咄嗟に角で槍を弾き返す!
槍は回転しながら宙を舞い、ビャハの手元へと戻って行った。
「ちぃーっ、失敗かよ! この不意打ち大体成功すんのによー」
槍での不意打ちに失敗したビャハが舌打ちをする。
あの槍、一体どうやって操っているんだ? 奴のスキルか何かか?
だとしたら結構厄介だな……
私がそう考えていると、後方から先程の声の主、スティンガーが私の元にやって来た。
(ごしゅじんだいじょうぶー?)
「スティンガー、さっきはありがとう、でもお前はドラッヘと一緒に避難したはず……何故戻って来たんだ?」
(ぼくもたたかうー! ともだちのフェネにひどいことしたあいつをたたきのめしてやるー!)
「スティンガー……お前の気持ちは分かる、だけど尻尾を失ったお前には戦うのは無理だ」
「でもー……」
「今のお前は足手まといだ! 早くドラッヘの元に行くんだ!」
「……わかったー……」
スティンガーは悲しそうな声を出し、後方へと走って行った。
「ビャハハハハハハハハハハ、話は終わったかぁ? それじゃあもう一発行くぜぇ!」
ビャハは私目掛けて再び槍を投合!
「《炎の角》!」
私は炎の角で槍を弾く! しかし弾いた槍は空中で静止、切っ先を向けて飛んで来る!
「はぁっ!」
再び槍を弾くと、槍はそのままビャハの手元に戻る。
「ビャハハハハハハハハハハ! さぁもっと楽しもうぜぇ!」
ビャハが槍を構え、私目掛けて突進してくる!
「《炎の角・槍》!」
私は炎の角・槍に切り替え、ビャハに突撃する!
私とビャハがぶつかり合う!
「ギチュチュチュゥゥゥ!?」
―前に右側から、ヒヨケムシが私達目掛けて飛んで来た!
「っ!?」
「ビャハァ!」
私は後方に跳び、飛んで来たヒヨケムシを回避した。
「ギチュチュ……!」
落下してきたヒヨケムシは瞬時に起き上がると、目の前にいる私を見た。
「ギチュチュチュチュ!!」
そして巨大な鋏角で私を攻撃してくる!
「このっ……おらぁぁっ!」
「ギチュチュチュ!?」
私は角で巨大鋏角を防ぎ、そのまま懐に入りヒヨケムシを投げ飛ばした!
「ギチュチュチュ!!」
投げ飛ばされたヒヨケムシは空中で態勢を整えて着地し、再び私に突進する!
「ギシィィィィィィッ!?」
「ギチュチュァ!?」
そこにサソリモドキが吹っ飛んで来てヒヨケムシに激突、そのまま右前方に吹き飛んで行く。
「ジィィィィィィィッ!!」
「オ・ケラ!」
オ・ケラが私を睨む。
ビャハだけでも厄介だと言うのにこのタイミングで……!?
突如背後から悪寒を感じ、動こうとした瞬間、背後から何かに拘束された!
「ぐぅぅっ!? こ、これは……」
「ギチチチチィィィィィィィ」
ウデムシ! いつの間にかウデムシが私の背後にまで来ていて、その長い触肢で私を捕らえたのだ!
ミシミシミシィ……!
「うぐぁぁっ!?」
ウデムシは触肢を徐々に絞めていき、私の腹部を圧迫していく。
「ほ……《炎の角・鎧》!」
私は炎の角・鎧を炎を纏う。
「ギチチチチチチチィ!?」
突然私の身体が炎に包まれた事に驚きウデムシは触肢を緩み隙間が生まれ、その隙間から私は脱出した!
「ギチィ! ギチチィ!」
ウデムシの触肢に火が燃え移ったようで、ウデムシは地面の砂に触肢を擦り付けて消化しようとしていた。
地面に着地した私は、三方向の敵を警戒する。
左にはウデムシ、前にはオ・ケラ、右にはビャハ……
「ギシシシシィィィィ!」
「ギチュチュチュチュチュ!」
更に先程飛んで行ったヒヨケムシとサソリモドキがビャハの元にやって来る。
「ビャハハハハ!! こいつらを相手にあそこまで戦うたぁ、あの魔物も中々やるじゃねぇか!」
ビャハはオ・ケラを見て楽しそうに笑う。
「ジィィィィィィィィ……」
オ・ケラはそんなビャハの事は眼中になく、私を凝視し続けている。
くそっ、流石に多勢に無勢か……
「こんな面白い戦いは滅多にねぇ! もっともっと戦いを楽しもうぜぇ! ビャハハハハハハハハハハ!」
「ギシシシシィィィィ!」
「ギチュチュチュチュ!!」
「ギチチチィィィィィィ!!」
「ジィィィィィィィィィィィィィ!」
ビャハ、三大奇虫、オ・ケラが同時に襲い掛かる!
「くっ……!」
(あっ! スティンガーお前何処に行ってたんすか!)
(ごしゅじんのところー……)
スティンガーは、ドラッヘがフェネを連れて避難させている場所に戻って来ていた。
(今のお前じゃ足手まといになんのは分かってんだろ……ってお前何持ってるっすか!?)
(ぼくのしっぽー……)
スティンガーは右の鋏で切断された自らの尻尾を持っていた。
(フェネはいまどうなってるの?)
(……)
ドラッヘが頭を右に向けると、地面に仰向けに寝かされているフェネの姿があった。
(血は止まっているっす)
フェネの身体には、ビャハの槍による傷口が痛々しく刻まれている。
(これでまだ生きてるってのが凄いっす……けどもう助かるかどうかは……)
(そんな……)
ドラッヘの言葉を聞き、スティンガーは切り取られた尻尾を地面に落とした。
(……ぼくがよわいからなのかな)
(お前、何を急に……)
(ぼくがよわいからフェネがぼくをまもってこんなめにあった、ぼくがよわいからごしゅじんはぼくをあしでまといだっていったんだよね)
(……)
(ぼく、ぼくはどうすればいいんだろう……いたっ!?)
ドラッヘはスティンガーにかるい頭突きを喰らわせた。
(あーもう辛気臭いっすね!)
(な、なにするのドラッヘー……)
(まったく、お前はなにを難しく考えてるんすか!)
ドラッヘがスティンガーに怒鳴る。
(お前は難しく考えるのが苦手なんすよね?)
(う、うん)
(だったらお前は難しく考えるのは止めろ! 弱かったら強くなればいいっす! そうだろ?)
(むずかしくかんがえるな……よわかったらつよくなればいい……わかったー! ぼくむずかしくかんがえない! つよくなってごしゅじんとフェネをたすけるんだー!)
スティンガーは両前脚をぶんぶんと振りまくる。
(ふん、さっきの陰気臭いのより、その馬鹿な感じのほうがお前らしいっすよ)
(……でも、つよくなるっていってもどうやって?)
(任せろっす、さっき飛んでる時にちょうどいい物を見つけたっす)
―ヤタイズナの戦う場所から少し離れた場所。
「キチチチィィィィィ!!」
(死ねやぁっ!!)
テザーの岩の鋏とオニグモの左前脚がぶつかり合う!
(《花の鎌》!)
その隙にカトレアが花の鎌の匂いをオニグモに散布するが、オニグモは左前脚を振って花の鎌の匂いを吹き飛ばす!
(もう、またですわ!)
(俺、致命傷与えられない、言う)
テザーとカトレアにより、オニグモの右中脚を切断に成功しているが、その後は攻めきれずにいる。
ウモウ達の方も、戦線は膠着状態となっていた。
その様子を、地面に掘った避難場所から見守るミミズさんとバノンの姿があった。
「ぬうう……このままではヤタイズナ達の援護に行けんのう……」
「しかし俺達が戦いに参戦しても状況が変わるとは思えないしな……ん?」
「どうした?」
「何か上に飛んでるんだが……」
(よーし、あいつらの真上に着いたっすよ!)
(それで、これからどうするのー?)
(スティンガー、今のお前のレベルは?)
(え? 40だけど……)
(ならあいつらで丁度位になるっすね)
(んー? よくわかんないよー、なにやるかはっきりとおしえてよー!)
(んなもん決まってるじゃないっすか、スティンガー! お前があの二匹をぶっ殺して、進化するんすよ!)
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