第154話 トモダチⅣ

―数分前、ヤタイズナとオ・ケラの戦闘。














「うおおおおおおっ!」


「ジィィィィィィィッ!」





私の炎の角とオ・ケラの前脚が音を立ててぶつかり合う!





「《炎の角・槍》!」





私は炎の角・槍に切り替え、オ・ケラを突く!





「ジィィィ!」





オ・ケラは右前脚を振り私の角を弾き、そのまま身体を回転させ左前脚を私の前胸部に殴りつけた!





「ぐぁぁっ!?」





攻撃を喰らった私は後方に吹き飛ぶが、空中で態勢を整え、地面に着地した。





……前胸部が少しへこんでしまっている……だがまだ戦える!





「ジィィィィィィィィ!」





オ・ケラの両前脚が輝き始めた!





「来るか、爆発の爪!」


「ジィィィィィィィィィィィィ!!」





オ・ケラは私目掛けて跳躍し、光り輝く両前脚を振り下ろしてくる!





受け止める……いや、強化された奴の力は未知数、受けるのは危険だ!





私は地面を蹴り、後ろに跳ぶ!





オ・ケラの両前脚は私が居た場所に叩き付けられ、大爆発が起きた!!





「うああああああああっ!?」





あまりの爆風に、私は空中に投げ出されてしまうが、翅を広げ、何とか空中に留まった。





「ジィィィィィィィッ!?」





オ・ケラも爆風に飛ばされ、後方に吹き飛んで行く。





私はオ・ケラが飛ばされた方角に移動し、地面に着地した。





「まったく……相変わらず強力だな、あいつの《爆発の爪》は……」





受けなくて正解だった……しかし、どうやら奴は強化された両前脚での爆発の爪を使いこなせていないようだ。





奴が力を使いこなせていない内に勝負を決めなければ……








(ご……ごしゅじんーーーー!!)








そう考えていると、聴き慣れた声が聴こえた。





「この声……スティンガー!?」





声の方を振り返ると、スティンガーが私に向かって走って来ていた。





「スティンガー! やっと会えたな、心配してたんだぞ……!? 尻尾が切れてるじゃないか! 一体何があったんだ!?」





(ごしゅじん~……フェネが、フェネが~……)


「フェネ? 誰なんだそれは?」





スティンガーが鋏で指した方を見ると、血を流して地面に倒れている両腕が翼の少女の姿が。





あれは……ハーピーか? 何で砂漠に……





(フェネはぼくのともだちで、ぼくをビャハからまもって……)


「ビャハ? そいつは何処に? 他のしもべ達はいないのか?」


(お前、来るのが遅いっすよ!)


「その声はドラッヘ! お前も無事だったのか」





ドラッヘが私の上空で静止する。





(まぁ一応無事って言えば無事っすね……そんな事より奴らが来たっすよ!)


「ギシシシシィィィ」


「ギチュチュチュ」





二匹の魔物が私達の前に現れる。





「っ! こいつらは……サソリモドキにヒヨケムシ!」








サソリモドキは、クモ綱サソリモドキ目サソリモドキ科に属するクモの仲間で、ヨーロッパ・オーストラリア大陸を除く世界各地の熱帯・亜熱帯に生息し、日本では伊豆諸島、九州南部、奄美、沖縄本島から八重山諸島に生息している。








体長はおよそ25mm~85mmで、全身黒褐色で、体は頭胸部、腹部、鞭部からなり、頭胸部と腹部は偏平で縦長な形になっている。





夜行性で、薄暗く湿った場所を好むため昼間は倒木や石の下、巣穴に潜み、主に小型の昆虫を食べて生きている。





頭胸部にはサソリを思わせる大きなハサミが二つ付いており、これは獲物を捕らえるときや巣穴を掘る時に使われ、また頭胸部には左右4対合計8本の脚もあり、脚については一番上の細い1対は触角のような感覚器の役割を果たし、その他3対は歩行に使われるのだ。





大部分がサソリに酷似しているが、尾の部分は細長いムチ状になっており、毒は無いが尾の付け根の肛門腺から酢のような分泌物を噴射する。





この分泌物は酢酸・カプリル酸の混合物から成り、成分の約80%は酢酸であるため非常に強い酸性であり、この分泌物がもし人間の皮膚に付着した場合、強い刺激があり火傷のような炎症を起こしてしまう。





万が一目に入った場合は角膜炎などの症状が起きてしまう危険性があるのだ。





この酢のような臭いがする分泌物を出すため、英名でビネガロンと呼ばれているのだ。











そしてもう一匹のヒヨケムシは節足動物門鋏角亜門クモ綱ヒヨケムシ目に所属する生物で、主に熱帯の乾燥気候の場所に分布し、全身に毛が生え、大きな頭部と腹部、巨大なはさみの様な鋏角を持つ生物だ。





ほとんどの種類は乾燥地帯に住み、昼行性の種類もいるが、多くのものは夜行性で、日中で石の裏返しなどにより太陽の下で晒すとすぐ影のある場所へ向かって走る、この事から日を避ける者、ヒヨケムシという名が付いたのだ。





徘徊しながら触肢で獲物を偵察し、発見すると物凄い速さで獲物に接近、吸盤で平滑な表面や獲物を掴み、強力な鋏角によって獲物の外皮や肉を食い千切り、出血多量で弱らせてから捕食、大きな鋏角で獲物を肉塊になるまで咀嚼する恐ろしい食事の仕方をする。





一方で、ヒヨケムシは無毒で体も柔らかい為、天敵に狙われやすく、同じ生息地の哺乳類や鳥類など大型脊椎動物、特に昼行性の種類は鳥類にとって重要な獲物とされているのだ。





ちなみに8本足であるが、前方の触肢が発達しているため、しばしば10本足だと勘違いされてしまうこともある。





一時期、巨大ヒヨケムシの写真がネットに出回ったことで一躍有名になり、それから「人喰い」や「猛毒クモ」など様々なデマがネットで広く流されたが、基本的には人間を襲わない無害な生物だ。











こいつらがスティンガー達を……ん?





サソリモドキとヒヨケムシの後方から一匹の虫がゆっくりとこちらに向かって来ていた。





「ギチチチチィィィ」


「あれはウデムシ! 世界三大奇虫が勢揃いとはな……」





ウデムシは、節足動物門鋏角亜門クモ綱に所属する生物で、カニムシモドキとも言われているが、カニムシと言う生物とは形態的類似性は低く、系統的にも近縁ではない。





世界中の熱帯地方に広く生息していて、偏平で丈夫な体と横に張り出した長い足と、鎌状の触肢を持つ。





その外貌は他に類するものがないほど異様で、世界一気持ち悪い虫と言われているのだ。





小さいものでは体長5mm程度だが、大きいものは体長4cmを越え、しかも足は体長の2〜4倍以上あるため、陸生の節足動物としては大型の種なのだ。





森林の朽ち木の隙間や、樹皮上、洞穴などに生息し、夜行性で昼間は物陰に隠れ、種類によっては洞穴の壁に張りつき、天井もはい回る。





左右に向けて横歩きが得意とされ、普段の動きは鈍いが、捕食と避難の場合は瞬発的に素速く走る。





視力は弱く、鞭のような第一脚で周りの環境と獲物の行方を偵察し、巨大な鎌状の触肢で獲物を捕獲する。





ウデムシは見た目だけではなく生態も特徴的で、求愛や婚姻ダンスを行う種も存在いるのだ。

















ウデムシ、サソリモドキ、ヒヨケムシ。





この三匹はその奇怪な見た目から、世界三大奇虫と呼ばれているのだ。





まさか異世界でもお目に掛かれるとはな……





あの見た目から、恐らくウデムシの種類はタンザニアバンデッドオオウデムシ、サソリモドキはアマミサソリモドキ、ヒヨケムシはイエロージャイアントヒヨケムシだろう。





「ジィィィィィィィィィ!」





オ・ケラの声を聴こえ右を向くと、オ・ケラが私目掛けて突っ込んできていた。





「ギシシシシィィィィ!」


「ギチュチュチュチュチュ!」





オ・ケラの声に反応したのか、サソリモドキとヒヨケムシは一斉にオ・ケラに向かって走り出した!





「ギチュチュチュ!」





ヒヨケムシが巨大な鋏角でオ・ケラに襲い掛かる!





「ジィィィッ!」





オ・ケラは巨大鋏角を軽々と避け、右前脚でヒヨケムシの頭部をぶん殴った!





「ギチュチュァ!?」





頭部を殴られたヒヨケムシは、吹き飛び、地面に転がる。





「ギシシシィィ!」





今度はサソリモドキが尾から酸液を噴射する!





「ジィィィィィィィッ!」





オ・ケラの左前脚が輝き、そのまま地面を殴りつけた!





爆発が起き、爆風で酸液は周囲に四散する。





「ギシシィィ!?」


「ジィィィィィィィィィッッ!!」





サソリモドキが怯んだ一瞬の隙に、オ・ケラはサソリモドキの懐に入り込み、左前脚で腹部を殴った!





「ギシィィィィィィッ!?」





サソリモドキは宙を舞い、地面に落下した!





「ジィィィィ……」





オ・ケラの奴、片脚での爆発の爪は使いこなしているのか……





「ビャハハハハハハハハハハ! 痛ぇなおい!」





奇妙な笑い声のする方に顔を向けると、砂を払いながら歩いてくる赤い鎧の男の姿があった。





「んん? 俺が吹っ飛ばされてる間に、新しい奴が増えてるなぁ……ありゃあ確か従魔使いの従魔の一本角じゃねぇか」


(ごしゅじんー! あいつだよ! あいつがフェネをー!)


「何だって! それじゃあ、あいつがビャハか!」





あいつがあの村の人間を皆殺しにし、スティンガーの尻尾とフェネと言う子を!





「お前喋れんのか!? ビャハハハハハハハハハハ! こいつは面白れぇ、ネームドは滅多にお目に書かれねぇからなぁ……ザハクを倒し、アルトランド王国とドラン火山での作戦を潰した奴……殺し甲斐があるぜぇ!」





そう言うとビャハは三又槍を手にこちらに向かって歩き始めた。





「ジィィィィィィィィィ!」


「ギシシシシィィィィ!」


「ギチュチュチュチュチュ!」





オ・ケラも私の元に向かって来ようとするが、サソリモドキとヒヨケムシがそれを阻んだ!





「ジィィ、ジィィィィィィィ!」





進路を塞がれたオ・ケラは怒りの叫びと共に二匹に攻撃を仕掛け始めた!





「俺のペット達も殺り始めたか……それじゃあこっちもお楽しみ再会と行くかぁ! ビャハハハハハハハハハハ!」


「ドラッヘ、スティンガーとフェネと言う子を連れて、離れていろ!」


(言われなくても分かってるっすよ!)


「ビャハ! 私のしもべを傷つけた事、絶対に許さないぞ!」


「ビャハハハハハハハハハハ!! 良いねぇその気迫! そうでなくっちゃなぁ! 六色魔将、赤のビャハ、行くぜぇ!!」












































「第82回次回予告の道ー!」


「と言うわけで、久しぶりに始まったこのコーナー!」


「スティンガーは傷つき、フェネと言う少女は血塗れだし、更には強化されたオ・ケラに三大奇虫! 様々な虫達の大乱戦!」


「うむ! オニグモと戦っている奴らの事も気にかかるのう……」


「だとしても、この戦いは絶対に負けられない! 絶対に勝って見せる!」


「その意気じゃヤタイズナ! それだは次回『スティンガーの決意』!」


「「それでは、次回をお楽しみに!」」











「……そう言えば他のしもべ達はどこに居るのかのう……?」














・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る