第153話 トモダチⅢ

――場面は再び変わり、廃墟の周囲ではフェネとビャハが戦いを繰り広げている!


「ビャハハァ!」


 ビャハはフェネに高速の諸手突きを繰り出す!


「クゥッ!」


 フェネは紙一重で避け、ビャハの腹部目掛けて右蹴り攻撃!


「ヘッ!」


 ビャハは後方に下がりそれを難無く回避し、そのまま繰り突きを放った!

 フェネは回避しきれずに、脇腹に三又槍の右部分が突き刺さる!


「グアァァァァ!?」

「ビャハハハ! もう終わりかぁ? もっと楽しませてくれると思ったんだが……あ?」

「グ、ウゥゥゥッ!」

「お、おおおおお!?」


 フェネは左足で三又槍を掴み、右足で地面を蹴り上げてビャハごと空を飛ぶ!


「ハァァァァァァァ!!」


 そして空中で槍を引き抜き、地面に投げ落とした!

 ビャハは落下しながらも態勢を整え、着地する。


「ビャハハハハハ!! 良いね良いねぇ、そうでなくちゃなぁ!」

「ハァッ……ハァッ……」


 フェネは空中でビャハの様子を窺うが、ディオスの攻撃で傷ついた右の翼からは血が流れ続けていた。


「おいおい、そんな所にいないで降りて戦おうぜぇ? 俺飛べねぇんだよ~」

「……」

「仕方ねぇなぁ……じゃあこれでどうだ!」


 ビャハは空中のフェネ目掛けて三又槍を投擲!


「ッ!?」


 フェネは三又槍を回避、そのまま三又槍は空を切っていく。


「ナンデブキヲ……ダケドイマガチャンス!」


 フェネはビャハ目掛けて急降下していく!

 対するビャハは槍を投擲した後、一歩も動かず降下していくフェネを見上げている。


 そんなビャハに疑問を抱きながらも、フェネは攻撃の態勢に入る。

 フェネがビャハに攻撃しようとした、その時だった!


 背後から何かが飛来し、フェネの左の翼に突き刺さった!


「アアアアアアアアアアアッ!?」


 フェネは突然の激痛で態勢を崩し、地面に落下する。

 翼に突き刺さっている物は……槍! 先程ビャハが投擲し、フェネが回避したはずの三又槍が刺さっているのだ!


「ビャハハハハハハ! これでもう空は飛べねぇなあ」


 ビャハが右手を上に掲げると、フェネの翼に突き刺さっていた三又槍宙に浮き、ビャハの元に移動し右手に収まった。


「イ゛、ダイ゛……デモゼッタイニマケナイ……アノイシヲマモル!」


 フェネは起き上がり、ビャハを睨みつける。


「ビャハハハハ、いい気迫だぁ……その勢いでもっと俺を楽しませてくれよぉ!」

「クゥッ!」


 ビャハがフェネに接近、連続突きを繰り出し、フェネを追い詰めていく。




(ドラッヘー! フェネが、フェネがたいへんだよー!)

(黙ってろっす! こっちも大変なの分かってんすか!?)

「ギシシシシィィィィ!」


 サソリに酷似した蟲が酸液を噴射、ドラッヘがそれを回避する。


「ギチュチュチュ!」


 巨大鋏角の蟲の周囲に砂の球が現れ、ドラッヘ目掛けて放たれる!


 ドラッヘは二匹の攻撃を回避しながら大鎌鼬で攻撃するが、回避されてしまう。

 先程からこの繰り返しで、膠着状態となっていたのだ。


(くそっ! これじゃあ埒が明かないっす! しかしこのままじゃフェネが危険なのは確かっすね)

(うん! だからフェネをたすけにいこうよー!)

(分かったっすよ、しかしフェネの所に行ったとしてもあの赤鎧がいる、そう簡単には行かないっすよ)

(それでも、ともだちはぜったいにたすけるんだー!)

(……まぁ、自分もこのままずっと飛び続けていられるわけじゃないっすからね……しっかり掴まってるっすよスティンガー!)

(うん!)


 ドラッヘは猛スピードでフェネの元へ飛んで行く!


「ギシシシィィィ!」

「ギチュチュチュチュチュ!」


 二匹の蟲がドラッヘを追って走る!


「ハアッ、ハァ……」

「結構楽しませてもらったぜぇ、それじゃあトドメといくかぁ……!?」

(《大鎌鼬》!)


 ドラッヘは大鎌鼬をビャハ目掛けて放つ!

 ビャハは三又槍で大鎌鼬を弾きながら、後方へと下がって行く。


(よし、離すっすよスティンガー!)

(わかったー!)


 ドラッヘは掴んでいたスティンガーを離し、フェネを掴んで急上昇した!


(おいお前、大丈夫っすか?)

「ウ、ウウッ……」

「ちぃっ! 邪魔をしやがって!」

(くらえーーーー!)


 スティンガーがビャハの背後に回り込み、毒針を突き刺そうとする!


「フン!」


 ビャハは毒針をたやすく回避し、スティンガーの尻尾を掴みスティンガーを地面に叩き付けた!


(うわああああ!?)

「最後のトドメを邪魔しやがってぇ!」


 ビャハは三又槍をスティンガーの尻尾に突き刺し、尾を切り取った!


(ぎゃあああああああああああっ!?)

(スティンガーっ!!)

「ビャハハハハハハハ!! 雑魚が、邪魔するからそうなんだよ」


 ビャハは笑いながら切り取った尾を投げ捨てた。


(……と、ともだちをきずつけるやつはぜったいにゆるさないぞー……)

「スティン、ガー……」

「さっさと死ね」


 ビャハが三又槍を振りかぶる。


(スティンガー! 今助け……っ!)

「ギシシシィィィィ!」

「ギチュチュチュ!」


 ドラッヘがスティンガーを助けようとした時、酸液と砂球が襲う!


(くそっ! こんな時に……っ!? お前何を!)

「ビャハァッ!」


 ビャハが三又槍を振り下ろし、スティンガーを突き刺す!








 ―その瞬間、フェネがビャハの前に立ち塞がり、身体に槍が突き刺さった。


「……ゴフッ!」


 フェネは吐血し、両膝を着いた。


(ふぇ、フェネ、どうして)


 自分を守ったフェネにスティンガーは問いかけた。


「スティンガー、トモダチ……トモダチヲマモルノハ、トウ、ゼン……」


 スティンガーに笑顔を見せ、フェネは地面に崩れ落ちた。




(フェネーーーーーーーっ!!!)




 スティンガーは悲痛な叫びを上げた。


「友達ねぇ……くだらねぇなぁ……まぁいいか、とりあえずお前も死ねぇっ!」

(フェネ……フェネが……)


 ビャハがスティンガーに槍を突き立てようとしたその時、廃墟から少し離れた場所から爆発が起きた!


「何だぁ!?」


 突然の事に驚き、槍を止めたビャハ。

 そして爆発した場所から、一つの物体がスティンガー達がいる方角に向かって物凄い速さで飛んできている。


「ジィィィィィィィィ!!!」

「な、何だありゃ、ごはあああああああああああああっ!?」


 飛んで来たのは、オ・ケラだ! 


 そして飛んで来たオ・ケラにぶつかり、ビャハは後方へと吹き飛ばされた!

 オ・ケラは地面に着地すると、もう一つ、爆破場所から飛んで来て、地面に着地する者が。


「まったく……相変わらず強力だな、あいつの《爆発の爪》は……」

(ご……ごしゅじんーーーー!!)

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