第152話 トモダチⅡ

―スティンガー達が魔人達と戦っている廃墟から一キロ離れた場所。























「ウモウ、約束の地はもう直ぐか?」


「はい、約束の地はもう目の前です!」


「そうか……」





カトレアとテザーと合流し、移動する事一時間、ようやく約束の地の近くまで来れたようだ。





「もうすぐあの焼き鳥と再会か……あ奴絶対にとっちめてくれるわ……」


「ミミズさんまだ気にしてたのか……いい加減慣れた方が……!?」





私達の前方に突如無数の水晶玉が出現し、光線を放ってきた!





「皆、避けろぉぉっ!!」


「ぬおおおおおおおおおお!?」


「危ねぇっ!?」





私達は四方に散らばり、光線を回避した。





「あの水晶玉は……」


「ふふふふふふ、お久しぶりですねぇ皆さん、お元気でしたか?」


「やっぱりお前か、ブロスト!」





私達の目の前に現れたのは、六色魔将の一色、青のブロストだった。





「また儂らの邪魔に来たのか! 面倒な奴じゃのう」


「そんな事言わないで下さいよぉ……せっかく貴方達に会いに来たと言うのに……私はとても悲しいです」


「うるさい! 私達はこの先に用があるんだ、お前に構ってる暇は無い!」


「ふふふふふ、貴方の仲間達はこの先で他の六色魔将と戦っていますよぉ」


「何だって!?」





残りのしもべ達がこの先に……





「仲間が心配で仕方ないとは思いますが、今貴方達をこの先に通すわけには行きません」


「何だと!」


「どうせまた何か企んでおるんじゃろう! 胡散臭い奴め!」


「ふふふふふふふ……貴方達には私の最新魔道具の相手をしてもらいましょうか」


「最新、魔道具……?」


「ふふふ……《開きなさい》」





ブロストの言葉と共に上空に亀裂が入る!





そして亀裂から巨大な円柱状の物体が落ちて来た。





「な、何だこれは……何かの容器か!?」


「また奇怪な物が出てきおったのう……」





私達が円柱状の物体を警戒していると、円柱状の物体から音が聞こえてきた。





「何じゃこの音は……」


「皆、警戒を怠るなよ」





これは……円柱の物体の内側から叩いている音か?





音はドンドン大きくなり、円柱状の物体が変形し始め、亀裂が入り始めた。





亀裂はどんどん大きくなり、遂に円柱状の物体が割れ中から生物が飛びだしてきた!





飛び出して来た生物を見て、驚愕した。





「なっ!? お前は!?」


「何じゃとぉ!?」





あのモグラとザリガニそしてコオロギの三匹を合体させたようなフォルムは……間違いない!











「お前は……オ・ケラ!?」











そう、円柱状の物体から出てきたのは私が倒したはずの魔物、オ・ケラだった。





その身体は以前の姿と変わり、異様な姿となっている。





まずあの特徴的な両前脚が金属になっていて、前よりも大きく鋭くなっている。





更に前胸部には金属製の首輪のような物をつけ、右目は赤い水晶のような球体になっている。





だがそれ以上に異様なのは、先程円柱状の物体から飛び出してきた後、微動だにしていない事だ。





以前のオ・ケラなら鳴き声を上げ、一目散に私を攻撃して来ていたはずだ。





私は鑑定を使い、オ・ケラのステータスを確認した。



































ステータス


 名前:オ・ケラ


 種族:O・ケラ


 レベル:不明


 ランク:不明


 称号:ワームイータ―、ストーカー


 属性:地


 スキル:俊足、水中移動


 エクストラスキル:土竜の剛爪、穴堀の超人、爆発の爪



































種族やスキルは以前と変わっていない、しかしレベルとランクが不明になっている。





一体、オ・ケラに何があったんだ……





「ヤタイズナ、オ・ケラはあの時アルトランド王国でお主が倒したはずじゃろ!?」


「あ、ああ……確かに私はあの時オ・ケラを倒したはずだ……」


「ふふふふふふ……実はあの戦いを水晶で観戦してましてねぇ……まさかリンドが突如乱入してきた魔物に瞬殺されるとは思ってもいませんでしたよぉ……まぁ元からあまり使えない男でしたけど……」





ブロストは大きなため息を吐いた。





「しかし貴方とそこにいるオ・ケラとの戦いは実に面白かったですよぉ、何より貴方と同等に戦える戦闘能力の高さはとても素晴らしいと思いました……だから貴方との戦いに敗れ、城から落ちて行くオ・ケラを回収したのです、そして瀕死のオ・ケラを治療し、魔道具を身体に埋め込む事で私の命令に従う生きた魔道具として生まれ変わらせたのです」


「生きた魔道具……」


「……ヤタイズナの記憶の中にそう言う作り話を見たことはあったが……実際に見るとこれほど胸糞悪いもんは無いのう……」


「ふふふふ……それでは実戦テストを行いましょう……さぁ彼等と戦いなさい、オ・ケラ!」





ブロストの言葉で、オ・ケラの首輪に紫色の電気が流れ、ブロストの右目が光った!





「ジィィィィィィィ……」





先程まで動かなかったオ・ケラが動き出し、私を見た。





「ジィィィィィィィィッ!!」





そして私目掛けて突進してきた!





「ミミズさん、下がっていてくれ!」


「ジィィィィィィィィ!」





オ・ケラが私目掛けて右前脚を振り下ろす!





「《炎の角》!」





私は炎の角でオ・ケラの攻撃を受け止める!





ぐぅっ……お、重い……





「……うおりゃあああああっ!」





私は炎の角を振り、オ・ケラを前方に投げ飛ばす!





「ジィィィッ!」





オ・ケラは地面に空中で態勢を整えて着地し、再び私に突進してくる!





「《斬撃》!」





炎の斬撃をオ・ケラ目掛けて放つ!





「ジィィィィィィィィ!」





オ・ケラはその巨大な前脚で弾き落とし、そのまま突進してくる!





「ならば、《炎の角・槍》!」





私は炎の角・槍でオ・ケラを刺突!





「ジィィィッ!」





しかしオ・ケラは左前脚を盾にして炎の角・槍を弾いた!





「ジィィッ!」





そしてそのまま左前脚を振り上げ、私を後方に叩き飛ばした!





「ぐぅっ!?」





私は翅を広げ空を飛び、空中からオ・ケラを警戒する。





オ・ケラの奴……ブロストの手によって格段にパワーアップしている……こんな所で足止めを喰らっている場合じゃないって言うのに……





「ミミズさん! ここは私が何とかするから、ミミズさん達は約束の地に向かってくれ!」


「分かったのじゃ! 行くぞお主ら!」


「そうは行きませんよぉ、《開きなさい》」





ブロストの背後に亀裂が出現し、二匹のオーガが出てきた。





「そんな奴らでは、こ奴等は止められんぞ!」


「分かってますよぉ、でもこれならどうですかぁ?」





ブロストは懐からナイフを取り出し、オーガ達に突き刺し始めた!





「グオオオオオオー!?」


「な、何をしとるんじゃあ奴は!?」


「自分で呼びだした魔物を自分で傷つけるなんて……何考えてんだ?」


「ふふふ……」





ブロストは懐から無色透明の珠を取り出し、オーガ達に埋め込んで行く。





「……グ、グオオオオオオオオ!?」





無色透明の珠を埋め込まれて数秒後、オーガ達の身体がボコボコと膨らみ、巨大な肉の塊となった。





あの珠、人間以外にも使えるのか!





「ジィィィィィィィィ!」


「ぐぅぅぅっ!? オラァァァッ!!」





オ・ケラの前脚を受け止め、その勢いを利用して後ろに投げ飛ばした!





ドクン……ドクン、ドクンドクンドクンドクン……





肉の塊から鼓動が聞こえ始め、徐々に鼓動が速くなっていく。





「ミミズさん様、この面妖な肉の塊は一体!?」


「またあれか……おい貴様、あの時の質問に答えてもらおうぞ! その珠は一体何なのじゃ!」


「前にも言ったでしょう? 教えられませんとねぇ」


「貴様ぁ! 儂を小馬鹿にするのも大概に……」





ミミズさんがブロストに怒りを露わにする中、肉の塊の表面が割れ、赤い液体が漏れだすと共に中から体長3メートル程の巨大な蟲が出てきた。





「あれは……」





やや偏平な頭胸部に丸みを帯びた三角形の大きな腹部、そして多数の棘の生えた立派な八本の足……オニグモか!





オニグモは、節足動物門クモ綱クモ目コガネグモ科に属する大型の造網性のクモで、日本全土,朝鮮,中国,台湾に分布していて、体長は雌で30mm、雄でも20mmに達する。





個体差や地方変異が多く、全身が黒褐色から黒に近い色のものから茶色のもの、緑がかったものまでさまざまな個体が存在している。





夜行性で昼間は物陰に潜み脚を縮めてじっとしているが、夕方から夜にかけて大型の円網を張り、その中心に静止し、朝になると再び網から離れ物陰に潜むのだ。





オニグモの魅力の一つは、背面にある葉状の斑紋だ。





この斑紋や体色は地域的な変異に富み、同じ種でもまったく別種のように見えるのだ。





ちなみに「オニグモ」という名をもつクモが数多くおり、オニグモはこれらの総称としても使われているのだ。





「貴方達の相手はこの二匹です、さぁ行きなさい」


「キチチチィィィィィ!!」





オニグモがミミズさん達に襲い掛かる!





(非常食さん、下がってくださいませ!)


(《岩の鋏》ぃっ!)





一匹のオニグモの脚攻撃をカトレアとテザーが受け止めた!





(随分と大きなクモですわねぇ……食べがいがありそうですわ)


(俺、ぶつ切りにしてやる、言う)


「キチチチチィィ!」





カトレアとテザーが戦闘を開始した!





「キチチチチチチチ!」


「ぬおおおおお!? もう一匹がこっちに来たぞぉ!?」





オニグモがミミズさん達を攻撃したその時、ウモウがオニグモの前脚を剣で受け止めた!





「大丈夫ですかミミズさん様」


「う、うむ、大丈夫じゃ」


「ミミズさん様達は私達の後ろに御下がり下さい、行くぞお前達!」


『オオオオオオオオオッ!!』








ウモウの言葉で、屈強な鳥面達が武器を持ち、オニグモと戦い始める。





「う、ウモウ達凄いな……」


「うむ、ここは奴らに任せて良さそうじゃのう……ヤタイズナはどうなっておる?」








「うおおおおおおおおおっ!!」


「ジィィィィィィィィィッ!!」





私の炎の角とオ・ケラの前脚がぶつかり合った衝撃で私とオ・ケラは同時に吹き飛ばされる!





「ぐぅぅっ!」


「ジィィィッ!」





私とオ・ケラは同時に地面に着地した。





「……オ・ケラ、私は約束の地で戦っているしもべ達の元に一刻も早く行かなければならないんだ、だから……そこを退けぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


「ジィィィィィィィィィィィィ!!」





私とオ・ケラの戦いは激しさを増していった。

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