第151話 トモダチⅠ
「ギチュチュチュチュ!」
巨大鋏角の蟲がスティンガーに向かって突進する!
(フェネはやらせないぞー!)
「ギチュチュ!」
(えーいっ!)
スティンガーの鋏と蟲の鋏角が音を立ててぶつかり合う!
(くらえーっ!)
スティンガーが尻尾の毒針で蟲の頭頂部を狙う!
「ギチュチュチュチュッ!!」
蟲は頭部を振り回し、その勢いでスティンガーを空中へと放り投げた!
(うわー!?)
空中に放り出されたスティンガーを、ドラッヘがキャッチした。
(うん、それよりもフェネが……)
巨大鋏角の蟲が倒れているフェネの元に移動を開始する。
「う、ううん……」
しかしその途中で倒れていた魔人が起き上がるのを見た蟲は進路を変更し魔人の元に走り出した。
「ギチュチュチュ!」
「な、何だこいつは!?」
突如目の前に現れた蟲に驚いた魔人は尻餅をつき、後ろに後ずさる。
「ギチュチュチュチュ!」
「う、うわあああああああああああ!!」
蟲はそのまま魔人に襲い掛かり、魔人は悲鳴を上げながら貪り食われていく。
(な、なにやってるのあいつー……)
(仲間じゃ無かったんすか?)
「どういう事だビャハ!? 何故私の部隊の者を襲わせる!」
怒るディオスを見てビャハが楽しそうに笑う。
「ビャハハハハハ! お前の部下がそんな所で寝てるからいけねぇんだよ、そいつら今腹ペコだからよぉ、目についた奴は俺以外餌なんだよ」
「何だと……!?」
「ギシシシシィィィィ!」
「ぎゃあああああああああ!」
サソリに酷似した蟲が触肢で魔人を捕獲し、そのまま骨毎噛み砕いて喰らっていく。
「ほらほら、早く部下を逃がしてやらないとお前の部下全員俺のペット達に喰われちゃうぜぇ? ビャハハハハハハハハハハ!」
とても愉快そうに笑うビャハを見て、ディオスは拳を握りしめた。
「全員、速やかに撤退せよ!」
ディオスの指示で魔人達が撤退していく。
「ディオス様、例の石はどうするのですか?」
「それは私が何とかする、お前達は早く逃げるのだ!」
「分かりました!」
部下を逃がしたディオスは、廃墟に向けて走り出した。
「奴らの相手はビャハに任せ、私は任務を遂行する!」
その瞬間、ディオスの目の前に突如何かが立ちふさがった!
「何っ!?」
「イカセナイッ!」
(フェネ!?)
(あいついつの間に起き上がったんす!?)
そう、先程まで倒れていたフェネが一瞬でディオスの前に移動していたのだ!
「邪魔をするなっ!」
ディオスは短剣を抜いてフェネに斬りかかる!
「フンッ!」
「なっ、何だと!?」
フェネの右の足裏に短剣が突き刺さるが、そのまま短剣ごとディオスの腕を掴んだ!
「ハァァァァァァァァァァ!!」
そのままディオスを振り回し、そのまま地面に叩き付けた!
「ぐはあっ!?」
フェネは左足で刺さった短剣を引き抜き、後ろに投げ捨てた。
「ココカラサキハ、ゼッタイニイカセナイッ!!」
「ぐぅぅっ……この気迫、先程とはまるで違う!」
(フェネ……)
(あいつどうしちまったんすか……っ!)
「ギシシシシィィィィ!」
サソリに酷似した蟲が紐状の尾をドラッヘ達に向け、液体を噴出した!
ドラッヘは身体を回転させて、液体を回避、液体はそのまま下にあったゴブリンやオーガの死体に降りかかる。
すると液体が付着した死体の表皮が焼けただれたようになっていく。
(なんか酸っぱい匂いがするー……)
(強力な酸っすか……当たったらただじゃすまないっすね……《大鎌鼬》!)
「ギチュチュチュ!」
「ギシシシシィィィィ!」
上空からドラッヘが大鎌鼬で巨大鋏角の蟲とサソリに酷似した蟲を攻撃するが、二匹共大鎌鼬を難なく回避した。
(くそっ、素早いっすね……遠距離攻撃は対して効果なし、だからと言って近接じゃこっちに不利すぎるっす……そう言えばもう一匹は?)
ドラッヘが周囲を確認すると、二匹の背後に、ゆっくりと移動している鎌状の触肢をもつ偏平な体の蟲の姿が見えた。
(ああいう鈍そうな奴に限って一番ヤバいんすよね……まぁ今はこいつらに集中っす!)
(わかったー!)
スティンガー達が巨大鋏角の蟲とサソリに酷似した蟲と戦ってる中、フェネとディオスの戦いも激化していた。
「はぁっ!」
ディオスが針でフェネの目を狙うが、フェネは身体を捻らせて針を回避する!
その隙を狙ってディオスが跳躍、フェネの顔面目掛けてハイキック!
「ギャッ……ハアアアアアアアアアッ!」
「ぐはぁっ!?」
―を喰らいながらもフェネはディオスの腹部に蹴りを喰らわせた!
後方に吹き飛んだディオスは空中で態勢を整え着地する。
「鎧越しでこの威力か……ぐふっ!」
ディオスは吐血しながら、左手に短剣を持った。
「ウオオオオオオオオオ!!」
「……魔人王様のために、貴様を倒す!」
両者は再び激突! しようとしたその瞬間、フェネの背後から三又槍が飛んで来る!
「ッ!」
フェネは背後からの攻撃に気付き、右に跳んで槍を回避する。
「ビャハハハハハハハハハハ、良いね良いねぇ! 楽しそうだなぁ!」
槍が宙に浮き、ビャハの元へ戻る。
「ビャハ、今度は何のつもりだ!」
「なぁに、ペット達を遊ばせるだけのつもりだったんだが、お前らの戦いを見てたらうずうずしてきてよぉ……コイツは俺に譲れ、その間にお前はあの石を手に入れて来いよ」
「……分かった、ここは任せるぞ」
ディオスが廃墟に向かう。
「イカセナイッテイッテル!」
「おっと、お前の相手は俺だ!」
ビャハが槍をフェネに投合した!
「クッ!」
フェネが再び槍を回避、そしてまたビャハの手へと戻る。
「ジャマスルナァッ!」
「そんなこと言わずに一緒に楽しもうぜぇ! ビャハハハハハハハハハハ!」
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