第148話 サソリとトンボと空飛ぶ少女Ⅴ

―砂に埋もれた廃墟の内部。





(それでねー、ごしゅじんはサイクロプスってやつをたおしたんだよー)


「スゴイスゴイ! スティンガーノゴシュジンスゴーイ!」


(でしょー♪ それでねー、そのから、あめりあってところにいってねー……)





スティンガーはフェネにヤタイズナの事、今までにあった出来事をフェネに話していた。





フェネもスティンガーの話を目を輝かせて聞いている。





(……あいつ等本当に元気っすねー……それにしても……)





ドラッヘは廃墟内部を見渡す。





(……確かドラン火山にあった廃墟もこんな感じだったすね……)


(そしてごしゅじんはザハクっていうやつともたたかってー)


「ヘー……」


(……)














―そんなにいこじにならなくてさ、ごしゅじんのことをもっとしんじてみなよー♪














(……今更、何を信じろって言うんすかね)





ドラッヘはしばらくの間、スティンガーとフェネの会話を聞いていた。





























(―というわけで、ぼくたちはこのさばくにきたんだけどー……あのでっかいやつのせいではなればなれになっちゃったんだー)


「ソーダッタンダー、スティンガーノオハナシ、トッテモタノシカッタヨー!」


(そういってくれてうれしいよー♪)


「ソウダー! オハナシキカセテクレタオレイニ、スティンガータチニアレヲミセテアゲルヨー」


((アレ?))





スティンガーとドラッヘが疑問に思っていると、フェネが翼を広げ空を飛び、目の前の壁の中心に足を付けた。





「エイッ!」





フェネは足を壁に押し付けると、足の着いた部分の壁が動き、奥へと押し込まれ。





すると床から一メートル程の円柱が出現、それと同時に床が開き階段が出現した。





(隠し階段?)


(ねーねー、このさきになにかあれっていうのがあるのー?)


「ソウダヨー♪ ツイテキテー」





階段を下りるフェネについて行くスティンガーとドラッヘ。





階段を下りた先は、とても広い部屋だった。





「コレガ、ミセタカッタモノダヨー」


(へー……)


(こ、これは……)





フェネが翼で指したのは、部屋の最奥にある壁画だった。





その壁画には、巨大な三つ首の竜、もしくは蛇のような生き物が周りの生物と建造物を破壊し、喰らい尽くしているような絵が描かれていた。





「ドウ? スゴイデショー」


(うん、すごいねー!)


(何すかこの禍々しい壁画は……ん? あれは……)





ドラッヘは壁画に描かれた三つ首の生き物の真ん中の首の目に黄色く光る石がはめ込まれているのを発見した。





(色は違うけど、あいつが持っていたものと似てるっすね……)





ドラッヘは空を飛び、光る石に近づいた。





「ダメーッ!!」





するとフェネがドラッヘの前を通せんぼし、睨みつけた。





「アソコノイシ、トロウトシタデショ?」


(いや、只近くで見たかっただけっすよ、取ろうなんて思ってないっすよ)


「ナライイケド……モシトッタラユルサナイカラネー!」





フェネは頬を膨らませて怒っていた。





(どうしたのフェネー? そんなにおこって……あのいしがそんなにだいじなのー?)


「ン~……ジツハソンナニダイジカドウカ、ワタシニモワカラナインダー」


(わからないー? どういうことー?)





スティンガーが質問すると、フェネは壁画を見つめながら返答した。





「ワタシ、イツカラココニイルノカワスレチャッタケドネー……コノヘキガハ、アノイシハマモラナキャッテキモチニナルンダー……ナンデダロウネー?」


(うーん……ふしぎだねー)


「フシギダヨネー」


(それなら、何でそんな大事な物を自分達に見せたんすか?)


「ソレハモチロン、フタリハトモダチダカラダヨー!」


(と、友達ぃ? 誰がっすか?)





フェネが翼を羽ばたかせてそう言うと、ドラッヘは素っ頓狂な声を出した。





「エ……トモダチジャ、ナイノ……?」


(当然っすよ、会ってまだ一日位しか経ってないのに友達とか、なれるわけねぇっすよ)





ドラッヘの言葉を聞いてシュンとするフェネ。





(なにいってるのー? ぼくたちがともだちなんてとうぜんだよー♪)


「……ホント? ワタシタチ、トモダチ?」


(うんー! ぼくたちとフェネはともだちだよー♪)





スティンガーの言葉を聞いたフェネは笑顔になり、スティンガーの鋏を足でもって空を飛び、クルクルと回りはじめた。





「トモダチ♪ トモダチ♪ ワタシタチハトモダチー♪」


(わー! きゅうにふりまわさないでよー、でもこれちょっとたのしいー♪)





振り回されるスティンガーは楽しそうに笑っていた。





(本当に似た者同士っすねー……ん? ぼくたちはって……自分も入ってるんすか!?)


「トモダチ♪ トモダチ♪」


(ともだち♪ ともだち♪)





ドラッヘの叫びは無視され、スティンガーとフェネは楽しそうに回り続けていた。






































「エイッ」





地下の部屋から出ると、フェネが床の円柱に足を置き、床に押し込んだ。





すると開いていた床が閉まり出し、元の状態に戻った。





「コノバショハ、トモダチダケノヒミツダカラネー♪」


(わかったー、ぜったいにひみつにするねー)


(はいはい、秘密っすね)


「ヨーシ、ソレジャアゴハンヲトリニイコッカー♪」


「いこういこーう♪」


(……本当、このテンションにはついて行けないっすね……)





スティンガー達は獲物を探しに廃墟の外に出た。





(ねーねーフェネ、美味しい獲物はどの辺にいるのかなー?)


「ココカラスコシイッタバショニオアシスガアルンダー、ソコニイケバエモノヲミツケ―」





フェネが喋っていると、背後から何かがフェネに向けて飛んで来た!





「エイッ」





しかしフェネは身体を曲げ、足で器用に飛んで来たものをキャッチした。





「……ナニコレー?」





飛んできた物の正体は矢だった。





(これ、にんげんたちがつかってるどうぐだよー)


(と言う事はつまり―)





ドラッヘが喋り終わる前に、スティンガー達の周囲を取り囲むように緑のマントと青のマントの集団と複数の魔物達が現れた。





(なになにー!? こいつらだれー!?)


(ドラン火山に居た連中の色違いっすね……まぁ当然敵っすね)


「ヒョットシテアレヲウバイニキタノー!? ソンナノダメナンダカラー!」





スティンガー達は戦闘態勢を取り、敵を警戒する。














―スティンガー達から少し離れた場所でディオスとブロストがスティンガー達を見ていた。





「背後からの攻撃をいともたやすく……あの少女は何者だ?」


「獣人種で間違いなさそうですが……研究材料として捕まえてみますかねぇ」


「任務に集中しろブロスト、あの廃墟に突入する前に不安要素は排除する! 全部隊、攻撃開始!」


「さて、楽しませてもらいますかねぇ……ふふふふ……行きなさい」





ディオス達の指示を聞き、魔人族たちがスティンガー達に襲い掛かった!

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