第143話 ガタクとファレナ



ヤタイズナ達がバラス砂漠へと向かってしばらくたった頃、ランド大樹海では―





「《風の大顎》!」


「フン、《暴風の鎌》!」





ガタクの左の大顎とエンプーサの右前脚がぶつかり合う!





「はあああああああああああっ!!」


「……弱いわ!」


「ごはぁっ!?」





エンプーサは右前脚を振るい、ガタクを地面に叩き落とした!





「まったく……貴様がどうしてもと言うから戦ってやっていると言うのに……もっと我を楽しませんか」


「ぐ、ぐぅぅぅ……なんのこれしき、まだ戦えるで御座る!」


「そうか……では行くぞ、《大鎌鼬》!」





エンプーサの周囲に巨大な風の刃が出現しガタクに向けて撃ち出される!





「鎌鼬では対応しきれぬ……ならば!」





ガタク翅を広げ、空を飛び、大鎌鼬を交わしながらエンプーサに突っ込んでいく!





「喰らうで御座る! 《斬撃》……」


「《暴風》」


「ぐはぁ!?」





斬撃を放とうとしたガタクは上からの突風で地面に叩き付けられた!





「おのれ……はっ!?」





ガタクは瞬時に起き上がり前を向くと、右前脚を振り下ろすエンプーサの姿が見えた。





「終わりだ」





ザンッ!!

















―エンプーサはガタクの目の前の地面に右前脚の鎌を突き刺した。





「これが模擬戦でなければ貴様は死んでいる、我の勝ちだ」


「……ありがとうございましたで御座る、明日もよろしくお願いするで御座る」


「まぁ、以前に比べたら少しは楽しませてもらったぞ、貴様も強くなって我を楽しませられるように頑張るがいい、クハハハハハ」





エンプーサとの模擬戦を終えたガタクはエンプーサに礼を言い、南の森にある巣へと帰り始めた。
































―翌日。





「では拙者はエンプーサ殿の元に行ってくるで御座る、留守を頼むで御座る」


(分かりました、いってらっしゃいませガタクさん)


(もし巣に侵入者が来たら昼食として食べてやりますわ)


(頑張って来てくだせぇガタクの旦那)








今日もガタクはエンプーサとの模擬戦のために東の森にあるエンプーサの棲み処に向かった。


























「今日も良い天気で御座るな……ん?」





ガタクが歩いていると、右の茂みから話声が聞こえ、段々と近づいてきた。





「ほら、こっちにあるから付いてきてー……ってあれー!? ガタクさんだー! 久しぶりだねー!」


「ウィズ殿! どうしてここに?」





茂みの中から出てきたのは、ウィズだった。





「いやー、ちょっと大樹海に自生している植物の採取依頼をしててねー、あっそうだ! もう一人いるからガタクさんに紹介するねー、ファレナさーん」


「……」


「何と、ファレナ殿では御座らぬか!」





茂みから出てきたのは、以前にガタクが出会った事がある冒険者、ファレナだった。





「あれー? ガタクさんファレナさんと知り合いだったのー?」


「うむ、前に少しだけ……ウイズ殿もファレナ殿と知り合いだったので御座るか」


「うん、ファレナさんは冒険者の中でも期待の新人なんだよー! あまり喋らないけど仕事は早くて確実にこなしているし、しかもかなりの美人さんだから冒険者内でもミステリアスな美人冒険者って人気があるんだよー!」


「ほう、そうなので御座るか」


「そうなんだよー! それはそうとガタクさんは散歩でもしてるのー?」


「拙者は東の森に用があって……」


「奇遇だねー、私達も東の森に行くんだー……そうだ! ガタクさんどうせだったら一緒に行かない?」


「良いで御座るよ」


「よーし、それじゃあ出発進行ー♪」





こうしてガタクはウィズ達と共に東の森へと移動し始めた。





「久しぶりで御座るなファレナ殿、これも縁と言う物で御座るかな?」


「……私もまた君に会えるとは思ってなかったよ」


「ははははは、所でファレナ殿、前にも言ったで御座るが、聞きたい事があるので御座る」


「……何だ?」


「『どんな者であろうと恩人には礼を尽くせ』と言う事を教えてくれた者は一体どのような人間で御座るか?」


「……私の兄だ」


「兄上で御座るか、その様な事を教える御仁だ、さぞや立派な兄上なので御座ろうな」





ガタクの言葉を聞いたファレナは少しだけ表情を暗くした。





「……ああ、とても誇り高く卑怯な事を嫌い、仲間想いの素晴らしい武人だった……」


「だった、と言う事はもしや……」


「……もうこの世にはいない」


「……すまぬ、嫌な事を聞いてしまったで御座るな……」


「いや、いいんだ……ガタク、私も君に聞きたい事がある」


「む? 何で御座るか?」


「君のその大顎は何故欠けているんだ?」


「ああこれで御座るか……これは拙者の主を救うために負った名誉の負傷と言うやつで御座るよ」


「主? 君には主がいるのか?」


「うむ、しかし欠けたままでは殿の足手まといになるため、しばらく殿と共に戦ってはおらぬで御座る……故に早く進化してこの大顎を元に戻し、更に強くなって殿と共に戦いたいので御座る!」


「……成程、君は少しだけ兄に似ているな」


「そうで御座るか?」


「兄にも忠義を捧げた王が居る……その王のためならば命を差し出すのも躊躇わなかった……」


「ファレナ殿は本当に兄上殿を尊敬していたので御座るな」


「最高の兄だ、私も兄のようになりたいと今でも思っているよ」


「ファレナ殿ならきっとなれるで御座るよ!」


「ふふ、ありがとう」





ガタクの言葉にファレナは優しい笑みを浮かべた。





「二人ともー! 早く行こうよー!」














こうして、東の森に到着した後、ガタクはウィズとファレナに別れを告げ、エンプーサの元に向かった。





「それでは、今日もよろしくお願いするで御座る!」


「ほう、昨日よりも気合いが入っているようだな……さぁ我を楽しませるがいい!」


「参るで御座る!」





今日もガタクはヤタイズナのため、特訓を続けるのであった。












































「第79回次回予告の道ー!」


「と言うわけで今回は私、ウィズとお姉ちゃんが次回予告をするよー!」


「……」


「あれ? お姉ちゃん? どうしたのー?」


「ねぇウィズ、私ってこの作品のヒロインなのよね?」


「え、多分そうだと思うけど……どうしたの急に?」


「私ね……去年の5月頃を最後に本編に出てないのよ!」


「そ、そうなの?」


「そうなのよ! 序盤の方は大分出番があったのに話が進むたびに私の出番は減る一方! それに対してウィズは今回の魔鳥王編の最初から出番があるし、しかも今回も出番があったし!」


「落ち着いてよお姉ちゃん、ほらファレナさんだって一年間出番が無かったんだよ?」


「でも今回出たじゃない! 出番があったじゃない! ああ……次私が本編に出られるのはいつかしら……ふふ、ふふふふふふふふふふふふ……」


「お、お姉ちゃん!? しっかりしてよー!? え、えーとそれじゃあ次回『サソリとトンボと空飛ぶ少女』! お楽しみにー!」





・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので、次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。

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