第132話 カブトvsニセハナマオウカマキリⅤ

その言葉と共に東の森王が両前脚を振り下ろすと、纏われていた風が一つに集まり、巨大な竜巻が出現した!


「っ……!」

「クハハハハハハハハハハハ!!」


竜巻は周囲に暴風を吹き荒らし、木々や岩を巻き込みながらヤタイズナに向かって移動する。


「な、何と言う風で御座るか!?」

(うわあああああああああ!?)

(と、飛ばされますーっ!?)

(東の森王の力が、これ程とは……!)

(俺、飛ばされる、言う)

(ご、ご主人様は大丈夫ですわよね……)

(ご主人……)

(頑張ってくだせぇ!)

(魔王様は絶対に負けないであります!)

『ギチチチチチィィィィィィィ!!』

「あれが東の森王最強の技……魔王の力に匹敵してんじゃねぇのかこれ……いくらヤタイズナでもこれは……」

「バノン、そのような心配をする必要などないわ!」


弱気のバノンに、ミミズさんが一喝する。


「だけどよミミズさん、あの竜巻相手にヤタイズナは勝てるのかよ!?」

「勝てる! あ奴は……ヤタイズナは絶対に勝つ!」


暴風が吹き荒れる中、ミミズさんはヤタイズナの勝ちを確信し、悠然と戦いを見守り続ける。


「ミミズさん……ん? あ、あいつ何で動かないんだ!?」


竜巻が迫ってくる中、ヤタイズナは一切動かない。


「このままじゃ、竜巻に巻き込まれて終わりだぞ!」

「殿……何か策があるので御座るのか……?」

「……」


竜巻がヤタイズナの200メートル前付近まで到達するが、ヤタイズナは依然として動かない。


「くっ、竜巻のせいでヤタイズナが見えなくなっちまったぞ!」

「殿ぉっ!」

「お主ら落ち着かんか! ヤタイズナは死なん!」


そして遂に竜巻はヤタイズナの居る場所に到達し、留まる。


「殿……」

(ごしゅじん……)


一分が経過した所で、竜巻の勢いが落ちて行き、二、三分が経過した時点で竜巻は完全に消え去った。


ヤタイズナの居た場所を中心に、地面が削り取られ、クレーターのようになっていた。


そしてそこにヤタイズナの姿は無かった。


「風に切り刻まれ塵になったか……さらばだヤタイズナ、貴様との戦いは実に楽しかったぞ」

「そんな、殿が……」

「マジかよ……」

「……」


ガタク達が悲観する中、ミミズさんだけが平静を保っていた。


「……む?」


東の森王は、クレーターの中心を見て、あるモノを発見した。


「あれは……穴?」


その瞬間、東の森王の後ろの地面が割れ、何かが飛びだした!


「何っ!?」

「《炎の角》っ!」


地面から飛び出してきたのはヤタイズナだった!


ヤタイズナはそのまま東の森王の左前脚関節部を攻撃し、焼き切った!


「ガァアアアアアアアアアアアアアッ!?」


東の森王の左前脚が地面に落ち、東の森王は悲鳴を上げて悶える。


「見ろ! ヤタイズナだ!」

「殿っ! 無事だったので御座るね!」

(ごしゅじん~!)

(ご主人様ー!)

「ふふふ……だから言ったじゃろうが! ヤタイズナは死なんとな!」












―よし! 上手くいったぞ!


東の森王への奇襲に成功した私は、東の森王から距離を取り、様子を窺う。


東の森王は苦しそうに呻きながらも、戦闘態勢を崩さずに私を警戒している。


「グゥゥゥゥ……我が最強の技をそのような方法で避けていたとはな……見事だ」

「ふふ、特訓の成果さ」


特訓とは、昨日ミミズさんに教えて欲しいと言っていた時の事だ。





「―で、何じゃ? 儂に教えて欲しい事とは」

「うん、私に《穴堀の神》系統のスキルの習得方法を教えて欲しいんだ」

「《穴堀の神》系統のスキルじゃと?」


そう、穴堀の神はどんな地形でも穴を掘る事が出来るスキルだ。


そしてその穴堀の速さはまさに神らしい。


つまり私がそのスキルを習得できれば、地面から東の森王に奇襲を仕掛ける事が出来る。


「教えてくれミミズさん、どうすれば《穴堀の神》系統のスキルを習得できるの?」

「んー……確か《穴堀の素人》と言うスキルは穴堀が得意な魔物なら誰でも習得できるスキルだったはずじゃ」


それなら問題は無い、カブトムシは幼虫の頃から地面の中で暮らしているし、成虫になっても地面に潜るからな。


「そして次に大事なのが……どれだけ多く地面を掘ったかじゃ」

「どれだけ多く地面を掘ったか?」

「うむ、掘った地面の量に準じて《穴堀の素人》から次の段階へとスキルが進化するのじゃ」

「成程……つまり」

「うむ! 今から地面を掘って掘って掘りまくれば良いのじゃ!」

「分かった! 私やるよ!」


私は巣から離れた場所で可能な限り地面を掘りまくった。


その結果、穴堀の素人を入手、その後穴堀の玄人と言うスキルに進化した。


そして東の森王が死神の暴風刃を放ち、私に向かって竜巻が迫って来るタイミングで、私はこのスキルで地面に穴を掘り、地中へと潜った。


そして東の森王の背後まで掘り進んだ事を確認し、奇襲を仕掛けたのだ。


しかし上手くいって本当に良かった……


もしも事前に私が地面を掘って東の森王の攻撃を避けたり、攻撃をしていたら、東の森王は死神の暴風刃を放った後、地面からの奇襲を警戒され、空を飛んだりしたかもしれないからな……


「……クハハハハハハハハハハハ! 貴様本当に楽しませてくれるな! だがこの程度ではまだ我は倒れはせんぞ!」

「なら次でお前を確実に倒す! 《斬撃》、《操炎》!」


私は炎の斬撃を分裂させ、東の森王を攻撃し、後ろへと移動する。


「この程度! 《大鎌鼬》!」


東の森王は大鎌鼬で炎の斬撃を相殺する。


「どうした! つぎで確実に倒すのでは無かったのか……っ!?」

「ああ、お前を倒す」


私は地面に突き刺さった昆虫の卵を掘り起こし、地面に置く。


「喰らえぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


そして再び東の森王目掛けて打ち飛ばした!


昆虫の卵は東の森王目掛けて一直線に突き進む!


「《炎の角》、《超突進》!!」


そして更に超突進を使い、東の森王へと猛スピードで突進する!


どうだ! 昆虫の卵を回避した瞬間、超突進で奴の身体を貫いてやる!


「ちぃっ! 《暴風》!」


東の森王は自身に暴風を使って上昇、昆虫の卵を回避した。


私はそのまま東の森王目掛けて突き進む!


「舐めるな! この程度で我を仕留めたつもりか!」


東の森王が右前脚を上に構えると、東の森王の周囲に風が纏われる。


あれは死神の暴風刃!? 右前脚だけで、しかもあの態勢でも放てるのか!?


「《死神の暴風刃》!」


東の森王が右前脚を振り下ろし、竜巻が出現する!


しかし最初の竜巻よりも少し小さい。


恐らく両前脚での死神の暴風刃ではないから、威力が下がっているのだろう。


今更突進を止めることも出来ない、一か八かこのまま突っ込む!


「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


私は竜巻の中へと入った!


竜巻の中は鎌鼬のように鋭い風が舞っていて私の身体を切り裂いて行く!


「ぐぅぅぅぅぅぅ……!」


気合いだ……気合いを入れろ……!


私は……絶対……勝つんだあああああああああああああああああっ!!!


私は気合いで竜巻内を突き進み、遂に竜巻の外に出た!


「な、何だとォォォォォォ!?」

「これで終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


私はそのまま突き進み、東の森王の右前脚を抉り取った!


「グガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?」


東の森王は悲鳴を上げながら地面に落ちて行く。


「くそっ……仕留めそこね、た……」


私も力を使い果たし、地面へと落下する。


「ぐ……ぐぅ、ぅぅぅ……」


駄目だ、何とか身体を動かそうとするが、全く動けない……


東の森王はまだ生きている。


このまま奴が動き出せば私は確実に殺られてしまう。


くそっ……


「く、クハハハハハハハハハハハ……」


東の森王が起き上がり、力なく笑う。


「我が最強の技を破っただけでなく我が両腕を失わせるとはな……我の負けだ……楽しい戦いだったぞ、ヤタイズナよ……」


その言葉を言い終わると同時に東の森王は地面に倒れた。


そして頭に声が響く。


《東の森王との戦いに勝った。 ヤタイズナのレベルが105になった。 条件を達成しました、スキル、風属性耐性レベル1が風属性耐性レベル3になりました。 称号:東の森王を獲得しました。》


勝った……? やった、ぞ……


私の意識はそこで途切れた。














「第74回次回予告の道ー!」

「と言うわけで数か月ぶりに始まったこのコーナー!」

「本当に久しぶりだよねこのコーナー……」

「うむ、それはともかく、遂に東の森王を倒したぞ!」

「激戦だったよね……」

「うむ……よくやったのじゃ、ヤタイズナ! さて次回はヤタイズナに新たなるしもべが出来るぞ!」

「また新しい昆虫が生まれるんだね! ……でそいつはどんな奴なの?」

「それは次回のお楽しみと言う奴じゃ! それでは次回『東と南を統べし者』!」

「「それでは、次回をお楽しみに!!」」


・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。

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