第131話 カブトvsニセハナマオウカマキリⅣ

腹部を切り裂かれた私はそのまま後方へと吹き飛ばされる。


「《暴風》」

「ぐっ!?」


そしてまた後ろからの突風で東の森王の元へと戻される。


「これで終わりだ!」


東の森王が私に暴風の鎌を振るう!


「ま……まだだぁぁぁぁぁぁっ!!」


私は翅を広げて、何とか態勢を整えた!


「《炎の角・槍》!」

「ぬぅ!?」


私は炎の角・槍で暴風の鎌を弾き、空を飛んで東の森王から距離を取った。


「はぁっ……はぁっ……」


東の森王に付けられた腹部の傷を見る。


よし、多少体液が流れているが傷自体は浅い、まだ十分に戦える。


それにしても……あの暴風は本当に厄介だ……まさか下からも突風を起こせるなんて……


いくらカブトムシの脚が踏ん張りが効くと言っても、あれほどの突風が足元から来たのでは踏ん張る事は出来ない。


更に宙に浮いた私の後方から突風を発生させて、自らの間合いに近づけさせる、この組み合わせが凶悪だ。


その上こちらが接近し攻撃しようとしても、暴風で私を吹き飛ばすと言う事も可能なはず。


かと言って距離を取っての戦いもこちらに不利だ。


何とかしてあの暴風を攻略しなければ……


「《暴風》」

「ぐぅっ!?」


頭上から突風が吹き、私は下に落下する!


「《炎の角》、《斬撃》!」


だが私は何とか持ちこたえて、上昇しながら東の森王目掛けて炎の斬撃を撃ち放った!


「ふん、《斬撃》!」


東の森王は風の斬撃を撃ち、炎の斬撃を相殺した。


くそっ! やはり駄目か……こうなったらあの手を使うしか……いや駄目だ、あの手は一度見られてしまえば奴に対策されてしまう可能性が高い……ここぞという時に使わなければ……


「どうしたヤタイズナよ! この程度で怖気着いたか!」

「くっ……」


考えろ、何かあるはずだ、この状況を打開する方法が……


私がそう考えているその時だった。


―そよ……


背後から、微かな風を感じた。


「《暴風》!」

「くぅっ!?」


その後、背後から突風が起き、私は東の森王の元に吹き飛ばされる!


「シャアアッ!」

「《炎の角》!」


私は炎の角で暴風の鎌を防ぎ、空を飛んで距離を取る。


今のそよ風は……まさか……


私は集中し、神経を研ぎ澄ます。


―そよ……


すると頭上からほんのわずかだが風を感じた。


「《暴風》」


そしてその後すぐに頭上から突風が吹き、私は落下する!


やはり間違いない……ならば!


「《炎の角・槍》!」


私は態勢を整え、地面に着地と同時炎の角・槍を使い、そのまま全速力で東の森王目掛けて突進する!


「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

「愚かな、無策で突進とはな……」


前方からそよ風を感じた。


「これでトドメだ、《暴風の鎌》、《暴風》!」


今だ!


私は瞬時に、横に跳んだ。


すると私の居た場所の前方から突風が吹いた。


「何だとっ!?」


やはり思った通りだ。


あの突風が発生する前には必ず、突風が起きる場所にほんのわずかな風が吹く。


恐らくスキル発動前に起きる予備動作なのだろう。


この微風を察知できれば、何処から突風が来るかが分かり、突風を回避、もしくは利用することが出来る!


「ちぃっ! 《暴風》!」


頭上に微風を感じ、私はすぐさま横に跳び、突風を回避する。


このまま一気に畳みかける!


「《昆虫召喚》!」


私の目の前に昆虫の卵が召喚される。


「あの卵は!」

「喰らえぇぇぇぇぇぇっ!」


私はそのまま勢いを付け、東の森王目掛けて昆虫の卵を打ち飛ばした!


昆虫の卵は高速回転しながら、東の森王の腹部目掛けて一直線に突き進む!


「その技はすでに見切っているぞ!」


東の森王は翅を広げて空を飛び、昆虫の卵を回避する。


昆虫の卵はそのまま地面に激突、地面を抉りながら突き進み、やがて回転が弱まり停止した。


東の森王が昆虫の卵を回避するのは計算済みだ。


私も翅を広げ空を飛び、炎の角・槍で東の森王の腹部を狙って一直線に進む!


「おのれ……! 《暴風》!」


東の森王が暴風で私を吹き飛ばそうとするが、私は身体を捻って横に移動して、突風を回避!


「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」


そしてそのまま東の森王に突進し、腹部に炎の角・槍を突き刺した!


「ガァァァァァァァァァァァッ!?」


東の森王は悲鳴を上げ苦しみながら地面へと落下した。


東の森王の腹部に炎の角を・槍を突き刺していた私は落下の衝撃で宙に投げ出され、地面に着地した。


上手くいったが、この程度でくたばるような相手ではないはずだ。


私は警戒したまま、距離を置き、東の森王の様子を窺う。


「……」


東の森王は無言で起き上がり、私が炎の角・槍を突き刺した箇所を見た。


「……我の暴風を見切り、これほど長く我と戦えた相手は貴様が二匹目だ、ヤタイズナよ……ククク……クハハハハハハハハハハハ!」


東の森王はとても愉快そうに笑う。


「楽しい! 楽しいぞヤタイズナ! お前との戦いは心が躍る! ……だからこそ、貴様にはこの技を出す事にしよう」


東の森王は両前脚を天高く掲げる、すると東の森王の周りに風が纏われ始める。


「っ!」


これは西の森王との戦いを見ていた時と同じ……と言う事は!


「ヤタイズナよ! 我が最強の技にどう受けてみせるか、見せてもらうぞ!」

「……望むところだ!」

「受けて見よ! 《死神の暴風刃》!!!」

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