第129話 カブトvsニセハナマオウカマキリⅡ

私の目の前に居るこの巨大蟷螂は東の森王、ランド大樹海の東の森の頂点に立つ魔物で、前に一度私達の前に突如現れ私に興味を持ったと言って戦いを挑んできたのだ。


あの時は私がエッグホームランで東の森王の胸部に風穴を開け、東の森王は自らの身体に風穴を開けた私の事を気に入り、私がもっと強くなったら再び自分と戦うように言って、東の森へと帰って行き戦いは終わった。


東の森王の胸部を見ると、東の森王の胸部は完全に塞がっていた。


自己再生系のスキルは持っていなかったはずなのに、なんて生命力なんだ……流石はニセハナマオウカマキリだ。


私は東の森王に鑑定を使い、ステータスを見た。












ステータス

 名前:無し

 種族:ディアボリカ・マンティス

 レベル:205/300

 ランク:A+

 属性:風

 称号:東の森王、殺戮者

 スキル:斬撃

 エクストラスキル:暴風の鎌、大鎌鼬、昆虫の重鎧、暴風

 ユニークスキル:死神の暴風刃











前よりもレベルが少し上がっている……それに風の鎌も暴風の鎌へと進化している。


私は東の森王に話しかけた。


「久しぶりだな東の森王、一体何の用だ?」

「聞いていなかったのか? 貴様と戦いに来たと言っただろう、しかし来たのは良いが留守だと言われてな……仕方ないからそいつで暇をつぶさせてもらっていたのだ」


東の森王は前脚で地面に倒れているガタクを指した。


「まぁ、我の暇つぶし相手としては少々物足りぬ弱者だったがな」

「くぅぅぅ……」


地面に倒れているガタクは悔しそうな声を出した。


「……ガタクはとても頼れる私の大事なしもべだ、弱者呼ばわりは止めろ」

「弱者に弱者と言って何が悪い、そんな事よりもヤタイズナよ、以前よりも格段に強くなったようだな……我は嬉しいぞ……」


東の森王は両前脚を頭上高く広げ、戦闘態勢を取った。


「さあ我と戦えヤタイズナ! 貴様の全力を我に見せるがいい!」


……今の私はAランクまで進化しているが……奴のランクはA+、それにレベル差も圧倒的だ……


今の私に勝てるか分からない……だけどやるしかない!


私が戦闘態勢を取ったその時。


「ちょっと待つのじゃ!」


ミミズさんが戦闘態勢を取っている東の森王の前に立った。


「……何だ貴様は? 我とヤタイズナの戦いを邪魔する気か?」

「そんなつもりはない、儂はミミズさん、ヤタイズナの師匠じゃ!」

「……貴様がヤタイズナの? 嘘を吐くな、貴様のような魚の餌がヤタイズナの師匠なわけないだろう」

「誰が魚の餌じゃ! ……って今はそこに突っ込んどる場合ではなかったのう……良いか東の森王、ヤタイズナは長旅から帰って来たばかりで疲労しておる、貴様は全力のヤタイズナと戦いたいのであろう?」

「無論だ」

「ならば一日だけで良い、ヤタイズナを休ませるのじゃ、そうすればヤタイズナはお主と全力で戦う事が出来るじゃろう、どうじゃ?」

「……良いだろう、一日だけ待ってやろう」


そう言って東の森王は私達に背を向けて東の森へと戻って行く。


そして一度だけこちらを振り向き。


「明日の朝、中央の巨大樹で待っているぞ」


そう言い残し、東の森王は帰って行った。


「ふ~……何とかなったわい」

「ありがとうミミズさん、おかげでここでの戦闘を避けることができたよ」

「礼を言う必要はない、それよりまずはガタク以外のしもべ達がどうなっているかを確認するのじゃ」

「確かにそうだね、ベル、ガタクの傷を癒してやってくれ」

(分かりました、《癒しの鈴音》)


ベルにガタクの治療を任せた私は、急いで巣へと向かった。





(主殿!? お戻りになられたのですね!)

(俺、ご主人おかえり、言う)

『『ギチチチチチィィィィィィィ!!』』


巣の入り口に到着すると、ソイヤー達が巣から出てきて、私を出迎えてくれた。


「皆ただいま、……他の皆は大丈夫なのか?」

(はい、師匠が皆を巣へと非難させ、一人で東の森王と戦ったのです……)

「そうか……」


それから私は、ソイヤーに私達が居ない間に他に何かあったかどうかを聞いたが、ソイヤーの話では私達が居ない間特に問題は無かったと言う。


それと召喚していた卵の内20個が孵化し、ソードアントとシールドアントが5匹づつ、アーミーアントが10匹生まれたそうだ。


そして、シールドアントとソードアントが20匹づつガーディアントとソーアントに進化したらしい。


さらにあのティーガーが私達の留守の間に進化したと言うのだ。


「遂に進化したのか……それでソイヤー、ティーガーはどこに居るんだ?」

(それが……狩りに出ていまして……ここには居ないのです)

「そうか……ん?」


何処からか果物のような独特の香りが漂って来た。


私は匂いがした方角に身体を向けると、物凄いスピードでこちらに向かって来る生物を発見した。


「あれは……」


あの大きな複眼に鋭い顎、そして体の金属光沢……間違いない! ハンミョウの成虫だ!


ハンミョウは私の目の前で止まり、私に頭を下げた。


(おかえりなさいませ主様、このティーガー、主様の帰りをお待ちしておりました)

「ただいまティーガー、立派な姿になったね」


ティーガーの体長は1メートル80センチ程になり、白い立派な大顎が目を引く。


この大顎は間違いなくオスのモノだ。


(はい、これで主様のお役に立てます……主様の敵は全てこの顎で肉団子にしてやります!)


ティーガ―は大顎をカチカチと鳴らす。


……何か少しだけ性格が変わった気がするな……そうだ、ステータスを確認しないとな。


私はティーガーに鑑定を使い、ステータスを見た。








ステータス

 名前:ティーガー

 種族:タイガービートル

 レベル:1/50

 ランク:B

 称号:魔王のしもべ

 属性:地

 スキル:穴堀初心者、怪力鋏、俊足

 エクストラスキル:岩の大顎










Bランクか、また頼もしい味方が増えたな。


「ティーガー、これから頼りにさせてもらうね」

(はい、お任せ下さい!)












大体の事を済ませた私は、自室で休息を取っていた。


……しかし。


「何か前よりも増えてるな……」


自室の周りには私の石像が5つほど増えていた。


……これ私が居ない間にまた増えるんじゃないだろうか……


そう思っていると、ミミズさんが私の部屋に入って来た。


「ヤタイズナよ、ガタクの傷は癒えたそうじゃ、今は部屋で眠っているらしいぞ」

「そうか……大事にならなくて良かった……」

「さて、問題は明日じゃな」

「うん……」


明日は東の森王との決戦……奴を倒す手段を考えないと……


「今のお主の全力を出しても勝てるか分からぬ相手じゃからのう……しかも前に見た奴のユニークスキル……あれは強力じゃったのう」

「《死神の暴風刃》……」


前に私達が東の森王と西の森王の戦いで見たあの竜巻……


アレを攻略しない限り東の森王に勝つことは出来ないだろう。


「あの竜巻をどう回避すればいいんだろうか……」

「遠くから見ていた儂らにも暴風が襲って来たからのう……至近距離で放たれたらひとたまりもないじゃろうな……」

「うーん……」


空を飛んで上に回避する……駄目だ、あの暴風の中では自由に飛ぶ事は無理だろう。


なら横に……いや、駄目だ……残るは下……地面……!


「そうだ! その手があった!」

「な、何じゃ!? 急に大声を出して……」

「ミミズさん、教えて欲しい事があるんだ!」

「教えて欲しい事?」

「うん、これが上手くいけばあの竜巻を攻略できる……!」
















―翌日。


私はしもべ達を引き連れ、大樹海の中央の巨大樹へとやって来た。


巨大樹の下に東の森王が佇んでいた。


「来たか……!」


東の森王が両前脚を上げ、戦闘態勢を取る。


「さぁヤタイズナよ! 全ての力を出して戦おうではないか!」

「うっ……」


東の森王からとてつもない殺気が発せられ、私は後ろに後ずさってしまう。


「ヤタイズナ、奴に気圧されるでないわ!」

「ミミズさん……」

「魔王たる者、何時いかなる時でも堂々と戦い、全力で敵を叩き潰すのじゃ!」

「あいつに一発ぶちかましてこいよ!」

「殿! このガタク、殿の勝利を信じているで御座る!」

(ごしゅじんがんばれ~♪)

(ご主人様ー! 勝ってくださーい!)

(主殿、ご武運を祈っております)

(俺、ご主人が勝つって信じている、言う)

(ご主人様なら絶対に勝てますわ!)

(ご主人の勝利を祈って一曲鳴かせてもらいます)

(あんな奴ぶっ飛ばしてやってくだせぇ!)

(自分と仲間達一同、魔王様の勝利を確信しているであります!)

『ギチチチチチィィィィィィィ!』


皆が私を応援してくれている。


「さぁヤタイズナよ、行って来るのじゃ!」

「……ありがとう、必ず勝ってくるよ!」


私は皆の応援を背に、東の森王の元へと向かう。


「勝負だ! 東の森王!! 《炎の角》!」

「クハハハハハハハッ! 来い!! 《暴風の鎌》!」


私と東の森王は同時に突進し、炎の角と暴風の鎌がぶつかり合う!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る