第127話 故郷への帰路Ⅰ

―翌朝。


「それじゃあ魔竜王、私達はこれで帰りますね」

「さらばじゃ」

「気を付けて帰ってね~♪ レヴィアも元気でね~、怪我とかしないようにね、ご飯ちゃんと食べるんだよ~」

「はいはい分かったわよ、……あんたは寝すぎるんじゃないわよ、馬鹿兄貴」

「分かった~、寝すぎないように頑張るね~♪」


私達は魔竜王に別れを告げ、下山した。




下山後、近くで待機していたクーちゃんに乗り、バノンの実家がある町、アイアドへと向かった。


「それにしても、残り二体の魔王の居場所が分からないのは困ったねミミズさん」

「そうじゃのう……おいバノン、お主は何か知らんのか? そう言う系の伝説とか」

「いきなり言われてもな……伝説と言えば、竜神伝説の真実があんなしょうもない真実だったとはな……」

「ああ……」


昨日の夜、私達は魔竜王に話を聞かせている時に、魔竜王に竜神伝説の事を話した。


火山の噴火を止め、人々を救ったと言い伝えられている事を話すと、魔竜王がこう言った。


『人々を救った~? んー……でもこの火山に来た理由って影武者用意した後、暖かくて寝やすい場所が無いかなーって探してて偶然見つけただけなんだけどなー……確かにここに棲み始めてから噴火とかはしなくなったけどー……』


つまり竜神伝説とは、魔竜王が寝やすそうな場所を見つけて棲み始めた結果、偶然にも魔竜王の身体が蓋になって噴火が止まり、人間達はそれを竜神様が助けてくれたと勘違いしたと言う事だ。


「町の連中がこの事を知ったらどう思うんだろうな……まぁ信じねぇとは思うけどよ」

「ま、魔竜王のことじゃからこんな事だと思っておったがな」

「ははは……」


……本当、六大魔王ってろくなのがいないな……


「はっ、馬鹿兄貴らしい話ね」


……後、魔海王はいつまで全裸でいる気なんだろうか……











―一時間後。


私達はアイアドへと到着した。


魔海王とクーちゃんは町から少し離れた場所に待機してもらい、私達は町に向かった。


「さて、それじゃあバノンの実家に行ってガノンさんに別れの挨拶を行って来ようか」

「そうだな」


私達は町の中を移動し、バノンの実家に着いた。


「ただいまー! 親父いるかー?」


家に入ったバノンが大声で叫んで数秒後、ガノンが凄い勢いでこちらにやって来た!


「ぐはぁっ!?」


そしてそのままバノンをぶん殴った!


「大声出すなっつってんだろうが! また微妙に曲がっちまったじゃねぇか!」

「だから……その程度で殴んじゃねぇよ馬鹿親父!」

「何だとこの馬鹿息子がぁっ!」


バノンとガノンが殴り合いを始めた。


「また始まったね……」

「こやつ等会うたびに喧嘩しとるのう」





―数分後、喧嘩し終えたガノンとバノンが椅子に座った。


「けっ……無事に帰って来たようだな馬鹿息子、まぁ無事で何よりだぜ」

「そいつはどうも……」

「で? 別れのあいさつに来たついでに俺の仕事の邪魔をしたわけか」

「別に邪魔したわけじゃねぇよ、まぁ一応別れくらいは言った方が良いと思ってよ」

「……そうか、じゃ俺は仕事に戻るからよ」

「ああ、じゃあな親父」

「おう、元気でな」


そう言ってガノンは仕事場へと戻って行った。


「よし、それじゃあ行こうぜ」

「え? さっきのが別れの言葉?」

「随分と短かったのう」

「良いんだよ、今生の別れってわけじゃねぇし、俺と親父の別れはあれぐらいが良いんだよ」

「そう言うもんなのかのう?」

「さぁ……」

「さて、後は町に居る知り合い達に別れの挨拶を済ませねぇとな」


その後私達はバノンの知り合いの元を訪ね、バノンは別れの挨拶を済ませて行った。


そして最後に、町の入り口にいる門兵のゲンルに別れの挨拶を告げていた。


「じゃあなバノン、また街に帰った時は、一杯飲もうぜ」

「ああ、じゃあなゲンル、元気でやれよ」


私達は魔海王とクーちゃんの元に戻った。



「あら、結構早かったわね」

「はい、所で魔海王、魔海王は何時まで私達と一緒に行動するんですか?」

「ん? まぁアルトランドまでは一緒に居てあげるわ」

「何故上から目線なのじゃ……」

「それじゃあアルトランド王国に着いたらまたいつもみたいに私達がバノンやミミズさんを乗せて帰るわけか」

「このクラゲに乗るのもこれで終わりか……結構楽じゃったんじゃがのう」

「確かにね……それじゃあ魔海王、アルトランド王国に向かってくれませんか?」

「オッケー♪ それじゃあクーちゃん、出発よ♪」



―こうして私達はアルトランド王国へ戻って行った。

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