第120話 魔竜王

 ――時は少し遡る。

 ヤタイズナがシルバードラゴンフライと戦闘中、ミミズさん達は襲って来る魔人達を相手にしながら、火口に向かって進んでいた。


(《風の翅》! えーい!)

(喰らいなさい、《花の鎌》!)

(行きますよ、《混乱の鈴音》!)


 パピリオは風の翅で次々と魔人を吹き飛ばし、カトレアは花の鎌で魔人を集め、鎌で首を刈り取って行く。

 そしてベルの混乱の鈴音を聴いた魔人達はその場で一回転したり、飛び跳ねたり、仲間内で争っていた。


(くらえー!)

(《水の鎌》! 死にやがれぇ!)

(突撃! であります!)

『ギチチチチチィィィィィィィ!!』


 スティンガーが尻尾で敵を薙ぎ払い、カヴキとソーアント達が魔人達を切り裂いて行く。

 そして前衛でガーディアント達が突進で魔人達を蹴散らして道を切り開く!


「くそっ、なんて奴らだ!」

「このままでは……」

「狼狽えるな! もうじきゼキア様がこちらに来られる! それまで持ちこたえろ!」


 魔人達は近接戦闘は危険と判断し、後方から弓や魔法でミミズさん達を攻撃し始めた!


(ガーディアント部隊、防御陣形であります!)


『ギチチチチチィィィィィィィ!!』


 レギオンの指示でガーディアント達が陣形を組み、弓矢と魔法からミミズさん達を守った。


「畜生……数が多すぎるぜ」

「一人一人はそこまで強くないが、群れられると厄介じゃのう……こんな時魔海王がいればすぐにケリが付くと言うのに……あ奴は本当に何処に行ったのじゃ!」


 ミミズさん達は魔人達に邪魔されながらも、着々と火口に向かって進んでいった。












 ―ドラン火山、火口。


 そこに六色魔将、白のゼキア居た。


「ゼキア様、遺跡を探索した結果、例のモノが見つかりました!」

「でかした、でそれは今何処に?」

「はい、こちらに……」


 ゼキアの部下は懐から白く光る石を取り出し、ゼキアに渡した。


「これで目的は達成された……後は奴の力を全て奪い取り次第撤収するぞ」

「分かりました」


 ゼキアは火口の中を見下ろす。

 そこには宙に浮かぶ巨大な6本の柱から伸びる鎖に全身を縛られ、倒れている黄金の竜の姿があった。


「ゼキア様!」


 そこにゼキアの部下が息を切らしながら走って来た。


「何事だ?」

「山頂付近に例のドワーフとその従魔と思われる魔物が出現し、我が部隊と交戦しております!」

「やはり来たか、例の従魔使い……」


 その知らせを聞いたゼキアは2メートルはある大剣を持ちニヤリと笑った。


「我が友ザハクの仇……この白のゼキアが取ってくれようぞ!」

「……ねぇ、意気込んでいる所悪いんだけどー」

「!?」


 ゼキアは突然の背後からの声に驚き振り返った。

 そこには、ミミズさん達の元から突如姿を消した魔海王が立っていた。


「……何者だ? どうやってここに来た!」


 ゼキアは大剣を構え戦闘態勢を取った!


「そんなことよりさー……あの鎖、アンタ達がやったの?」


 魔海王は鎖に縛られた魔竜王を見て、不機嫌そうに質問した。


「そうだと言ったらどうする?」

「どうする? んーそうね……ちょっと痛い目に遭ってもらおうかしら?」


 魔海王は笑顔でそう言ったが、全身からはとてつもない殺気を放っていた。


「やれるものならやってみるが良い!」


 ゼキアは一気に距離を詰め、魔海王目掛けて大剣を振り下ろそうとしたその瞬間、魔海王が手の平をゼキアに向けた。


「《魔海の水砲》」


 魔海王の手の平から巨大な水の塊が現れ、ゼキア目掛けて高速で撃ち出された!


「何っ!?」


 ゼキアは咄嗟の判断で大剣を盾にして、水の塊を受け止めた!


「ぐっ……ぐおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」


 しかし耐え切れずにゼキアは水の塊ごと吹き飛ばされて行った!


「ゼっゼキア様ぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「うるさい」

「あごばぁっ!?」


 魔海王は再び水砲を放ち、魔人を吹っ飛ばした。


「さてと、それじゃああの馬鹿を縛ってるこの鎖を外そっと♪ 《魔海の水槍》」


 魔海王の周りに水の槍が出現し、宙に浮かぶ柱目掛けて撃ち出された!

 水の槍が柱に直撃したが柱には傷一つ付かない。


「あら意外と頑丈ね……仕方ないわね……」


 魔海王は飛び上がり、柱に接近する。


「砕けなさいっ!」


 そのまま柱を拳でぶん殴った!


 ぶん殴られた柱は真っ二つに砕け、地面へと落下した!

 それと同時に全ての柱が地面に落下し、魔竜王を縛っていた鎖が消滅した。


「これでよしと……魔竜王ー! この私が来てやったわよー!」

「………」


 魔海王が大声で魔竜王を呼ぶが、返事は無い。


「魔竜王ー?」

「………ぐぅ~~……」


 魔竜王は大きな寝息を立てて、ぐっすりと眠っていた。


「……はぁっ~……やっぱり寝てたのね……大方寝ている所をそのまま鎖で縛られたんでしょうね……ん?」


 魔海王が呆れていると、魔竜王の額上空に亀裂が現れた!


「あれは転移魔法? ……なんでこんな所に?」


 亀裂から小さな青い蜘蛛が現れ、魔竜王の額に張り付き噛み付いた。

 そして、青い蜘蛛から紫色の電気が発生した!


「……!? グオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!?」


 先程まで寝ていた魔竜王が目を開き、苦しみだした!


「魔竜王!? 急にどうしたのよ!?」

「グゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……グオオオオオオオオオオ!!!」

「ちょっ!?」


 魔竜王は正気を失った瞳で魔海王を視認すると、魔海王目掛けて火炎を吐いた!












 ――そして時は戻り現在、ヤタイズナは火口から突如出現した魔竜王を見て驚いていた。



「あれが、魔竜王……でも何で突然現れたんだ?」


 ……もしや上の方で何かがあったのか!?


「こうしてはいられない! 急いでミミズさん達と合流しないと!」


 私はシルバードラゴンフライを担いで空を飛び、ミミズさん達の元に向かった。













「第69回次回予告の道ー!」

「と言うわけで今回も始まったこのコーナー!」

「今回は私の出番めっちゃ少なかったね……」

「まぁ、お主がシルバードラゴンフライと戦っている間の話だったのじゃから仕方あるまい」

「……そうだね、それじゃあ早速次回予告を始めるよ、突如現れ暴走し始めた魔竜王! 私達は魔竜王を止めるために火口に向かうが……それでは次回『暴竜警報』!」

「「それでは、次回をお楽しみに!!」」


 ・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。

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