第119話 カブトvsトンボⅡ

「オラァッ!」

(遅いっす!)


シルバードラゴンフライは炎の角をたやすく回避し、私の背後を取った。


(《大鎌鼬》!)


シルバードラゴンフライの周囲に風の刃が発生し、そのまま私目掛けて撃ち放たれた!


「ちぃっ! 《炎の角》、《斬撃》、 《操炎》!」


私は振り返り、前と同じように分裂させた炎の斬撃で大鎌鼬を相殺していく!


(ふんっ、それで自分の大鎌鼬を全部防ぎきれるもんっすか!)


シルバードラゴンフライの周囲に先程の倍以上の風の刃が発生する!


不味い、流石にあの数は相殺しきれないぞ!


(喰らえっす!!)


無数の大鎌鼬が私目掛けて撃ち出される!


「くぅっ!」


私は翅を広げ空を飛び、大鎌鼬を回避していく。


(自分相手に空中戦っすか? 自殺行為っすね!)


シルバードラゴンフライは猛スピードで私目掛けて移動しながら、大鎌鼬を撃ち放ち続ける!


……確かにシルバードラゴンフライの言う通り、トンボに対して空中戦は自殺行為に等しい。


逃げ続けてもすぐに追いつかれてしまうし、かと言って近づいて攻撃したくても相手が速すぎて攻撃が当たらない。


どうするか……


私が考えていると背後からミミズさんの声が聞こえてきた。


「ヤタイズナ! お主らの戦闘を聞きつけて大量の魔人共がこっちに向かって来ておるぞ! どうする!?」


くそっ、更に面倒になって来たな……


「ミミズさん、私はこいつの相手に専念するから、ミミズさん達は山頂に向かってくれ!」

(よそ見とは随分余裕っすね!)

「ちぃっ! ミミズさん早く!」

「分かったのじゃ! 行くぞお主ら!」

(わかったー! ごしゅじんがんばってねー!)

(私達も頑張りますから!)

(あいつ等皆私の鎌の餌食にしてやりますわ)

(僕もやってやりますよ)

(ちょっと調子が悪りぃが、あいつ等を倒すのに問題は無いでさぁ!)

(全員、攻撃開始であります!)

『『ギチチチチチィィィィィィィ!!』』

「魔海王、お主も儂らに力を貸して……って居ない!? あ奴何処に行ったのじゃ!?」


とりあえずミミズさん達は魔竜王の元まで向かってくれた。


後はどうやってこいつを倒すかだな……


(いつまで逃げ続けるつもりっすか! いい加減自分に殺されろっす!)


私は大鎌鼬をギリギリで回避し続けているが、このままではじり貧だ。


……よし、こうなったら、前から考えていた新技を試す!


私は地面に着地して、シルバードラゴンフライの正面に立った。


(どうやら観念した様っすね、死ねっす! 《大鎌鼬》!)


無数の大鎌鼬が私目掛けて撃ち放たれる!


今だ!


「《炎の角》、《操炎》!」


私は炎の角を操炎で操り、炎を全身に纏った。


大鎌鼬は私の身体に当たる直前で纏っている炎によって消滅した。


(なっ!?)


この光景を見てシルバードラゴンフライ驚きの声を上げた。


これこそが私が考えていた新しい技だ。


炎の角を操炎によって体全身に纏う、名付けて炎の角・鎧だ。


高温の炎によって相手からの攻撃を防ぎ、更に攻撃手段にも使える。


オ・ケラのように近距離攻撃を得意とする相手には近づくだけでダメージを与え、シルバードラゴンフライの様に遠距離攻撃をする相手からの攻撃を遮断する、攻防一体の技だ。


……難点は全身に炎を纏うので腹部の気門まで包んでしまい呼吸がほとんど出来ないと言う事だ。


もう少し訓練して腹部の気門部分だけ炎を無くすように努力しなければ。


しかし今はそんな時間は無い、とりあえず今はあいつを倒す事に専念しよう!


私はシルバードラゴンフライ目掛けて一気に飛び立った!


(っ……! 《大鎌鼬》!)


シルバードラゴンフライは大鎌鼬で私を攻撃するが、炎の角・鎧を纏った私にはもはや通じない。


「《斬撃》、《操炎》!」


私は炎の斬撃を撃ちだし、分裂させてシルバードラゴンフライを攻撃する!


(何度やってもこんなモノ自分には当たんないっす!)

「どうかな? 《操炎》!」


私は分裂させた炎の斬撃を更に分裂させ、大量の小型の炎の斬撃を生み出し、シルバードラゴンフライを包囲した。


(なっ!? くそっ……!)


いくら素早くて小回りが利いても、全方位からの攻撃は避けきれまい!


(くぅぅっ!)


シルバードラゴンフライは小型炎の斬撃を回避していくが避けきれず、右翅二つに小型炎の斬撃が直撃した!


(しまった、バランスが……!?)


右翅に穴が開きバランスを崩した。


「よし! 喰らえぇぇぇぇぇ!」


私はシルバードラゴンフライ目掛けて一気に接近し、炎の角で攻撃した!


シルバードラゴンフライは身体を動かし、胴体への直撃は避けたが、炎の角によって右翅両断した!


(くそォォォォォォォォォォ!)


シルバードラゴンフライは飛ぶ事が出来なくなり、地面へと落下した。


私は炎の角・鎧を解除し、シルバードラゴンフライの元に着地した。


「勝負ありだな、翅を失ったお前にもう勝ち目はない」


(くそ、くそぉぉ……! 殺すならさっさと殺せっす……!)


地面に倒れているシルバードラゴンフライが私を睨んだ。


「その前に聞きたい事がある」

(……何っすか?)

「お前は私に捨てられた、そう言ったな?」

(……ああ、そうっすよ)

「捨てられたのは薄暗い場所と言ったな? そこは洞窟か何かか?」

(そうっす、卵から出られたと思ったら誰も居らず、辺り一面薄暗かったっす……そして自分の頭の中で捨てられし者の称号を手に入れたと聞いた時、自分は捨てられたんだと確信したっす……! それから自分は必死の思いで洞窟を出て、森の中に入ったっす……)


洞窟に森……と言う事はこいつが生まれた場所は間違いなくランド大樹海の地底洞窟!


「そうか……シルバードラゴンフライ、お前はあの時、クルーザーから逃げる時に使った……」


私は回収していなかった昆虫の卵が一つだけあった事を思い出した。


地底洞窟でクルーザーと初めて遭遇し、逃げるために囮に使った昆虫の卵。


あの時は逃げるのに必死だった上に直ぐに地上に出てしまったから回収に行くことも出来ず、時が経つにつれていつの間にか忘れてしまっていた。


あの昆虫の卵が孵化して、ずっと生き続けていたのか……


(そして自分は進化して、空を飛べるようになった自分は強くなるために森を出て旅に出たっす、いつの日か自分を捨てたお前をぶっ殺せるようになるために!)

「……」

(だが自分は負けてしまったっす……敗者の命は勝者の物、それが自然の掟っす! さぁ一思いに殺せっす!)

「……そうか、それじゃあ」


私は角でシルバードラゴンフライを持ちあげ、移動し始めた。


(な、何のつもりっすか!?)

「ベルの元に連れて行ってお前を治療する」

(はぁっ!? 殺そうと襲ってきた奴を治療ってお前馬鹿っすか!?)

「これから新しいしもべになるんだ、治療してやらないと駄目だろ?」

(し、しもべ!?)

「敗者の命は勝者の物なんだろ? だったらお前をどうしようが私の自由だ、だからお前は今日から私のしもべだ」

(……自分を盾か何かとして利用して使い潰すって事っすか?)

「そんな事はしないよ、ただ……あの時お前を囮に使ってそのまま忘れてしまっていた事に対しての私なりの罪滅ぼしとでも思ってくれたらいいかな」

(……)


その時、私の頭に声が響いた。


《シルバードラゴンフライとの戦いに勝った。 ヤタイズナはレベルが35になった。 条件を達成しました、エクストラスキル:炎の角・鎧を獲得しました。》


どうやら先程使った炎の角・鎧が正式なスキルになったようだ。


さて、それじゃあシルバードラゴンフライを連れてミミズさんと合流しよう……


私がそう考えた時だった。


ドラン火山の頂上から巨大な炎が噴き上がった!


「な、何だ!?」


まさか火山が噴火したのか!? 


そう思っていると、突如頂上に巨大な生物が現れた。


「あれは……竜!?」


そう、現れたのは全身が黄金色に輝く巨大な竜だった。


「まさか……あれが魔竜王!?」


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」


私の言葉に応えるように、黄金色の竜が雄叫びを上げた。

















「第68回次回予告の道ー!」

「と言うわけで始まったこのコーナー!」

「シルバードラゴンフライとの戦いに決着がついたと思ったら、今度は巨大ドラゴンの登場! 怒涛の展開が続くね!」

「うむ、居なくなった魔海王の事も魔人軍の奴らも気になるが、一体どうなってしまうのじゃ!?」

「それでは次回『魔竜王』!」

「「それでは、次回をお楽しみに!!」」


・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。

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