第103話 アルトランド王国防衛戦Ⅳ

「…ここか」


私達はガーベラ王妃が捕らえられていると言う玉座の間の扉の前に着いた。


「どうするのじゃヤタイズナ、あのブロストと言う奴、絶対何か仕掛けているはずじゃ」

「ああ、分かってる…まずは私とスティンガー、パピリオ、カトレアが中の様子を見てくるから、ミミズさん達は私が合図したら玉座の間に突入してくれ」

「分かった、気よ付けるのじゃぞ」

「よし、それじゃあスティンガー、パピリオ、カトレア、行くぞ!」

(わかったー!)

(分かりましたー!)

(分かりましたわ)


私達は玉座の間に突入した!


玉座の間に入ると、目の前の玉座に座っている男とその隣にいる青いプレートアーマーの男の姿があった。


玉座に座っている男がリンドか。


「な、何だ⁉ …ん? こ、こいつら救国の従魔使いの従魔達じゃないか⁉ 何故ここに⁉」

「来ましたか…ふふふふ…」


私は私達を見て驚いているリンドの横で愉快そうにしている青いプレートアーマーの男を見る。


その男が纏っているプレートアーマーは前に大雪原で戦ったザハクのプレートアーマーととても似ている。


しかし兜にある角の装飾はザハクの物と違い一本角であった。


「お前がブロストだな!」

「じ、従魔が喋った⁉」

「はい、その通りです、お久しぶり…いや、実際に会うのはこれが 初めてでしたねぇ? では改めて自己紹介を…私は魔人軍『六色魔将』が一色、青のブロストです、どうぞよろしくお願いしますね?」

「ブロスト、王妃は何処だ!」

「そう慌てないで下さいよぉ、王妃様ならあそこで大人しくしておられますよぉ」


ブロストが指差した方を見ると、そこには鎖で全身を縛られているガーベラ王妃の姿があった。


「お、お前ら、私のガーベラを奪いに来たのか⁉ 駄目だ! ガーベラは絶対に渡さんぞぉっ!」


リンドが玉座から立ち上がり騒ぎ始めた。


「ブロスト様! 王妃を攫いに来た悪党どもを始末してください!」

「…と言うわけですので、貴方達にはここで消えてもらいますよ」


ブロストはこちらに右手を向けた。


よく見ると、右手の手甲には赤く光る石がはめ込まれていた。


「《開きなさい》」


ブロストの言葉と同時に何も無い空間に亀裂が入った!


「こ、これは⁉」


これがミミズさんの言っていた空間移動のスキルか⁉


私が驚いていると、亀裂の中からゴブリン、ゴブリンメイジ、オーガ達が現れた。


「行きなさい」

「グギャギャー」

「ギャギャギャー!」

「グオオオー!」


魔物達が私達に襲い掛かって来た!


「《炎の角》!」


私は炎の角で襲いかかって来たオーガを焼き斬った!


「ミミズさん!」

「分かった! お主ら、行くのじゃあ!」

(了解であります! 総員、攻撃であります!)

『ギチチチチィィィィィィ!!』

(分かりました!)

(合点承知でさぁ!)



私の合図でミミズさん達が玉座の間に突入し、魔物達と戦い始めた!


(くらえー!)

「グギャー⁉」

「ギャギャ―⁉」


スティンガーがゴブリン達を毒針で毒殺していく。


(行きますよー! 《風の翅》!)

(さぁ、こっちに来なさい…《花の鎌》!)


パピリオは風の翅でゴブリン達を吹き飛ばし、カトレアは花の鎌で魔物達を引き寄せて、そのまま首を刈っていった。


(ガーディアント部隊! 突進であります!)

『ギチチチチィィィィィィ!』


レギオンの指示でガーディアント達がゴブリンメイジ達目掛けて突進する!


「ギャギャギャ!」

「ギャグギャ!」

「ギャギャグギャギャ!」


ゴブリンメイジ達が火球でガーディアント達を攻撃する!


火球がガーディアント達の盾頭に直撃するが、ガーディアント達はびくともせず、そのまま突進し続ける!


『ギチチチチィィィィィィ!』

「ギャギャー⁉」

「グギャギャー⁉」


ガーディアント達の突進が直撃し、ゴブリンメイジ達は吹き飛ばされ、壁にめり込んだ。


(ソーアント部隊、攻撃であります!)

『ギチチチチィィィィィィ!』


ソーアント達が鋸状の顎でゴブリン達を切り殺していく!


(《混乱の音色》!)


リーン♪ リリーン♪ リーンリリーン♪ リンリリーン…


「グゲ…グギャギャー!」

「グオオオー!」

「ギャギャー!」


混乱の音色を聞いた魔物達は混乱し、仲間同士で戦い始めた。


(喰らいやがれ! 《水の鎌》!)


カヴキが水の鎌でオーガを挟み殺した!


私達は次々と魔物達を倒していく。


数分後、ブロストが呼びだした魔物達は全滅した。


「そ、そんな馬鹿な…ブロスト様の魔物が…」

「ま、こうなりますよねぇ…」


リンドが慌てているが、ブロストは今だに余裕だ。


恐らくまだ何か切り札を持っているのだろう。


注意しないとな…


「ど、どうするのですかブロスト様⁉ このままでは…」

「ブロスト! ガーベラ王妃を返してもらうぞ!」

「ええ、返しますよ?」


『……は?』


ブロストの言葉にこの場にいた全員が同じリアクションをした。


「王妃から聞きたい事はもう聞きましたので、もう王妃は必要ありません、どうぞご自由にしてください」


…どういうつもりだ?


こんなにあっさりと王妃を返すと言うなんて…私達を油断させる作戦か?


そう思っていると、リンドがブロストに詰め寄った。


「ど、どういう事ですかブロスト様⁉ ガーベラを返すって…約束はどうなるんですか⁉」

「約束? …ああ、この国を手に入れたら暁にはこの国を貴方にあげると言うあれですか」

「そ、そうです!」

「あれ嘘ですから」

「…え?」


その言葉と同時にブロストがナイフをリンドの身体に突き刺した。


「か…は…」

「私は元々この国を手に入れようなんて微塵も思っていませんでしたから、王妃から情報を手に入れたかっただけですので」

「そ、そん…な…」

「いやぁ…この国の新たな王だとかほざいていた貴方は最高に滑稽でしたよぉ…そんな馬鹿な貴方に最後のお願いをしますね」

「お、お願い…?」

「ええ…私の最新魔道具の実験体になってください」


そう言うとブロストはリンドに刺したナイフを抜き、懐から無色透明の珠を取り出し、その球をナイフで出来た傷口に埋め込んだ。


「…が⁉ あああああああああああああああっ!?」


珠を埋め込まれたリンドが叫びだし、体がボコボコと膨れ上がり始めた!


「こ、これは…⁉」

「な、何じゃこれは…⁉」


間違いない、レイド大雪原でザハクが黄色の珠を身体に埋め込んだ時と同じだ…


「ふふふふふ…」

「アアアア…ガ…ガーベラ…ガーベラァァァァァァァァァァァァァァァァ………」


リンドの身体はどんどん膨らみ、巨大な肉の塊となった。


そしてしばらくすると、肉の塊から鼓動が聞こえ始めた。


ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…


「ここまでは順調…さて、どうなりますかねぇ…ふふふふふ…」


ブロストは肉の塊をとても愉快そうに見ていた。


ドクンドクンドクンドクンドクン…


肉の塊から聞こえる鼓動はどんどん早くなっていく。


もしザハクの時と同じなら不味い…今ここで破壊しなければ!


「《炎の角・槍》!」


私は肉の塊に突進し、炎の角・槍で肉の塊を攻撃した!


しかしザハクの時と同じで肉の塊の表面は硬質化されていて、傷一つ付かない。


「くっ…」


ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン…ピキ


肉の塊の鼓動は更に早くなって行き、遂に肉の塊に亀裂が入り、中から赤い液体が漏れ始めた。


ピキピキピキ…


肉の塊は完全に割れ、中から体長二メートル半はある巨大昆虫が現れた。


「あの細長い身体に鋭い口吻…サシガメか!」


サシガメはカメムシ目カメムシ亜目のサシガメ科の昆虫の総称だ。


身体は一般のカメムシ類に比べ、やや細長い体型のものが多く、頭部は普通のカメムシ類が三角形であるのに対して、サシガメは細長く、複眼は前胸から前方に離れており、左右に突き出していることが多い。

また、普通は両複眼の間かその直後にある横溝で前頭部と後頭部とに分けられる。


口器は3節からなる下唇が外を覆い内部に細い口針を格納した口吻で、普通のカメムシ類の口吻が針状で胸部の下に折り畳まれているのに比べ、はるかに太くて短く、頭部の前端から前方に突き出して下方に弓なりに湾曲し、鉤状になって頭部の下面に収まる。


胸部は幅広くはならず、前胸腹板にはヤスリ状の発音器を持っている、中胸腹板と後胸腹板は癒合し、比較的滑らかに腹部に続いている。


一部には翅を退化させた種類もいるのだ。


サシガメは一般のカメムシ類とは異なり捕食性で、多くの種は主として昆虫などを捕食するが、ヒトを含む脊椎動物に対する吸血性を発達させたものがあり、昆虫食の種でも捕らえたり触れたりしたときなどに偶発的に人を刺すこともある。人などから吸血する種の一部は感染症の媒介者になり、シャーガス病とよばれる病の原因となるのだ。


私はサシガメに鑑定を使い、ステータスを見た。










ステータス

 名前:リンド

 種族:不明

 レベル:不明

 ランク:不明

 称号:不明

 属性:不明

 スキル:不明

 エクストラスキル:不明











やはり、ザハクの時と同じでステータスは名前以外全て不明のようだな…


私がそう思っていると、ブロストがとても愉快そうに笑っていた。


「はははははは! 素晴らしい! 実験は大成功ですよ! …しかし、やはりオリジナルと比べると性能が劣化してしているみたいですねぇ…せいぜいB+と言ったところですかねぇ…改良の余地がありますか…」

「おい貴様! オリジナルとは何じゃ! こ奴からはあのザハクとか言う奴から感じた儂と同じ気配がしないのと関係があるのか!」


ブロストの言葉にミミズさんが反応し、ブロストに問いただしていた。


「ふふふ…残念ですが教えられませんねぇ…さて、実験も終えましたし、私は次の仕事に取り掛かりますかねぇ…《開きなさい》」


ブロストが右手をかざし、空間に亀裂が入った。


「それでは私はこれで…リンド、後は任せましたよ」

「おい待たんかっ! 話はまだ終わって…」

「ギシャアアアアアアアアア!!」


リンドがミミズさん目掛けて突進し、口吻でミミズさんを攻撃してきた!


「ぬおおおおおおお⁉」

「ミミズさん危ない! 《炎の角》!」


私は炎の角で口吻をはじき返した!


「ギシャアアアアアアア…」

「ミミズさん、私達がこいつを抑えるから、ミミズさんはバノンと一緒にガーベラ王妃を助けてくれ」

「分かったのじゃ」

「ギシャアアアアアアアアア!!」


リンドが私達を威嚇してくる。


「行くぞ、《炎の角》!」

「ギシャアアアアアアアアア!」


私とリンドは同時に動き出した! …その瞬間。


ボカァァァァァァァァァァン!!


突然私とリンドの間の床が爆発したのだ!


「ギシャア⁉」

「な、何だ⁉」


突然の事に驚いていると、爆発した場所から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「…ジィィィィィィィィィ…」

「こ、この声は…⁉」

「か、身体が震える…まさか⁉」


爆発した場所から何かが飛びだし、私の前に着地した。


「ジィィィィィィィィィィ!!!」

「オ・ケラ⁉」

「イヤァァァァァァァァ!? 何でここに居るのじゃあああああああああああ!?」


突然のオ・ケラの登場に、ミミズさんは悲鳴を上げた。

















「第57回次回予告の道ー!」

「と言うわけで久しぶりに始まったこのコーナー!」

「ブロストが持っていたあの珠…一体何なんだろうね…」

「そうじゃのう…しかし今回はそれよりもオ・ケラの事じゃ!」

「ああ…まさかの登場だったね」

「あ奴いい加減しつこすぎるわ…ヤタイズナよ、今回で奴との決着をつけるのじゃぞ! いいな!?」

「わ、分かったから落ち着いて…それでは次回『再戦、カブトvsオケラ』!」

「「それでは、次回をお楽しみに!!」」


・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので、次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。

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