第101話 アルトランド王国防衛戦Ⅱ

―西側の街。


「《九重雷球》!」


橘綾香の周りに九つの雷球が現れ、ウォーターホース達目掛けて放たれた!


雷球を喰らったウォーターホース達は黒焦げになり、バタバタと倒れていく。


「おお、何という魔法だ!」

「見事だ!」

「皆、勇者様に続くぞ!」


橘綾香と騎士達がウォーターホース達を倒していくと、運河からブルークラブが現れた!


ブルークラブは口先に巨大な水の玉を作り出し、橘綾香目掛けて放った!


「《身体強化》!」


橘綾香は魔法で自らの身体能力を強化し、水玉を回避する!


「《落雷》!」


ブルークラブの上空に巨大な魔法陣が現れ、その魔法陣から雷が発生し、雷がブルークラブに落ちた!


落雷を喰らったブルークラブは黒焦げになり、地面に倒れた。


「やったぞ!」

「流石勇者様だ!」


騎士達が歓声を上げていると、運河から更にブルークラブとウォーターホース達が現れた。


「次から次へと…一体どこから湧いてくるの⁉」


ウォーターホース達が水玉を作り出し、橘綾香目掛けて撃ち放った!


「《九重雷球》!」


橘綾香は水玉を回避し、雷球でウォーターホース達を倒していった。















―南側の街では、渡辺瑞樹と騎士達がブルークラブと対峙していた。


「こ、怖い…でも、やらなくちゃ…出て来て! 《シロちゃん》、《クロちゃん》!」


渡辺瑞樹の言葉に応えるように地面に魔法陣が出現し、体長3メートルはある岩の巨人、ゴーレムが二体魔法陣から現れた!


ゴーレムは片方が全身白色、もう片方が全身黒色だった。


「シロちゃん、クロちゃん! あの魔物をやっつけて!」


渡辺瑞樹の命令を聞き、白のゴーレムはブルークラブ目掛けて突進する!


突進を喰らったブルークラブは吹き飛び、仰向けの状態で地面に倒れ、そこに黒のゴーレムがブルークラブの腹部目掛けて拳を振り下ろした!


黒のゴーレムの拳を喰らったブルークラブの腹部はメキメキと音を立てて砕け、ブルークラブは口から泡を吹きだし、身体を痙攣させた後、動かなくなった。


「やったぞ!」

「あれが勇者様の力…」

「お、おい! 運河から更に魔物が!」


運河から無数のブルークラブが現れ、渡辺瑞樹達に迫って来る。


「シロちゃん、クロちゃん! あの魔物達もお願い!」


渡辺瑞樹の命令でゴーレム達がブルークラブ達と戦い始めた!














「―流石は勇者達、あの程度の魔物ではほとんど相手になっていませんねぇ」


ブロストは水晶で勇者達の戦いを見ていた。


「東と北の魔物達を西と南に集結させますか、足止め程度にはなるでしょうしね…」


「…う、うぅ…」

「おや、やっとお目覚めですか」

「ここは…玉座の間…ぐぅっ!」


ガーベラは身体を動かそうとするが、全身には鎖が巻かれていて身動きが取れなくなっていた。


「王妃様とお話するならやはりここが一番相応しいと思いましてねぇ…王妃様が気絶している間に占拠させてもらいました」

「城の者達は、どうした…」

「安心くださいガーベラ、城の者達は我々が保護していますよ」


玉座に座っていたリンドがガーベラの質問に答えた。


リンドは頭に王冠を被り、豪華そうな服を着ており、その姿はまるで王の様である。


「リンド…貴様…!」

「どうですかこの姿は? この国の新たな王に相応しい姿でしょう?」

「何が新しい王だ! アルトランド王国騎士団の副団長である貴様が、悪党と手を組みこの国を滅ぼそうとするとは! 騎士としての誇りを忘れたか!」

「滅ぼすなんてとんでもない、私はこの国を作り直すだけですよ」

「何…?」

「そう、この国を私とガーベラが統治する新たな王国に作り直すのです! 私が王になれば、この国はより豊かに、より素晴らしい国になるはずです! 想像してください…私とガーベラの子供達に囲まれている幸せな未来、そして国民全員が笑って暮らしている素晴らしい未来を…ああ、想像しただけで笑いが止まりませんよ! あははははははははははははははははははははは!!」


リンドは大声でとても幸せそうに笑っていた。


そんなリンドに対して、ガーベラは怒りを抑えられなかった。


「ふざけるなっ!! そんなくだらない妄想のために国を魔物に襲わせたのかっ!!」

「妄想などではありません、もうじき現実になるのですから」

「貴様ぁっ!」

「リンド、少し静かにして下さい、王妃様とお話できないではありませんか…貴方は少し下がってなさい」

「も、申し訳ありませんブロスト様」


ブロストの言葉を聞き、リンドはブロストの後ろに下がった。


「さてと、それでは王妃様、貴女様に聞きたいことがあるのです」

「言ったはずだ、悪党と話すことなど無いと!」

「そう言わずに聞いて下さいよぉ…私はある場所を探しているのです、この王国の王家が封印し、代々守り継いでいる物が保管されている場所を…」


ブロストの言葉を聞き、ガーベラは驚き、目を見開いた。


「何故それを知っている⁉ その事は王族と限られた人間しか知らないはずだぞ⁉」

「ふふふふ…その場所への入り口を教えて欲しいのですよぉ…教えてくれますか?」

「断る! あの場所は貴様のような者が入っていい場所ではない!」

「そうですか…」


ブロストが指を鳴らした。


「ぐああああああああああああああああ⁉」


その瞬間、ガーベラの全身に電流が走った!


「その鎖は私が作った特別性でしてねぇ…電流が流れるようになっているんですよぉ」

「ぐ、ぐぅぅぅ…」

「それでは改めて聞きますが、例の場所の入り口はどこですか?」

「貴様には…絶対に教えん…」

「はぁ…まったく物分かりが悪いですねぇ…」


ブロストが再び指を鳴らし、ガーベラの全身に電流が走る!


「ああああああああああああああ⁉」

「…さて、また改めて聞きますよ? 例の場所の入り口は?」

「…し、死んでも…教えん…」

「…まったく」


ブロストが指を再び鳴らそうとすると、リンドがブロストを止めた。


「ブロスト様! このままではガーベラが死んでしまいます! ガーベラが死んでしまっては意味が…」

「…そうですね、では方法を変えてみましょうか…ガーベラ王妃、こちらをご覧ください」

「う、うぅ…?」


ブロストが水晶をガーベラに見せる。


「…っ⁉」


水晶には手足を縛られた城の侍女や兵士達が魔物達に包囲されている光景が映し出された。


その中には国王リオンの姿もあった。


「城の者達、そして貴女の夫はこの通り無事ですよ…今の所はね」

「貴様…まさか」

「ご想像の通りです、貴女が例の場所を教えてくれない場合、残念ながら彼等には死んでもらう事になりますねぇ…」

「外道が…!」

「それじゃあ王妃様、今から30分だけあげましょう、その間にお考えください、例の場所を教えるか、愛する夫と民達を見殺しにするかをねぇ…ふふふふふ…」


ブロストは愉快そうに笑った。

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