第100話 アルトランド王国防衛戦Ⅰ

「オラァ!」


私は炎の角でウォーターホースを焼き切る!


(えーい!)


スティンガーが尻尾を振りウォーターホース達を薙ぎ払う!


(《岩の鋏》! 死ねぇっ!)


テザーは岩の鋏でウォーターホースを挟み殺した!


(《風の翅》! えーいっ!)

(食後のデザートにしてやりますわ、《花の鎌》!)


パピリオは風の翅でウォーターホースを吹き飛ばし、カトレアは花の鎌でウォーターホースを集めて鎌で斬り殺していった。


(喰らってください! 新しく手に入れたスキル…《混乱の鈴音》!)


リーンリーン♪ リリーンリーン♪ リーンリーン…


ベルの鳴き声を聴いたウォーターホース達はその場でくるくると回ったり、ぴょんぴょんとジャンプしたり、仲間に攻撃したりしていた。


私達がウォーターホースと戦っている間に、この付近にいた人間達はあらかた非難出来たようだ。


「よし、このままウォーターホース達を倒すぞ!」

(わかったー!)

(俺、皆殺し、言う)

(やってやります!)

(こいつら匂いは良かったのに、味はいまいちですわね…)

(僕の鳴き声で皆混乱させてやります!)


私達は陸にいるウォーターホース達を倒していく。


その時、運河から巨大な生物が陸に上がって来た。


あれは…蟹か。


そう、上がって来たのは体長2メートルはある巨大蟹だ。


私は蟹に鑑定を使い、ステータスを確認した。








ステータス

 名前:無し

 種族:ブルークラブ

 レベル:15/50

 ランク:B

 称号:無し

 スキル:水玉

 エクストラスキル:剛力鋏、蟹の重鎧










Bランクか。


ランクは私より低いが、あの巨大な鋏に挟まれたら私の身体は真っ二つになってしまうかもしれない。


気よ付けて戦わないとな…


私がそう考えていると、ブルークラブは鋏をガチガチと鳴らし私を威嚇してきた。


更に運河にいたウォーターホース達が私達の方を向き、口吻の先に小さな水の玉を作り出していた。


おそらくあれが水玉と言うスキルなのだろう。


ウォーターホース達は私達目掛けて水玉を一斉に放ってきた!


「ちぃっ! 《炎の角》、《斬撃》!」


私は水玉を避け、炎の斬撃を放った!


「《操炎》!」


そして操炎で炎の斬撃を複数に分裂させ、ブルークラブとウォーターホース達を攻撃した!


炎の斬撃を喰らったウォーターホース達は次々と死んでいき、運河に沈んで行った。


しかし、ブルークラブは甲殻に焦げ目が少しついただけでダメージは無いようだ。


斬撃は効果が無いか…なら今度は直接炎の角・槍で!


私はブルーギザミに突進する!


ブルーギザミは口先に大きな水の玉を作り出し、私に向けて放った!


私は空を飛び大水玉を避け、ブルークラブの真上に行った。


「《炎の角・槍》!」


私は炎の角・槍を使いブルークラブの背中の甲殻目掛けて落下する!


「くらえぇぇぇぇっ!!」


炎の角・槍がブルークラブの甲殻に突き刺さる!


「《炎の角》!」


私は炎の角・槍から炎の角に戻し、突き刺した部分からブルークラブを焼いて行く!


ブルークラブは私を引き剥がそうと暴れ出した。


鋏で私を掴もうとするが、背中に鋏が届かず、そのまま焼かれていく。


そのまま暴れ続けていたが、しばらくするとブルークラブの甲殻が真っ赤になり、美味しそうな匂いを出しながら地面に倒れた。


それと同時に頭に声が響いた。


《ブルークラブとウォーターホースの群れを倒した。 ヤタイズナはレベル17になった。》


これでこの辺の魔物はあらかた片付いたようだな。


しかし王国を襲っている魔物はこれだけではないはずだ。


ミミズさん達は無事に城まで行けただろうか…


「よし皆、城に行くぞ!」

(わかったー! …ごしゅじん、これたべてもいい?)

(美味しそうですー…)

(俺、美味そう、言う)

(お腹が凄く減ってきましたわ)

(確かにそうですね)

スティンガー達が真っ赤に焼けたブルークラブを見ていた。


「全部終わったら食べていいから、今は城にむかうぞ!」


私達は城に向けて出発した。
















―一方その頃、ミミズさん達は城に向かう途中、ウォーターホースの群れと遭遇し戦っていた。


(喰らいやがれ! 《水の鎌》!)


カヴキが水の鎌でウォーターホースを挟み殺した!


(全員、攻撃であります!)

『ギチチチチィィィィィィ!』


レギオンの指示でアント達がウォーターホースたちに攻撃する!


ソーアント達が鋸状の顎でウォーターホースを切り殺し、ガーディアント達は二組に分かれてウォーターホース達をはさみうちにし、盾状の頭で押し潰していた。


「えーいっ!」


ウィズが大剣を振りウォーターホース達を両断していく!


「皆! 今の内だよー!」

「全く次から次へと…どんだけいるんじゃこ奴ら!」

「とにかく今は城に向かおうぜ」

「おりーぶおばちゃん…」

「大丈夫よミモザちゃん、もうすぐ城に着くからね」


ウォーターホースの群れを倒したミミズさん達は城門近くに到着した。


城門から二人の勇者、橘綾香と渡辺瑞樹、そして白銀の鎧を着たガーベラ、リオンとアルトランド王国騎士団が出てきた。


「「ミモザ!」」


「おかーさま! おとーさま!」


ミモザ姫がガーベラとリオンの元に駆け寄る。


「無事だったのだな…良かった」

「ミモザの身に何かあったのではないかと、心配したよ…」

「姉様、一体何が起きているのですか?」

「詳しくは分からないが、衛兵の話ではこの国のいたるところから突如魔物が出現したそうだ」

「それで私達勇者と王妃様が別々に騎士団を率いて魔物達を討伐する事になったの」

「そういう事だ、バノン殿、すまないが貴方の力をお借りしたい」

「…分かりました、協力させていただきます」

「ありがとう…各自、準備は良いな! これより我が国を襲った魔物達の討伐に向かう!」


『『『『おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』』』』


王妃の言葉に応えるように騎士達が大声を上げた。


「綾香殿、貴女は西の方を頼む」

「分かりました!」

「瑞樹殿は南を」

「は、はい!」

「バノン殿は北を頼む」

「分かりました」

「私は東の方を何とかする、オリーブ、ウィズ、お前達はミモザとリオンと共に城に隠れていてくれ」

「分かりました」

「分かったー!」

「…リオン、行って来る」

「ああ、気よ付けてね、ガーベラ」


ガーベラは馬に跨り、剣を引き抜いて頭上に掲げた。


「アルトランド王国騎士団よ! 我らが国を救うため、全力を尽くすぞ!!」


『『『『おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』』』』


「皆の者! 私に続けぇぇっ!!」

「王妃様に続けぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」


ガーベラを筆頭に騎士団が東に向かっていく!


「私達も行きましょう! 瑞樹!」

「う、うん!」


橘綾香と渡辺瑞樹もそれぞれ騎士団を率いて魔物討伐に向かった。


「俺達はどうする?」

「とりあえずヤタイズナを待つのじゃ、北に行くのはそれからじゃ」










「ミミズさん、バノン!」

「ヤタイズナ! やっと来たか!」


私達は城に到着し、ミミズさん達と合流した。


「あれ、オリーブとウィズは?」

「あ奴らは城の中じゃ、それよりもヤタイズナ、儂らはあの王妃に頼まれてな、北の魔物討伐に向かわねばならぬぞ」

「そうなの?」

「ああ、すまないヤタイズナ、勝手に決めちまって…」

「良いよ、今の私達はバノンの従魔って事なんだし、とりあえず私達は北に行けばいいんだね?」

「ああそうじゃ」

「それじゃあ皆、北の魔物達を倒しに向かうぞ!」

(わかったー!)

(分かりました!)

(俺、分かった、言う)

(分かりましたわ)

(了解です)

(分かりやした)

(了解であります!)

『『ギチチチチィィィィィィ!!』』


私達は街の北側に向けて出発した。


















―アルトランド王国、東の街。


「せやぁっ!」


ガーベラがウォーターホースを両断する!


「はぁっ!」


ガーベラは次々とウォーターホースたちを倒していく。


ガーベラ達の周囲にウォーターホース達が続々と集まってくる。


「くそっ、こいつら一体どこから湧いてくるんだ⁉」

「これじゃあいくら倒しても…」

「狼狽えるな! どんな危機的状況だろうと、お前達は私と共に乗り越えてきたではないか!」

「そうだ! 私達は王妃様と共に国を脅かした魔物を倒してきた」

「俺達ならやれる、王妃様と一緒ならどんな戦いにも勝てる!」

「そうだ! 王妃様と共に行くぞぉっ!」


『『『おおおおおおおおおおお!!!』』』


騎士団の士気は上がり、次々と魔物達を倒していった。


するとその時。


《いやはや、ただの人間のわりにはよく頑張りますねぇ》


何処からか声が聞こえてきた。


ガーベラ達は周囲を見渡した。


「何者だ! 姿を現せ!」


ガーベラの言葉に応えるように、何も無い空間に亀裂が入った。


「な、何だ⁉」


亀裂はどんどん大きくなり、亀裂の中から青色のプレートアーマーの男が出てきた。


「どうも初めまして、アルトランド王国王妃、ガーベラ・アルトランド様」

「貴様…何者だ? その邪悪な気配…人ではないな⁉」

「おや、そんなことまで分かるんですか、ただの人間であるのが惜しい力ですねぇ…私はブロスト、この国を魔物に襲わせた者です」

「お前が⁉ …答えろ、何故この国を襲った!」

「この国を襲った理由は二つありましてねぇ…そのうちの一つがガーベラ王妃様、貴女に用があるからです」

「私に用だと?」

「ええ、ただこの話はあまり人前で話したくないのです…ですので何処か静かな場所でお話しませんか?」

「ふざけるな! 貴様のような悪党と話すことなど無い!」

「それは残念です…では無理矢理お連れするしかありませんねぇ…」


ブロストがパチンと指を鳴らした。


その瞬間。


「…《電撃》」

「ぐぅっ⁉」


突如背後の騎士がガーベラに電撃を喰らわせた!


そして電撃を喰らって痺れているガーベラを抱えてブロストの元に走って行った。


「り、リンド…何を…」

「手荒な真似をして申し訳ありません…ですがご安心をガーベラ…もう少しで私達の王国が出来上がるので、しばしお待ちを」

「貴…様……」


リンドと呼ばれた騎士が見せた下卑た笑みを見ながら、ガーベラは気絶した。


「王妃様っ! リンド貴様! これは一体どういう事だ!」

「ゼイム騎士団長…この国の新たな王に向かって無礼だぞ?」

「何を言っている⁉」

「今日を持ってこの国は私のモノになるんですよ、騎士団長如きが王に向かってその口の聞き方は無礼だろう?」

「貴様…アルトランド王国を裏切るのか!」

「裏切る? 何を言っているんだ? 私はこの国を裏切ってなどいない、ただ作り直すだけだよ…私とガーベラが統治する新たな王国に!」

「リンド…貴様ぁ!」

「さて、それでは王妃様とお話しできる場所に行くとしますかねぇ」


ブロストとリンドが亀裂の中に入って行く。


「待てっ! 全員! 王妃様を助けるんだ!」


『『おおおおおおおおお!!』』


「あなたたちの相手はこいつらです」


ブロストが指を鳴らすと、近くの運河からブルークラブが二匹現れ、ゼイム達の前に立ちふさがる!


「くぅっ…!」

「それでは皆様、さようなら」


亀裂が閉じ、ブロスト達は完全に居なくなった。

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