第98話 陰謀

一時間後。


私を撫でていたオリーブは、はっとした表情になった後、顔を真っ赤にして私から離れた。


「ご、ごめんなさい…ヤタイズナさんの前に来たら自分が抑えられなくなって…」


オリーブが顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた。


「い、いえ、大丈夫です、気にしていないので…ところでオリーブ、何故ここに? 私に何か用があるんですか?」

「あっ、用があるわけでは無くてですね…その、ただヤタイズナさんに会いたかっただけなんです…」

「…な、成程」

「はい…」

「そ、そう言えば、何でバノンも一緒に居るの?」

「それが案内された部屋に居たら、突然オリーブ様とウィズが来て、お前がどこに居るのか聞かれたから俺がここまで案内してきたんだ」

「成程」

「でも驚いたよねー、お城に着いてお姉ちゃんのお姉ちゃんに会いに行ったら、そこにヤタイズナさん達がいてさー」

「そうね、あの時は本当に吃驚したわよね、そう言えば、どうしてヤタイズナさん達はお城に?」

「それはですね、ここには美味しい食べ物があるとバノンに聞いたので、観光に来たんです」


本当は魔海王が気に入っているガーベラって人間を探しに来たのだが、オリーブ達に本当の事は言えないので観光と言う事にした。


「そしたら王妃様がバノンは故郷を救ってくれたお礼がしたいという事で城に招待されたんです」

「そうだったのですね、…あの、ヤタイズナさん…」


オリーブが顔を赤くしてもじもじしている。


「あのですね、明後日この国でお祭りが行われるんです」

「ええ、そうみたいですね」


この国に来る途中に助けたダイトがこの国で祭りがあると言っていたな。


「それで何ですけど…もしヤタイズナさん達が良ければですね…私達と一緒にお祭りを見て回りませんか?」

「皆で一緒にですか?」

「駄目…ですか?」


オリーブが不安そうな表情で私を見つめる。


「駄目じゃありません、良いですよ、一緒にお祭りを楽しみましょうか」


私の返事を聞いたオリーブがとても良い笑顔になった。


「ありがとうございます! では明後日の朝に城門前に集合と言う事でお願いします」

「分かりました、しかしオリーブ、一国の姫が護衛も無しに街の中を歩いて大丈夫なんですか? 危険なんじゃ…」

「大丈夫です、護衛ならウィズがいます、それにヤタイズナさん達がいれば危険な事は無いと思います」

「任せてー! 私がお姉ちゃんを絶対に守るよー!」

「なら良いですけど…」

「それじゃあ私達は部屋に戻ります、明後日、楽しみにしていますね」

「ヤタイズナさん達またねー」

「俺も部屋に戻るか、じゃあな」


オリーブ達が厩舎から出ていった。


「いやー明後日が楽しみだねミミズさん」

「…お主は楽観的じゃのう、この国に来た理由を忘れたのか?」

「何言ってるの、忘れてないよ」

「だったら何故あの小娘にさっき会った王妃と話をさせて欲しいと頼まなかったのじゃ! あの人間が魔海王の事を知っている人間かもしれないのじゃぞ!」

「それは分かってるよ、でも今私達はバノンの従魔としてここに居るわけだし…それにもし私が魔王って事がオリーブ達に知られたら色々と問題が起きるんじゃないの?」


私が魔王と言う事はオリーブ達には話していない。


もし知られたらこれからの事に色々と支障をきたす可能性だってあるし。


「後、今この国には勇者達が居るでしょ? 私が魔王だって分かったら攻撃してくるかもしれないじゃないか」

「何じゃお主、あんな小娘共に怯えていると言うのか?」

「怯えては無いけど…勇者達を倒すってわけじゃないんだし、わざわざ敵対する必要も無いんじゃないの? ミミズさんだって酔って国を滅ぼさなければ、勇者達と戦わずに済んだはずなんだしさ」

「ぬぅ、それはそうじゃが…」

「そんなに焦る必要も無いし、魔海王の事は祭りを楽しんでからでも良いと私は思うな、祭りには祭りでしか食べられない美味しい食べ物がたくさんあるんだよ? ミミズさんは食べたくないの?」

「いや、食べたくないわけではないが…」

(ぼく、おまつりのたべものたべたーい!)

(私も食べたいですー!)

(俺、祭り楽しみ、言う)

(どんな美味な食べ物があるのかしら…考えただけで涎が出てきましたわ)

(僕も楽しみです)

(自分達も楽しみであります!)

『ギチチチチィィィィィィ!!!』

(あっしもでさぁ)


スティンガー達も祭りが楽しみのようだ。


「とりあえず魔海王の事は祭りの後でって事で決まりだね」

「少し納得いかんが…まぁ良かろう」


話がまとまった後、しばらくのんびりしていると厩舎に数人の侍女が入って来た。


そして私達の元に来て、大きな桶を数個を置いた後、厩舎から出ていった。


桶の中を見ると、中には魚介類がふんだんに入った米料理が入っていた。

これはもしやシーフードパエリアか!?


パエリアとはスペインの代表的な料理で、世界的にも人気のある料理だ。


まさかこの世界にもパエリアがあるとは…と言うか米あったんだな。


私は早速パエリアを食べた。


魚介の味がよく出ていてとても美味だ。


「う、美味い! 何じゃこの食い物は!?」

(おいし~♪)

(とっても美味です~♪)

(俺、この食べ物絶品、言う)

(本当に美味しいですわ、もっと食べたいですわ)

(確かに美味しいですね)

(美味であります!)

『ギチチチチィィィィィィ!!!』

(確かに絶品でさぁ)


ミミズさん達も美味しそうにパエリアを食べていた。


その後、食事を終えた私達は再び厩舎でゆっくりとくつろぎ始めた。












―アルトランド王国、某所。


六色魔将の一人、青のブロストと部下達が薄暗い通路を歩いていた。


通路を抜けると、前方に黒いローブの男が立っていた。


「…お待ちしておりました、ブロスト様」

「待たせてすみませんでしたね、研究に時間を取られてしまいましてね、…それで頼んでいた事はやってくれましたか?」

「勿論です、この国全体に配置しました、命令を下せば直ぐに作戦を実行できます」

「それは素晴らしい、良くやってくれましたね」

「それでブロスト様、作戦実行は何時からですか?」

「そうですね…ああ、たしかこの国はもうじき祭りがあるそうですね」

「はい、明後日から行われる予定です」

「そうですか、では作戦実行は祭りの当日に行いましょう、この国最後の祭りになりますから、この国の人間達には楽しんでもらわないとねぇ」

「分かりました、…ブロスト様」

「ん? 何ですか」

「作戦が成功した暁には、約束通りこの国を私に下さるのですね?」

「勿論です、この国を手に入れた後は、貴女にこの国の全てを差し上げましょう」

「…本当に…よろしいのですね?」

「はい、作戦が終わり次第この国も、そして貴方が最も欲しい物…この国の宝ともいうべき人間、ガーベラ・アルトランドは貴方の物になるのですよ」

「ガーベラが、私の物に…」


黒いローブの男が下卑た笑みを浮かべる。


「そう言うわけなので、この作戦実行当日は頑張ってくださいね」

「はい、では私は最後の準備を進めて参ります…ふふふ…ガーベラ…待っていてください…もうすぐ貴方を迎えに参りますからね…ふふふふふ…」


黒いローブの男は笑いながら通路の奥へと消えていった。


「よろしいのですか? あのような者に任せて」

「良いんですよ、あんな者でも仕事はできますから、そんな事よりも…」


ブロストが懐から『何か』を取り出した。


「私は早く『これ』を試したいのですよ…ああ…試すのが今から楽しみです…ふふふ…ははははははははは!」


ブロストは手に持った『何かを』見て高らかに笑った。















「第55回次回予告の道ー!」

「と言うわけで今回も始まったこのコーナー!」

「何かヤバい感じの企みが行われていたね」

「うむ、一体どのような作戦なのじゃろうな…それはともかく、早速次回予告を始めるぞ」

「次回はオリーブ達と一緒に祭りを楽しむよ」

「うむ、美味なる食い物を食いまくってやるわ!」

「では次回『お祭り』!」

「「それでは次回をお楽しみに!!」」


・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。

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