第97話 ガーベラⅡ
「ま、魔物⁉ 何で城の中に…」
「き、巨大昆虫…」
オリーブ達と一緒に居た女の子二人が私達に気付いて驚いていた。
「久しぶりだなオリーブ、少し見ない間に更に美人になったな」
「お久しぶりです姉様、相変わらずお元気なようで何よりです」
「やぁオリーブちゃん、久しぶりだね」
「お久しぶりです義兄様、…何で床に座っているんですか?」
「いやー、これには事情が…」
「リオン、お前はそこで正座してしばらく喋るな」
「はいっ!」
王妃の言葉を聞いた国王が床に正座した。
「リオンの事は気にするなオリーブ、この馬鹿がこちらの客人に失礼な事をしたんだ」
「だって従魔を間近で見ることなんて滅多に…」
「お前は喋るなと言っただろうが!」
「ひぃぃっ⁉ ごめんなさ~い!」
「ふふっ…義兄様の好奇心旺盛な所は相変わらずの様ですね、所で姉様、何故バノン様がここに?」
「なんだ知り合いだったのか、実はこの国にアメリア王国を救ってくれた人物が来ていると兵から聞いてな、直々に礼を言おうと思い城に招待したんだ」
「そうだったのですか」
「ああ、所でオリーブ、そこに居られるのが勇者殿たちか?」
「あ、はい、こちらのお二人が勇者である橘綾香様と渡辺瑞樹様です」
「初めまして王妃様、橘綾香です」
「は、初めまして、渡辺瑞樹です」
橘綾香、渡辺瑞樹…日本人か。
私は改めて勇者達を見る。
二人とも黒髪で、髪型は橘綾香と言う少女がストレートヘア、渡辺瑞樹と言う少女はボブカットだ。
し二人とも日本人と言う事は残り二人の勇者も日本人なのだろうな。
マンガや小説でもあるクラスメイトだった者達が異世界に召喚されたと言う感じなのだろう。
しかし勇者が日本人って事は…ミミズさんの時代に召喚された勇者達も日本人だったのかな?
まぁこの辺は今考えてもしょうがないし置いておこう。
「初めまして勇者殿、ガーベラ・アルトランドだ、ここで座っているのが私の夫のリオン・アルトランドだ、私の故郷のために色々と働いてくれてありがとう…しかしオリーブ、この二人が勇者ならお前の横に居るのは誰なんだ?」
「姉様、この子は…」
「初めましてー! ウィズエル・ユアンシエルです!」
ウィズが元気よく王妃に自己紹介した。
「おお! お前がオリーブの妹分か、オリーブの手紙で知ってはいたが、実際に会うのは初めてだな」
「綺麗ー! 流石はお姉ちゃんのお姉ちゃんだー!」
「ははははは、そう言うお前はとても可愛らしいな、ウィズ、ちょっとこっちに来い」
「?」
ウィズが王妃の元に向かう。
王妃は目の前に来たウィズの頭に手を置き、撫でた。
「オリーブと仲良くしてくれてありがとう、これからもオリーブと仲良くしてくれ」
「もちろんー! えへへー…」
ウィズが王妃に撫でられて嬉しそうにしていた。
「オリーブ、ウィズ、それに勇者殿達も長旅で疲れただろう、部屋を用意してあるからそこで休むと言い、ゼイム、オリーブ達を部屋に案内しろ」
「分かりました、皆様、こちらへ」
ゼイムに案内されてオリーブ達が玉座の間から出ていく。
「バノン殿、貴方にも部屋を用意してある、今日はこの城に泊まって行ってくれ」
「い、良いのですか?」
「故郷を救ってくれた方をこのまま返しては失礼だからな、もうじき夕食だ、我が国の名物料理を御馳走しよう」
何、名物料理だって?
「わ、分かりました、それではお言葉に甘えさせていただきます…ところで王妃様、その場合私の従魔達はどうすれば…」
「流石にバノン殿の従魔全員が入る部屋は無いのでな…すまないが従魔達は城の厩舎に置いてもらえないだろうか?」
「厩舎ですか…」
バノンが私を見る。
まぁ仕方ないだろう、今の私達はバノンの従魔扱いだしな。
私は頭を縦に振った。
「…分かりました、ですが、一つだけお願いがあります」
「何だ?」
「従魔達にも夕食の名物料理を食べさせてあげたいのです、ですので従魔達の食事も名物料理にして欲しいのです」
バノンのお願いを聞いた王妃が目を丸くし、その後笑顔になった。
「従魔達の事も考えているとは…さすがは『救国の従魔使い』と呼ばれるだけはある、分かった、従魔達にも夕食と同じ料理を出そう」
「ありがとうございます」
「それではリンド、バノン殿を厩舎に案内しろ」
「分かりました、バノン様、どうぞこちらへ」
私達はリンドと呼ばれる騎士に案内されて厩舎へと向かう。
その間に私は小声でバノンと会話した。
「…バノン、私達にも名物料理を食べられるようにしてくれてありがとうね」
「良いって事よ」
「たまには良い事するではないか」
「たまにって何だよ」
「実際そうなのだから良いではないか」
「…? バノン様、何か言いましたか?」
「いえ、何も言っていませんよ」
しばらく城の外に出ると、隅に大きな厩舎が見えた。
「バノン様、あの厩舎に従魔達を置かれてください」
「分かりました」
私達は厩舎の中の一番大きな部屋に入った。
「それではバノン様、お部屋に案内します」
騎士に連れられてバノンは厩舎から出ていった。
「…しかし、仕方ないとはいえ何で儂らが馬小屋なのじゃ」
「まぁまぁ、名物料理が食べられるだけ良いじゃないか」
別に寝床がどこだろうがどうだっていい、今は名物料理だ。
どんな料理何だろうなー、楽しみだなー…
そんな感じでしばらく厩舎でゆっくりしていると、厩舎に誰かが入って来た。
ひょっとして夕食か⁉
そう思って期待していると。
「…ヤタイズナさん」
「ヤタイズナさん達久しぶりだねー!」
厩舎にオリーブとウィズが私達の元にやって来た。
何故かバノンも一緒だ。
「ウィズ、久しぶりだね、元気してた?」
「うんー! とっても元気だよー!」
ウィズが元気そうに返事をした。
「…」
一方オリーブは私を見つめたままじっとしている。
その瞳は熱を帯びているように見えた。
「…あの、オリーブ?」
「…や」
「や?」
「ヤタイズナさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
オリーブが私に抱き着いてきた!
「オリーブ⁉」
「ヤタイズナさん…ヤタイズナさぁん…」
オリーブが私の前胸部に頬擦りし、両手で私の身体を撫でまくる。
「はぁぁぁぁ…この肌触り…やっぱりたまりません…」
「お姉ちゃん嬉しそうー」
「…またこれか」
「いつもの展開だな」
ミミズさんとバノンが呆れていた。
「あの、オリーブ、撫でるのは別に良いですが…こんなところでやっては服が汚れてしまいますよ⁉」
「ヤタイズナさん…好き、大好きです…」
―チュッ
!!!
オリーブが私の口にキスをした!
「お、オリーブ⁉」
「はぁぁぁぁ…ヤタイズナさん、大好き…」
オリーブは私の言葉が聞こえていないようで、私の身体を撫で続けている。
大好き…
オリーブのこの想いは本当にカブトムシに対してなのだろうか?
もしかして、まさか本当にオリーブはカブトムシではなく私自身の事が好きなのか?
いやしかし…だけど…私はカブトムシでもあるわけで…でもオリーブは…
「お姉ちゃんが幸せそうで何よりだよー」
「…あやつ多分ややこしい事考えているのじゃろうな…」
「だな…」
こうして私は色々と悩みながら、オリーブに撫でられ続けた。
「第54回次回予告の道ー!」
「と言うわけで始まったこのコーナー!」
「どうも皆様、オリーブ・アメリアです」
「ウィズだよー!」
「おいこらお主ら! 今回は出番が多かったと言うのにこのコーナーにまで出てくるのか⁉」
「いいじゃん別にー、珍味さんうるさいよー」
「ミミズさんじゃと言っとるじゃろうが!」
「今回は私とヤタイズナさんが久しぶりの再会となりました、ヤタイズナさんは相変わらず素敵な方でした…」
「お姉ちゃん嬉しそうー」
「それでは早速次回予告を始めますね」
「次回は何か悪い人達が出てくるみたいだよー」
「怖いですね…何も起きなければ良いのですが…」
「それでは次回『陰謀』!」
「「それでは次回をお楽しみに!!」」
「最後の台詞まで取るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。
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