第95話 アルトランド王国
ダイト達の荷馬車を運び始めて早一日。
荷馬車を持ちあげ空を飛び続けていると、前方に大きな城壁が見えてきた。
あれがアルトランド王国か?
「カヴキ、一旦降りるぞ」
(分かりやした)
私達は城壁から少し離れた場所に荷馬車を降ろした。
荷馬車の扉が開き、バノンがよろめきながら荷馬車から降りてきた。
「うぷっ…」
「バノン、気分悪そうだけど大丈夫?」
「だ、大丈夫だ…ちょっと酔っただけだ…うっ…」
どうやらバノンは車酔いで気分が悪いらしい。
馬車を運んで飛んでいる間、何回か傾けたり揺らしてしまったからな…
「バノン、あの城壁の先がアルトランド王国でいいの?」
「あ、ああ、そうだ…」
私達が話していると、荷馬車からダイト達がふらふらと降りてきた。
「し、死ぬかと思った…うぷっ…」
「まさか空を飛ぶことになるなんてな…うっ…」
「で、でも見て、もう城壁が見えるわ…ううっ…」
「ば、バノンさん…あなたのおかげで予定よりも早く着くことが出来ました…感謝してます…ううっ、気持ち悪…」
ダイト達も全員車酔いになったらしい。
もし今度また馬車を運ぶ機会があったら揺らさないように運ぶようにしようと私は思った。
その後私達はバノン達の車酔いが治るまで休憩することにした。
そして30分後。
バノン達の車酔いが治ったので、私達は城壁に向かうことにした。
今回は持ち上げるのではなく、私が馬車を引いて行くことにした。
そのまま城門に近づいて行くと、他にもアルトランド王国に向かっているであろう馬車が続々とやって来ていた。
城門近くに来ると、武装した門兵達が集まっていて、私達を警戒していた。
「そこの馬車、止まれ!」
私が止まると、門兵達が警戒しながら私達の元にやって来た。
門兵達の視線は私とミミズさん達に集まっていた。
荷馬車の扉が開き、バノンとダイト達が出てきた。
「何者だ? この魔物達は何だ? 説明しろ」
「私は商人でダイトと申します、実はここに向かう途中で魔物達に襲われてしまいまして、その時にこちらのバノン様と従魔達が助けてくれたのです」
「どうも初めまして、バノンです」
バノンの名前を聞いて門兵達がざわついた。
「バノン…まさか、あの噂の!?」
「この方が、アメリア王国を救ったと言う…」
「『救国の従魔使い』バノン様!」
門兵達がバノンの元に集まって来た。
『『バノン様! アメリア王国を救っていただきありがとうございました!!!』』
そして全員が一斉にバノンに頭を下げて礼を言った。
「え、え? いやあの…これは一体…」
突然の事にバノンは戸惑っていると門兵の一人が頭を上げ、バノンに話しかけた。
「失礼、実は我がアルトランド王国の王妃様はアメリア王国の第一王女だったお方なのです」
アメリア王国の第一王女?
そう言えば確かオリーブはアメリア王国の第二王女だったな…
と言う事は、この国はオリーブのお姉さんの国なのか。
「我らが敬愛する王妃様の生まれ故郷を魔物の軍勢から守ってくれた事、本当に感謝しております!」
門兵が再び頭を下げてバノンに礼を言った。
オリーブのお姉さん、つまり王妃様はこの国じゃ絶大な人気を誇っているらしい。
そんな王妃様の生まれ故郷を救ったバノンは彼等にとって英雄と言っても良い存在になっているようだ。
「あの…所で私達アルトランド王国に入りたいんですが…入っても良いですか?」
「勿論です! どうぞお入り下さい!」
門兵達が道を空け、私達は城門を通って王国内に入った。
王国内に入った私は辺りを見渡した。
王国内はバノンの言っていた通り運河や水路が通っていて、多くの船が行き交っている。
街並みも運河とマッチしていてとても美しい。
まさに水の都だ。
「バノンさん、目的の店はこっちにあります」
私達はダイトに案内されて目的の店まで向かった。
目的の店に着いた後、私達は約束通りプラチナコーンを一箱貰った。
「バノンさん、今回は本当にありがとうございました、バノンさんが居なければ本当にどうなっていたか…」
「いえいえ、それでは私達はこれで」
こうして私達はダイト達と別れ、アルトランド王国を探索し始めた。
「…しかし」
私達が歩いていると、多くの人達が私達を見ていた。
「やっぱり見られてるね」
「まぁ当然と言えば当然じゃのう」
ここでもやはり私達は注目の的になっていた。
「見ろよあれ…」
「すげぇ…」
「ひょっとしてあれが…」
「ああ、『救国の従魔使い』様だ…」
「あれだけの魔物を従えているなんて…」
「あの一本角の魔物カッコイイねー」
「そうだねー」
カッコイイ…ふふふ、やはりここでもカブトムシのカッコ良さは通用するようだ。
その後私達は、大きな広場にやって来た。
「…さて、この国でガーベラって人を探さなきゃいけないわけだけど…どうやって探そうか?」
「それを儂に言われてもな…」
アルトランド王国に来たのは良いが、ガーベラと言う人がアルトランドのどこに居るかは分からない。
「やっぱり聞き込みとかで調べるしかなさそうだね」
「阿保かお主は、一体どれだけ時間が掛かると思っとるのじゃ」
「でもそれぐらいしか方法は無いし…ん?」
私達が考えていると、前から数人の鎧騎士達がこちらに向かって歩いて来た。
「失礼、従魔使いのバノン様でしょうか?」
「はい、そうですが…貴方達は?」
「申し遅れました、私はアルトランド王国騎士団長のゼイムと申します」
「お、王国騎士団長…それで騎士団長様が私に何の用ですか?」
「はい、『救国の従魔使い』バノン様、王妃様が貴方様に会いたがっておられるのです」
「お、王妃様が俺に⁉」
「はい、生まれ故郷を救ってくれたバノン様に直々に礼を言いたいとの事です」
「な、成程…ちょっと待ってもらえますか?」
バノンがゼイム達から離れ、私達の元に戻って来る。
「ど、どうするんだ?」
「そりゃあ行くしか選択肢はないじゃろうが」
「ミミズさんの言う通りだ、それに私はオリーブのお姉さんがどんな人か気になるし」
「…お前らは気楽だな…」
バノンがゼイムの元に向かう。
「お待たせしました」
「…何をしていらしたんですか?」
「いえ、何も無いので気にしないで下さい」
「そうですか、それでは、城までご案内します」
私達はゼイム達に案内されて、王城へと向かった。
「第53回次回予告の道ー!」
「さあと言うわけで今回も始まったこのコーナー!」
「遂にアルトランド王国内へと入ったね」
「そうじゃのう、今回はあの小娘が居ないから入るのはてこずると思ったのじゃが…」
「今回はバノンのおかげで入れたね」
「ううっ、最近は出番が多くて嬉しいぜ…」
「おい何さらっと居るんじゃお主」
「まぁまぁ、それよりも次回はオリーブのお姉さんとの初対面だね」
「一体どんな人なんだろうな」
「それは次回のお楽しみじゃ! それでは次回『ガーベラ』!!」
「「それでは、次回をお楽しみに!!」」
・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。
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