第92話 新たなる旅立ち

レイド大雪原から旅立って一週間、私達はランド大樹海にある巣に戻って来た。



(魔王様、おかえりなさいませであります!)

『『『ギチチチチィィィィィィ!!!』』』


レギオン達が盛大に私達を出迎えてくれた。


…相変わらず声が少しうるさかったけど。


レギオンを見ると、前よりも一回り大きくなり、甲殻が前よりごつくなっていた。


どうやらレギオンは私達がレイド大雪原に行ってる間に進化したらしい。


私は進化したレギオンに鑑定を使い、ステータスを確認した。












ステータス

 名前:レギオン

 種族:アントジェネラル

 レベル:15/45

 ランク:B-

 称号:魔王のしもべ

 属性:地

 スキル:統率、怪力鋏

 エクストラスキル:昆虫の重鎧














B-か、アントコマンダーが確かD+だったはずだから相当強くなってるな。


それから私は、レギオンに私達が居ない間何も問題は無かったか、巣に置いてあった昆虫の卵は何個孵化したかを聞いた。


レギオンの話によると、私がレイド大雪原に行っている間、他のアント達も進化したと言う。


ソードアント10匹がソーアントと言う魔物に、シールドアント10匹がガーディアントという魔物に進化した。


頭部が剣のようになっていたソードアントに対して、ソーアントの頭部は普通のアントと同じだが、顎が長くなり鋸状(のこぎりじょう)に変化している。


ガーディアントはシールドアントよりも身体が一回り大きくなり、盾状の頭部が更に頑丈そうになっていた。


ソーアントとガーディアントを鑑定したところ、両方ともCランクだった。



そして今回孵化した卵は5個で、生まれてきたのはソードアント2匹、シールドアント2匹、そして残り1個からは新しい魔物が生まれたらしい。


早速私はその魔物をレギオンに連れて来るように言った。








待つこと数分。


(魔王様、連れてきたであります!)


レギオンが一匹の昆虫を連れて戻って来た。


「こ、この昆虫は!?」


私はその昆虫の姿を凝視する。


体色は暗褐色、あの鎌状の前肢、甲羅のような背中、鋭い口吻、間違いない!


「タガメじゃないか!」


タガメはカメムシ目、コオイムシ科の昆虫で日本最大の水生昆虫で、日本最大のカメムシだ。


池、沼、水路、水田など様々な場所に生息し、夜行性で昼間は水草に捕まって大人しくしている事が多い。


肉食性で魚やカエル、他の水生昆虫を捕食し、時には蛇や亀、ネズミなどの哺乳類をも捕食するのだ。


その食べ方は、鎌状の前肢で獲物を捕獲し、針状の口吻を獲物の身体に突き刺して消化液を送り込んで、溶かした肉を吸う、体外消化によって食べているので、タガメに食べられた獲物は骨と皮しか残らないのだ。


自分より大きな獲物を捕らえることもあり、その獰猛さから、水中のギャングと呼ばれている。


そしてあまり知られてはいないが、タガメは飛ぶことが出来る昆虫だ。


繁殖の時期になるとよく飛ぶようになり、相手を探して別の水場に移動したりするのだ。


水中では最強を誇り、水陸空すべてに対応できるオールマイティな昆虫、それがタガメなのだ。


しかしそんなタガメだが、かつては田んぼの昆虫の代表的な昆虫だったが、今は数が激減しており絶滅危惧種になっているのだ。


その原因は農薬の普及、環境破壊などで生息できる場所が減っているからだ。


今ではカブトムシやクワガタよりも見つけるのは困難でとてもレアな昆虫なのだ。


私も人間だった頃、タガメを探すためにいろんな場所を行ったものだ。


いやーしかしこの世界でもタガメが見られるとはなー…


私はタガメを見る。


カッコイイ、カッコ良すぎるよ! 


何あの顔! 昆虫の中でも相当カッコイイ分類に入る顔だよ!


いやーカッコイイなー…


「…おい、おいヤタイズナ、…まったく、さっさと戻ってこんか!」

「あ痛っ!?」


ミミズさんが私の頭を引っ叩いた。


「痛いよミミズさん…」

「痛いじゃないわ、またぶつぶつと独り言を言うとったぞ」


またトリップしてたのか…反省しないとな…


私はタガメに鑑定を使いステータスを見た。











ステータス

 名前:無し

 種族:ウォーターギャング

 レベル:1/50

 ランク:B

 称号:魔王のしもべ

 スキル:怪力、昆虫の重鎧

 エクストラスキル:水の鎌、馬鹿力











おお、Bランクか、これは即戦力になりそうだな。


私がそう思っていると、タガメが私に話しかけてきた。


(初めましてですご主人、突然で申し訳ありやせんが、自分の名前は何ですか?)

「あ、ちょっと待ってね、今考えるから…よし、決めたぞ、お前の名前はカヴキだ」


カヴキとはギリシャ語で甲羅と言う意味だ。


甲羅のような背中を持つタガメにはピッタリな名前だと思う。


(ありがとうございやす、今日から自分の名はカヴキ! ご主人のために精一杯頑張りますのでよろしくお願いいたしやす!)

「うん、よろしく頼むよ」


私がカヴキに名前を付けてから少しして、リュシルがレイド大雪原へと帰って行った。


(それでは魔蟲王様、私はこれで)

「リュシル、帰りの道案内をしてくれて感謝してるよ」

(礼には及びません、ではさようなら)


リュシルを見送った後私は、ティーガーの元に向かった。


(主様、おかえりなさいませ)

「ただいまティーガー、元気にしているか?」

(元気です、私なんかを心配していただきありがとうございます)


巣に残していたしもべ達の状態を確認した私は、食事を済ませた後、部屋で直ぐに寝た。











―翌日、私はミミズさんとバノンとアルトランドの事について話し合った。


「アルトランド王国か…」

「バノン、知ってるの?」

「ああ、結構前に仲間たちと行ったことがある」

「何、それは本当か!」

「ああ、この大樹海から南にある国だ」

「南か…バノン、アルトランド王国ってどんな所なの?」

「海岸沿いにある国で主に漁業が盛んな国だな、街の中には運河があるんだが、その景色の美しさから別名水の都と呼ばれているんだ」

「水の都…」


そんなに美しい国なのか…行くのが少し楽しみだな。


「よし、それじゃあ早速出発の準備をするか」

「それでヤタイズナ、今回のメンバーはどうするのじゃ?」

「ああ、実は今回のメンバーはもう決めてあるんだ」

「ほう」


今回アルトランド王国に向かうメンバーは、ミミズさんとバノン、スティンガー、パピリオ、カトレア、ベル、そしてレギオンとアント達、そして最後にカヴキだ。


私がこのメンバー発表をしたら、レギオン達がとても嬉しそうにしていた。


(遂に…遂に自分達が魔王様と共に戦えるのでありますね! 魔王様、我ら総勢210の軍勢! 何時でも出撃出来るであります!)


『『『『ギチチチチィィィィィィィィィィィィ!!!』』』』


レギオンの後ろに全てのアント達が集まり、叫び声を上げた。


「…いや、レギオン、流石に全員は連れて行けないよ」

(な、何故でありますか!?)

「いや、何故って…」


それだけの魔物が国に向かったら、絶対とんでもない事になるだろう。


アメリア王国に行った時ですらあの騒ぎだったしな…


「とにかく、今回連れて行くのは多くても7、8匹ぐらいだから、分かった?」

(了解であります…)


レギオンとアント達が少しだけ残念そうにしていた。


今回連れて行くアント達は、ソーアントとガーディアントを4匹ずつ、計8匹となった。


「ガタク、お前は今回留守番だ、理由は分かるな?」

「はい…大顎を半分失っている拙者など、足手まといになるのは必然…今回は殿の留守の間、全力で巣を守るで御座る!」

「ソイヤー、テザー、お前達もガタクと一緒に留守を頼む」

(分かりました!)

(俺、分かった、言う)


こうしてメンバーを決めた私達は、バノンが作った従魔の証を身に着け、出発の準備を済ませた。


「それじゃあ、いって来る」

「殿、いってらっしゃいで御座る!」

(いってらっしゃいませ主殿!)

(俺、ご主人いってらっしゃい、言う)

『『『ギチチチチィィィィィィ!!!』』』


ガタク達に見送られて、私達はアルトランド王国に向けて出発した。















「第50回次回予告の道ー!」

「と言うわけで始まったこのコーナー!」

「今回は新しい仲間、カヴキが登場したよ」

「うむ、タガメは作者が水生昆虫の中で1番好きな昆虫だから絶対出そうと前から思っていたそうじゃからのう、今回やっと登場させることが出来たと言うわけじゃ」

「うん、そして今回は旅のメンバーも少しだけ変わったね」

「そうじゃな、カヴキとレギオン達がどのような活躍をするか楽しみじゃのう」

「それでは次回『水の都』!!」

「「それでは、今年も次回をお楽しみに!!」」


・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので、次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。

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