第88話 魔獣王の本気

「何だ!?」


 私達は謎の光線が放たれた方を見る。

 そこには、謎の球体が空中に浮かんでいた。


『敵に情報を教えようとするなんて駄目ですよぉ、私達の計画が狂ってしまうじゃないですか』

「ブ、ブロスト……キサマ……ナゼ」

『でもあなたが彼らを引き付けていてくれたおかげで例のモノは手に入りました、囮役ありがとうございますね』

「ガハッ! ……キサマ、マジュウオウイガイニモテキガイルコトヲシッテイナガラ、ダマッテイタナ……!」

『さて、何のことでしょう?』

「ブロスト……!」

『ああそれと、ギリエル様に頼まれて来たと言う話、あれ嘘ですから』

「ナ、ナニ……!?」

『アレは私の研究に利用させてもらうので、安心して死んでくださいね?』

「キサマァァ……!」

『おお、怖い怖い』

「おいそこの球! 貴様何者じゃ!」


 ミミズさんが球体に怒鳴った。


『ああ失敬、名乗るのが遅れましたね、私は魔人軍『六色魔将』が一色、『青』のブロストと申します、以後お見知りおきを……と言っても、もう会う事は無いでしょうがね……現れなさい』


 その言葉と同時に、私達を包囲するように、オーガやゴブリンなど、大量の魔物が突如出現した!

 その数は数えきれないほどだ。


「な、何じゃ!?」

「いつの間にこれだけの魔物が……!? あれはサイクロプス!?」


 前方にサイクロプスが現れた。

 しかも5匹も!


『私が集めていた魔物達をここで使うのは少し勿体無い気はしますが……不穏分子はここで確実に排除した方が良いですからね……行きなさい』


「ギャギャー!」

「グオオオオオー!!」

「ウオオオオオオオオオオオ!!!」


 ブロストの言葉と共に魔物達が私達に向かって来る!


「やるしない……ぐぅっ!?」


 くそっ、身体が……


「ヤタイズナ! その傷ではもう無理じゃ!」

「でもミミズさん、無理でも戦わなきゃ……皆死んでしまう……」


 くそっ! 動け……動いてくれ……!


「……ヤタイズナ、ミミズさん、そこで休んでろ……」


 魔獣王の声を聞き後ろを向くと、魔獣王が立ち上がっていた。


「俺があの雑魚共を蹴散らしてきてやる」

「魔獣王、しかしお主、あの鎖に力を吸い取られて……」

「ふっ、吸われたのはほんのちょっぴりだけだ、奴らを蹴散らすのに問題は無い」

「クーン……」

(魔獣王様……)


 リュシルとユキが魔獣王を心配そうに見ている。


「ユキ、リュシル、安心して見ているがいい、すぐに片づける……《魔獣の氷柱》!」


 魔獣王の周りに3メートル程の氷柱が無数に出現し、魔物達に向けて撃ちだされた!


「グキャ!?」

「ギャゴォ!?」

「グオオ!?」


 ゴブリンとオーガ達は次々に氷柱によって潰されていく!


「グオオオーッ!」


 オーガ達が魔獣王に向けて槍を投げつける!

 しかし槍は魔獣王の体毛によって弾かれ地面に落ちた。


「その程度の武器で俺を傷つけられると思っているのか! 《魔獣の氷爪》!」


 魔獣王の足に氷が纏わり、鋭利な爪となる。


「死ねぇぇぇっ!!」

「グオオオー!?」

「グギョオオー!?」

「グオガァァー!?」


 魔獣王は氷爪でオーガ達を切り刻み、氷柱でゴブリン達を殺していく。


「す、凄い……」


 その圧倒的な姿に、私は見入ってしまう。


『大半の力は吸い取ったと思ったのですが、まだあれだけ動けるとは……これでも喰らいなさい!』


 光線が魔獣王目掛けて撃ちだされた!


「当たるかそんなもの!」


 魔獣王は横に跳んで光線を回避!


「ウオオオオオオオオオオオ!」


 その隙を狙い、サイクロプスが棍棒で魔獣王を攻撃する!


「《魔獣の氷牙》!」


 魔獣王が氷の牙でサイクロプスの棍棒を噛み砕いた!


「ウオオオ!?」


 棍棒を破壊されたサイクロプスが狼狽えた瞬間、魔獣王が魔獣の氷爪でサイクロプスの首を刎ね飛ばした!


 私達が苦戦したサイクロプスを一撃で! 

 さすがは六大魔王だ。


「ギャッギャー!」

「グオオオー!」


 前方より更にゴブリンとオーガが出てくる、一体何匹いるんだ?


『喰らいなさい!』


 球体から再び光線が撃ちだされるが、魔獣王は光線を難なく回避した。


「ちびちびと撃ってきやがって……煩わしい」

『数で押しなさい! いずれは消耗する、一気に潰すのです!』

「ギャギャー!」

「グオオオー!!」

「ウオオオオオオオオオオオ!!!」


 ゴブリンとオーガの数が増え、更にはサイクロプスも新たに5匹も増えた!


「雑魚共がわらわらと……面倒だ、全員まとめてぶっ殺してやる!!」


 そう言うと魔獣王は口を大きく開いた。


「! あ奴アレを撃つ気か」

「アレ?」


 魔獣王の口内に冷気が一点に集まり、小さな氷塊が作られる。


「喰らうがいい! 《魔獣砲》!!」


 そしてその小さな氷塊を魔物達目掛けて撃ちだした!


『何ですか? その攻撃は……!?』


 余裕そうにしていた球体が凄い速さで氷塊から遠ざかろうとする。


「無駄だ」


 その言葉と同時に氷塊が魔物達の中心で大きく発光、衝撃波が発生した!


「こ、これは!?」

「相変わらずの威力じゃのう!」

(うわー!?)

(と、飛ばされそうです!)

(きゃあああああ!?)

(俺、飛ばされる、言う!)

(何なんですの!?)

(うわあああああ!?)




 しばらくすると衝撃波は収まり、光が徐々に消えていく。


「い、一体何が……!?」


 私は光が完全に消えてから前を見ると、巨大な氷柱が出来ていた。

 氷柱の先は枝のように分かれていてまるで氷の大樹のようで、内部で魔物達が氷漬けになっていた。

 その中には球体の姿もある。


「一生凍ってろ……グゥッ!?」


 突然魔獣王が倒れた。


「やはり魔獣砲は力を使い過ぎるな……」

「クーン!?」

(魔獣王様!?)


 ユキとリュシルが魔獣王の元に駆け寄る。


「ミミズさん、魔獣王は大丈夫なの?」

「安心せい、あのスキルを使って疲れているだけじゃ」

「そうか……」


 とりあえず、これで終わったみたいだな……


「……ヤタイズナヨ」


 私がそう思っていると、後ろからザハクの声が聞こえたので、後ろを向いた。


「オマエニタノミガアル」

「……何だ?」

「トドメヲ、サシテクレナイカ?」


 私はザハクの言葉を聞いて驚いた。


「……良いのか?」

「モウスグワタシノイノチハトダエル……ナラバセメテ、ワタシヲタオシタモノノテデシニタイ……」

「……分かった、ぐ、ぐぅぅ……」


 私はボロボロの身体を起こして、ザハクの元に向かう。


「……《炎の角・槍》」


 私は炎の角・槍を使う。


「アタマヲネラエ……ソウスレバヒトツキデシヌダロウ……サラバダヤタイズナ、ワタシヲタオシタツヨキセンシヨ……」


 私は炎の角・槍でザハクの頭を潰した。

 その瞬間、ザハクの身体が灰色になり、崩壊していった。


 頭に声が響く。


 《ザハクを倒した。 ヤタイズナはレベルが15になった。》


 その言葉を聞いた後、私は力尽きて倒れ、気絶した。










「第46回次回予告の道ー!」

「と言うわけで今回も始まったこのコーナー!」

「ついにレイド大雪原での戦いが終わったね」

「そうじゃな、しかし敵側の内部事情も複雑みたいじゃのう……」

「青のブロスト……一体何を考えているんだ……」

「まぁ今考えても仕方がないし、次回予告を始めるかのう!」

「次回、ついにレイド大雪原を出て大樹海に帰るよ」

「魔獣王編もこれで終わりか……長いようで短かったのう」

「そうだね、それじゃあ次回『さらばレイド大雪原』!」

「「それでは、次回をお楽しみ!!」」


 ・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので、次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。

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