第87話 カブトvsエレファスゾウカブトⅢ

…あれ? 何ともないぞ。


どういうことだ? 確かにザハクは私目掛けて落ちてきたはずだ。


それなのに、どうして私は無事なんだ?


私は身体を何とか動かし、上を向いた。


「…!?」

「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…!」


何と落ちてきたザハクをガタクが大顎で受け止めていたのだ!


「が、ガタク…」

「ぬぅぅぅぅ…せいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「ギュオオオオオオオ!?」


ガタクは受け止めていたザハクをぶん投げた!


投げ飛ばされたザハクは仰向けになった状態で地面に落ちた!


ひっくり返ったザハクが身体を起こそうとジタバタしている。


「はぁ…はぁ…殿、御無事で御座るか?」

「あ、ああ…助かったよガタク…!? ガタク、お前大顎が!?」


ガタクの右大顎の上半分が折れていた。


恐らくザハクを受け止めた時に…


「ふっ…この大顎一つを代わりに殿の命を救えたのであれば本望で御座るよ」

「ガタク…ぐ、ぐぅぅぅぅ…」


私はボロボロになった身体に力を入れて起き上がった。


ガタクが私のためにここまでしてくれたんだ…こんな所で倒れている場合じゃない!


「殿!? 起き上がって大丈夫なので御座るか?」

「ふふふ…安心しろガタク、これぐらいのダメージ、気合いで何とかするさ!」


そうだ、人間気合いがあれば何でもできるんだ!


…って、今の私は虫だったな。


私はザハクを見る。


「ギュオオオ! ギュオオオ!」


ザハクはまだ起き上がれずにジタバタしている。


ガタクが作ってくれた好機! ここで一気に勝負を決めてやる!


私は翅を広げてザハクの真上に飛んだ!


そしてそのままザハクの腹部目掛けて一気に急降下した!


「《炎の角・槍》!」


炎の角が角の先の一点に集中する!


「オラァァァァァァァ!!」


炎の角・槍がザハクの腹部に直撃する!


「ギュオオオオオオオオオ!?」


炎の角・槍を喰らいザハクが悲鳴を上げる!


「うおおおおおおおおお!!」


炎の角・槍の先がザハクの腹部に突き刺さるが、これ以上刺さらない。


くそっ! これでも駄目なのか…そうだ!


私は炎の角・槍を抜き、ザハクの背中に回り込んだ。


私はザハクの背中に角を入れた。


「ふんぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…!!」


私はザハクを持ちあげようとするが一向に持ちあがらない。


き、気合いだ…気合いを入れろ私!


持てる力を全て出し切るんだ!!


「ぐぬぬぬ…うがあああああああああああっ!!!」

「ギ、ギュオオオオオオオ!?」


私は渾身の力でザハクを持ちあげた!


「す、凄いで御座る!」


私は翅を広げてザハクを空へと持ち上げていく!


「ギュオオオオオオオ!」


ザハクが翅を広げて逃げ出そうとしているが、私が角で押さえていて開くことが出来ない。



確かあっちに…あった!


私は魔獣王を縛っている鎖の柱を見つけた。


魔獣王を縛る鎖を支える物…恐らくとてつもなく硬いはず!


アレを利用する!


「《超突進》!!」


私は超突進を使い、ザハクごと柱に向けて突っ込んでいく!


(なにあれー!? なにかおおきなものがものすごいはやさでこっちにきてるよー!?)

(あれは一体!?)

「何じゃ!? ん、あれはまさか…ヤタイズナか!?」

「行っけぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


ザハクの腹部に柱が直撃する!


「ギュオオオオオオオ!?」


柱の先が刺さりザハクが悲鳴を上げる!


よし! このまま一気に…


私は超突進でザハクを柱に押し付ける!


柱がどんどんザハクの身体に刺さって行く!


「ギュオオオオオオオ!? ギュオオオオオオオ!?」


ザハクが何とか逃げ出そうと暴れまくる!


「うおおおおおおおおおおお!!!」


私は全力でザハクを押し続け、遂に柱がザハクの身体を貫通した!


「ギュオオオオオオオオオオオオオ!?」

「や、やったぞ…」


全ての力を使い果たした私は地面に落下した。


「ヤタイズナー!」

(ごしゅじんー! だいじょうぶー!?)

(主殿!)

(ご主人さまー!)


ミミズさん達が私の元に駆け寄って来た。


「み、ミミズさん…」

「しっかりするのじゃ! ベル、ヤタイズナを癒すのじゃ!」

(《癒しの鈴音》!)


ベルの癒しの鈴音によって私の身体が癒されていく。


「ミミズさん…魔獣王とユキは…」

「ユキなら先程儂らが助け出した、しかし魔獣王はまだ…」

「クーン…」


ユキが倒れている魔獣王を心配そうに見ている。


「それよりもヤタイズナ、あの巨大な魔物は何じゃ?」


ミミズさんが柱に突き刺さっているザハクを見た。


ザハクはまるでモズの早贄のような状態になっている。


「あいつはザハクって言う魔人で謎の珠を使ったらあんな風になったんだ…」

「魔人じゃと…ん?」


私達が話していると、ザハクが突き刺さっている柱が傾きだし、そのまま大きな音を立てて地面に倒れた。


それと同時に魔獣王を縛っている鎖が消滅したのだ。


「これは一体…」

「どうやらあの鎖は全ての柱が正常に機能していないといけない仕組みだったようじゃのう、お主が柱の一本にザハクという異物を刺したことであの柱は異常を起こしたようじゃのう」

「ワンワン♪」


ユキが嬉しそうに魔獣王に擦り寄った。


「おお、娘よ…無事だったか…」

(魔獣王様! お身体は大丈夫ですか?)

「安心しろリュシル…少し力を奪われただけだ」

(良かった…)

「とりあえずは何とかなったね…」

「そうじゃのう」

「…ギ…ギュオオオ…」


そう私達が話していると、柱に刺さっていたザハクが動き出した!


「そんな…まだ動けるのか!?」


不味い…私は本当にもう動けない…このままではミミズさん達が…


そう思ったとき。


「ギュオオオ……ミ、ミゴトデアッタ…」

「!?」


ザハクが喋ったのだ!


あの状態でも喋れたのか!?


「コノチカラヲツカッタワタシニカツトハ…ミゴトトシカイエヌ…ネームドヨ…オマエノナヲキカセテクレヌカ?」

「…ヤタイズナだ」

「ヤタイズナ…ソノナ、コノムネニキザミコンダゾ…」


喋るザハクの元にミミズさんが向かっていった。


「おい貴様、ザハクと言ったな? 貴様に聞きたいことがある」

「…イイダロウ、ハイシャハショウシャノノゾミヲキクノガレイギ…ナンデモハナソウ」

「まず最初に聞くが、貴様からは何故か儂に近い力を感じるが、その力は何処で手に入れた?」

「チカイチカラ…? …ナルホド、ソウイウコトカ、…キサマハマチュウオウカ」

「元、じゃがな、今は貴様を倒したあ奴が魔蟲王じゃ」

「フハハハ…ナルホド、ツヨイハズダ…」

「それで改めて聞くが、その力は何処で手に入れた?」

「イイダロウ…オシエヨウ、コノチカラハ…」

『それ以上は駄目ですよ』


突然何処からか声が聞こえてきた! そして次の瞬間!


「グゥッ!?」


ザハクの前胸部を謎の光線が貫通した!
















「第45回次回予告の道ー!」

「と言うわけで久しぶりに始まったこのコーナー!」

「本当に久しぶりだね…それにしても最近はめっきり暖かくなってきたね」

「そうじゃのう…昆虫たちが越冬から目覚めるのを作者も楽しみにしているのう…おっとイカン、次回予告をしなければ!」

「ザハクの秘密が分かると思ったのにまさかの謎の光線! 一体誰が?」

「分からん…しかしそれは次回『魔獣王の本気』を見れば分かるぞ!」

「「それでは、次回をお楽しみ!!」」


・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので、次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。

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