第85話 カブトvsエレファスゾウカブトⅠ
―魔獣王の棲む廃墟。
そこに青の鎧の魔人、ブロストと部下の魔人達がいた。
「おやおや、ザハクがあの宝珠を使ったのですか」
ブロストが手に持っている水晶玉には、ヤタイズナ達とザハクの姿が映っていた。
「数百年前、勇者達が倒したと言う魔蟲王の一部を使い魔人王様が作られたと言う『魔蟲の宝珠』…成程、素晴らしい力ですねぇ…」
「ブロスト様、例のモノがあるであろう場所を見つけました」
「ご苦労、ザハクが頑張ってくれているようですし、私も仕事を始めますかね」
ブロスト達は廃墟の奥へと移動し始めた。
エレファスゾウカブトはメキシコ、コロンビアなどに分布するカブトムシで、世界最重量のカブトムシとして知られている。
非常に大人しく、滅多に歩くことは無い。
エレファスとはラテン語でゾウを意味する言葉で、頭部の角はその名の通りゾウの鼻を思わせる。
そして前脚はとても長く、爪も鋭い。
これはエレファスゾウカブトが果実を好むことから果実が生っている細い枝などにとまる必要があり、長い足の方が適しているからだ。
ゾウカブトの種は幼虫期間がとても長く、3年もの間幼虫のまま過ごす種もいるため飼育には大変な根気がいる。
しかしエレファスゾウカブトは幼虫期間が他のゾウカブト種よりも比較的短い1年半で、ほったらかし飼育でも十分大きくなるので、飼育向きのカブトムシだ。
エレファスゾウカブトは私の好きなカブトムシランキング10位に入っているカブトムシだ。
この世界でも見れるかどうか楽しみにしていたのだが…まさかこんな形で見ることになるとはな…
私はエレファスゾウカブトに鑑定を使い、ステータスを確認した。
ステータス
名前:ザハク
種族:不明
レベル:不明
ランク:不明
称号:不明
属性:不明
スキル:不明
エクストラスキル:不明
ユニークスキル:不明
何だこれは、名前以外不明だって?
今までいろいろな魔物を鑑定してきたが、不明なんてステータスは一度も出なかった。
恐らくだが、魔人であるザハクがあの宝珠を使った事が原因だろう。
今まで鑑定した魔物でスキルとエクストラスキル、ユニークスキルを持っていない奴は何も表示されなかった。
しかし奴は表示されている事から何らかのエクストラスキルとユニークスキルを持っているはずだ、用心しなければ…
「ギュゥゥゥゥ…ギュオオオオオオオオオオオ!!!」
ザハクが私達を見て、雄叫びを上げた!
「ガタク、行くぞ!」
「了解で御座る!」
「ギュオオオオオオオオオオオ!」
ザハクが前脚で私達を攻撃してきた!
私達は後ろに跳び、翅を広げ空を飛びザハクの背後に回り込む!
「《炎の角》、《斬撃》!」
炎の斬撃をザハクの前翅目掛けて撃ちだした!
炎の斬撃がザハクの身体に直撃!
「…なっ!?」
―したが、ザハクの前翅には傷一つ付いていなかった。
なんて硬さだ! 炎の斬撃を受けて傷一つ追わないなんて…!
「ギュオオオオオオオオオオオ!」
ザハクが雄叫びを上げると同時に、地面が盛り上がり、槍の形に変形した!
あれは西の森王が使っていたスキル!
無数の岩の槍が私目掛けて撃ちだされる!
「くっ! 《斬撃》!」
私は岩の槍を避けながら炎の斬撃を撃ちだす!
炎の斬撃は再びザハクの前翅に直撃するが、またも傷一つ付いていない。
くそっ! なら今度は…
「ガタク! 鎌鼬で関節を狙え!」
「了解で御座る! 《鎌鼬》!」
無数の鎌鼬がザハクの前脚関節部に直撃する!
しかし、関節部には傷一つ付いていない!
「駄目か!」
関節部への攻撃も駄目…こうなったら懐に潜り込むしか…
「ギュオオオオオオオオオオオ!」
ザハクが雄叫びを上げると、再び無数の岩の槍が出現する!
「ガタク! 私は奴の腹部に潜り込むから援護してくれ!」
「了解で御座る!」
私とガタクがザハクに突進する!
岩の槍が私達目掛けて撃ちだされた!
「《炎の角》!」
「《風の大顎》!」
私とガタクは炎の角と風の大顎で岩の槍を破壊しながらザハクに突進していく!
「ギュオオオオオオオ!」
ザハクが前脚を振り、私達を攻撃してくる!
「ちぃっ!」
「ごはぁっ!?」
私はギリギリ回避するが、ガタクは前脚をもろに喰らってしまい吹き飛ばされた!
「ガタクっ!」
「心配ご無用! 殿は奴の腹部に!」
私はザハクの腹部に潜り込んだ!
「よし、《炎の角・槍》!」
貫通力に特化した炎の角・槍なら奴の硬い身体も貫けるはず!
「喰らえっ!」
私は炎の角・槍でザハクの腹部を攻撃!
―しようとしたその時、突然ザハクの身体が消えた。
いや! 消えたのではない、これは!
私は空を見上げる。
そこには、翅を広げ空を飛んでいるザハクの姿が!
あの一瞬で翅を広げて空に逃げたのか!
「ギュオオオオオオオオオオオ!!」
ザハクが私目掛けて突進してくる!
「ちぃっ!」
私は空を飛びザハクの突進を回避する!
「ギュオオオオオオオオ!」
ザハクが再び突進してくる!
「くそっ! はあああ!」
私はアクロバットでザハクの突進を回避!
「今だ! 《炎の角》、《斬撃》!」
私は炎の斬撃で開いている背中を攻撃した!
「ギュオオオオオオオ!?」
炎の斬撃を喰らったザハクが悲鳴を上げる。
よし! 初めてダメージが入ったぞ!
ザハクは地面に着地し、翅を収めて前翅を閉じた。
「ギュオオオオオ…」
ザハクが空を飛んでいる私を見ている。
ここからどうするか…やはりもう一度腹部に潜り込んで攻撃するしか…
「ギュオオオオオオオオオオオ!!!」
私が考えていると、ザハクが怒りの雄たけびを上げ、角を振り始めた。
一体何をする気だ? そう思った次の瞬間!
「ギュオオオオオオオオオオオ!」
「何っ!?」
ザハクが私目掛けて振った角が伸びたのだ!
私は伸びてきた角を回避する!
「ギュオオオオオオオオオオオ!」
「ぐぅぅ!?」
しかし伸びた角はまるで鞭のように曲がり私に直撃した!
ザハクの伸びる角攻撃を受けた私の身体はメキメキと音を立てた。
「ギュオオオオオオオオオオオ!!」
「ぐあああああああああああ!?」
ザハクはそのまま角を振り、私を吹っ飛ばした!
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