第82話 捕縛Ⅱ

「…ん、ううん…」


あれ…何で私こんな所で寝ているんだ?


私は周りを見渡す、周りには空の樽が部屋中に散乱していた、それを見て、私は昨日の事を思い出した。


そうだ、昨日は魔獣王とミミズさんと一緒に酒を飲んだ、ミミズさんと魔獣王は物凄いペースで酒を飲み干していたな…私は自分のペースで飲んでいたけど、いきなりミミズさんと魔獣王に無理矢理酒樽一個分飲まされてそのまま意識を失ったんだった。


「グオオオオオオオオオオオオオ…」

「スピ―…ゴォォォォォォ…スピー…」


昨日の事を思い出していると、とても大きないびきが聞こえてきた。


いびきの聞こえてくる方を見ると、魔獣王が身体を仰向けにして寝ていて、ミミズさんは地面に身体が半分埋まった状態で寝ている。


凄いだらしないな…というかミミズさんはどうしたらあんな風になるんだ?


(魔獣王様! 大変です!)


私がそう思っていると、リュシルが慌てながら部屋に入って来た。


(魔獣王様!)

「グオオオオオ、ん、んんん…」


リュシルの声を聞き、魔獣王が目を覚ました。


「朝からうるさいぞ…そんなに慌ててどうしたんだ? 何か不味い事が起きたのか?」

(はい、実は…ユキ様が消えてしまいました!)

「…何ぃっ!?」


さっきまでだらしなく寝ていた魔獣王が一瞬で立ち上がり、リュシルに詰め寄る。


「娘が消えただと!? 一体どういう事だ!?」

(それが…昨日の夜は私の傍で寝ていたはずが、朝起きたらユキ様は居らず、廃墟の中を探しまわったのですが、何処にも居ないのです)

「ま、まさか娘は一人で外に!?」

(恐らく…)

「いかん、一刻も早く娘を探しに行かねば! 今頃雪原の中を迷子になって泣いているかもしれない…待っていろ我が娘! お父さんが今行くからな!」

(魔獣王様、お待ちください!)


魔獣王は廃墟から出てユキを探しに向かった。


「んん? 何じゃ騒がしいのう…何かあったのか?」

「ミミズさん、実は…」


私はミミズさんにユキが居なくなり、魔獣王がユキを探しに行った事を話した。


「全く魔獣王の奴め、その程度の事で動揺するとは…情けないのう」

「まあ溺愛する娘が突然いなくなったんだから仕方ないんじゃない?」


私だって飼育していた虫が突然いなくなったら動揺すると思うし。


「とりあえず心配だし、私達もユキの事を探そうよ」

「えぇぇ…別に良くないか? 儂まだ寝ていたいんだけど…」

「まぁまぁ、取りあえず外に行こうよ」


私達は廃墟から出る。


「リュシル、君のスキルでユキが今何処に居るか分からないの?」

(それなのですが…今朝から探知の調子が悪くて…探知を使うと頭にノイズが響くんです)

「どういう事?」

「恐らくこの周囲に何らかの妨害魔法が張られているのじゃろうな」

「一体誰が何のためにそんな事を?」

「儂が知るわけないじゃろうが」

「仕方ない、闇雲に探しても駄目だろうし、取りあえず魔獣王の足後を追っていこう、皆行くぞ」


私達は魔獣王の足跡を辿って移動し始めた。


















―レイド大雪原、廃墟から最西端の場所。


『ザハク、準備は万端ですか?』

「…無論だ」

『それは良かった、では奴を捕らえ次第私も動きますので、《総ては我らが主、魔人王様のために》』

「…《総ては我らが主、魔人王様のために》」


光る球体が空に飛んで行った。


「…」


ザハクが後ろにある檻を見る。


「クーン…」


檻の中には、全身を鎖で縛られたユキが入っていた。


「このような武人にあるまじき行為をせねばならぬとは…しかし、総ては魔人王様への忠義のため…今は作戦に集中するのみ」

「ザハク様! 奴です!」

「! 来たか…」


ザハク達が居る場所に魔獣王がやって来た。


「何だこいつら…人間か? だが人間とは匂いが少し違うな…! あれは!」


魔獣王は檻の中で鎖で縛られているユキを発見した。


「クーン!」

「娘! お前ら娘に何をしてやがる!」

「動くな!」


ザハクの言葉と共に、魔人たちが一斉に武器をユキに向けた。


「娘!」

「魔獣王ヴォルグよ、そこから一歩でも動けば、貴様の大事な娘を殺すぞ」

「クーン…」

「何だと…お前ら何が目的だ!」

「今だ! 起動!」


ザハクが合図と同時に、魔獣王の周りを囲むように六本の柱が出現した!


「何だ!? ぐぅっ!?」


六本の柱から光の鎖が現れ、魔獣王は身体を縛られて地面に倒れた!


「う、動けん…何だこの鎖は!?」

「無駄な抵抗はしない事だ、その鎖は貴様の力では決して壊すことは出来ぬ、そしてその鎖は徐々に貴様の身体から力を吸い取って行く、数時間もすれば貴様は死に至るだろう」

「くそっ…娘ぇ…」

「ザハク様!」


後方から、部下が慌ててザハクの元にやって来た。


「どうした?」

「謎の魔物達が部隊と交戦中だと言う報告が!」

「何!? 魔獣王のしもべ共か!?」

「それは分かりませんが、話では六本の脚に固い甲殻を持った一本角の魔物がいるとか…」

「何っ!? まさかサイクロプスを倒したと言う従魔か!? アメリア王国から姿を消したと聞いていたが、よもやこの大雪原に居るとはな…」

「どうしますか?」

「決まっている、その者共を最優先で攻撃するよう全部隊に伝えろ!」

「了解しました!」

「一本角の魔物…貴様はこのザハクが討ち取ってくれようぞ!」

















「第43回次回予告の道ー!」

「さあ今回も始まったこのコーナー!」

「次回は謎の勢力との対決だね」

「うむ、奴らは一体何者なのか、その目的は何なのか? それは次回で分かるかもしれんぞ!」

「それでは次回『黄のザハク』!」

「「それでは、次回をお楽しみに!」」


・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので、次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意ください。

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