第75話 レイド大雪原Ⅰ

私達はリュシルの道案内でレイド大雪原に行くため北へと出発した。


道中、特に問題は何も起こらず、私達は順調にレイド大雪原へと向かっていた。


そして大樹海を出て二週間、そろそろ着いても良いはずだが…


私がそう考えながら歩いていると、目の前に岩山が見えてきた。


「ヤタイズナ様、あの岩山に洞窟があります、その洞窟を通ればレイド大雪原に着きます」

「洞窟を通るのか、分かった」


私達はリュシルに案内され、目の前の岩山にあるという洞窟に向かった。












私達は岩山の洞窟に入り、洞窟内を進む。


「この洞窟、自然に出来た洞窟なのかな…」

「薄暗くて気味悪いのう、儂の作った地底洞窟とは全然違うのじゃ」

「…大樹海にある地底洞窟と全然変わらないと思うけど」

「馬鹿者! 儂が作った地底洞窟とこんな洞窟を一緒にするでない!」

「いや一緒でしょ? あっちも結構薄暗くて不気味だし」

「何じゃとぉ!?」

「非常食殿、声をもう少し落としてほしいで御座るよ」

(そうだよーこえがどうくつなのなかでひびいてうるさいよー)

(そうです、非常食殿はもう少し静かにして下さい)

(非常食さんうるさいです)

(俺、非常食、うるさい、言う)

(本当、うるさいですわ)

(僕もうるさいと思いましたね)

「俺もうるさいと思ったぜ」

「お主ら最近儂の扱いが更に酷くなってないか⁉ 儂泣くぞ⁉」

(ミミズさん様、私も少しうるさいと思いました)

「お主もか!? と言うか変な名前に聞こえるから様付けは止めろと言ったじゃろうが! もう良いわ! お主らの言う通り静かにしてやるわ!」


そう言ってミミズさんは私の前胸部の角に巻き付いてふてくされる。


「やれやれ…リュシル、あとどれくらい歩けば出られるんだ」

(あと少しです…ん?)


リュシルが歩くのを止める。


「どうしたんだ?」

(前方より何かが凄い速さで向かって来ています、ご注意下さい)

「何かが? 分かった」


私は戦闘態勢を取って前を見る。


カサカサカサカサカサ…


すると前から凄い速さで何かがこちらに向かって来た!


何かはそのまま私に襲い掛かって来た!


「《炎の角》!」


私は炎の角で何かを両断した!


両断された何かは地面に落ち、ビチビチと暴れる。


「こ、こいつは!」


私は地面に落ちた何か見る。


胴体はムカデのようだが、身体は短く、細長い脚が何本もある、間違いない!


「ゲジゲジじゃないか!」


ゲジはムカデ鋼ゲジ目に属する虫だ。


伝統的にはゲジゲジと呼ばれるが、ゲジが現在の標準和名になっている。


名前の由来は祈祷をして憑き物を落としたり、病気を治したりする僧や、修験者(しゅげんじゃ)、主に山伏などの事を験者(げんじゃ)と呼ぶのだが、動きが素早い事から験者が訛ってゲジと呼ばれるようになったと言う語言説がある。


身体の形態はムカデと共通する部分が多いが、足や触角が長く、身体は比較的短いので見かけはムカデとは随分異なっている。


ゲジの最大の特徴は何と言っても素早さだ、ムカデが身体をくねらせて移動するのに対し、ゲジは30本もの足を動かして滑るように直進して移動するのだ。


身体より長い足と触角、背中には大きな気門、さらに他のムカデと異なり、昆虫と同じような一対の複眼に似た偽複眼を持ち、高い視覚性を持っている。


食性は肉食でゴキブリやカマドウマなどの昆虫を食べる。


またゲジは高い運動性能を持っていて、低空飛行してきた飛行中の蛾をジャンプして捕らえられるほどだ。


また、敵に襲われると自身の足を自切する、切れた足はしばらく動くので、敵がそれに気を取られている間に猛ダッシュで逃げるのだ。


自切した足は脱皮を何回か繰り返すうちに自然と再生する。


ちなみにゲジは人間にとっては基本無害な虫でゴキブリなどの衛生害虫と呼ばれる虫達を捕食してくれることから人間にとっては益虫なのだが、その見た目と予想以上に早く走る姿に嫌悪感を持つ人が多く、ゴキブリ以上に嫌われて不快害虫の扱いを受けることもある。


益虫なのに害虫。


少し可哀想な虫なのだ。



いやー、しかしこんな所でゲジゲジに出会えるとは…しかし大きいなー、一メートルはあるぞ。


私はゲジゲジが結構好きなのだ。


あの外見から嫌われているのは仕方ないとは思う、だけどよく見るとゲジゲジって可愛い顔しているんだよなー。


いやー懐かしい、私が人間だった頃は家に出てきたゲジゲジを捕まえて観察してたなー、いやー懐かしい…


(ヤタイズナ様、どうしましたか⁉ いきなりブツブツと小声で⁉)

「またか…今はそれどころじゃないぞ! 早く戻ってこんか!」

「あ痛っ!?」


前胸部の角に巻き付いていたミミズさんが角から離れて私を叩いた。


いかんいかん、またトリップしていたか…


「痛いよミミズさん…」

「そんな事言っとる場合か! 前を見るのじゃ!」

(これは結構面倒な事になりましたね…)


私はミミズさんに言われて前を見る。


カサカサカサカサカサカサカサカサ……


何か前から大量の足音が…!? あれは!?


何と前から大量のゲジゲジ達が私達に向かって来ていたのだ!


「凄い数だ! これだけの数のゲジゲジが集まっている所なんて生まれて初めて見たよ!」

「喜んでいる場合か!」


ミミズさんに怒られてしまった。


まあ確かに結構面倒そうだな…


私はゲジゲジの一匹を鑑定し、ステータスを確認した。













ステータス

 名前:無し

 種族:ゲジ・ゲジ

 レベル:10/35

 ランク:C

 称号:無し

 属性:地

 スキル:俊足












名前がまたそのまんま!


間に点付けただけって…オ・ケラみたいだな…


そう言えばあいつ今何処に居るんだろな…


っとそんな事考えている場合じゃないな。


相手はCランクだがあの数だ、油断していたらやられてしまうかもしれない。


「皆、行くぞ!」

「了解で御座る!」

(わかったー!)

(全て切り殺してやります!)

(この狭い場所では動きが制限されてしまいますけど、やってやります!)

(俺、奴ら挟み殺す、言う!)

(私の鎌で奴らを捕まえて食べてやりますわ)

(僕は皆を援護しますね)

「ミミズさんとバノンは後ろで隠れていてくれ」

「分かった!」

「さっさと倒すのじゃぞ!」


ミミズさん達が隠れると同時に、ゲジ・ゲジ達が私達に飛び掛かって来た!

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