第62話 アメリアからの旅立ちⅢ

夕食を済ませてからしばらくすると、ウィズが家に帰って来た。


「ただいまー!」

「おかえり、遅かったね」

「ちょっとお姉ちゃんと話してたのー、その後夕飯をごちそうしてもらったんだー」

「そうだったのか、所で王城の食事ってやっぱり美味しかった?」

「うん! たまにごちそうになってるんだけど、もう頬が落ちちゃいそうなほど美味しいんだよー!」

「そんなに美味しいのか…」


私も一度食べてみたいな…


「何じゃ、そんなに美味い物があるのか?」

「そ、それ程絶品の食べ物があの城にあるので御座るか?」

(ぼくそれたべたーい♪)

(私も食べてみたいです)

(ゼリーより美味しいんですか?)

(俺、食べたい、言う)

(聞いているだけで涎が出てきましたわ)

(僕も食べたいですね)


ウィズの話を聞いたミミズさん達が集まって来た。


さっき食事を済ませたばかりだと言うのに…全く食い意地が張ってるな…私もだけど。


明日も早いので私達はもう寝ることにした。








翌日。


私達は王様から美味しい食べ物を貰うために城に向かった。


城に着くと、爺やさんがこちらにやって来た。


「バノン様、ウィズ様、おはようございます」

「おはようございます」

「おはようー爺やさん!」

「只今お約束していた物を持ってきますので庭園にてお待ちくださいませ」

「分かりました」


爺やさんの言葉を聞き、庭園に行くと、オリーブが椅子に座って紅茶を飲んでいた。


「お姉ちゃーん! おはよー!」

「ウィズ、おはよう、ヤタイズナさん達もおはようございます」

「おはようございますオリーブ」


私はオリーブの近くに行く、するとオリーブの顔が少し赤くなっている事に気付いた。


「オリーブ、顔が少し赤いですけど、大丈夫ですか?」

「えっ!? い、いえ、大丈夫です、熱はありませんので気にしないでください」

「そうですか? ならいいんですけど…」


その後、しばらく庭園で待っていると、爺やさんがメイド達を連れてやって来た。


メイド達は大きめの木箱を抱えていた。


「お待たせいたしました、こちらが約束の物で御座います」


メイド達は木箱を地面に置き、城に戻って行った。


木箱は全部で3つだった。


「開けても良いですか?」

「勿論です」


バノンが木箱を開けて中を確かめ、木箱の中の物を取り出した。


「…トウモロコシ?」


バノンが取り出したのは金色に輝くトウモロコシだった。


「この国で最も美味な食材、プラチナコーンで御座います」

「プラチナコーン?」

「プラチナコーンはこのアメリア王国の名産品で、その味はまさに絶品だと称される物です、旅の方がこの国に来たときは必ず一個は買っていきます」

「そんなに美味しいのか…食べても良いんですよね?」

「勿論です、生でも食べられますのでどうぞそのまま齧って下さい」


バノンにプラチナコーンの皮を剥いてもらい、プラチナコーンを齧った。


こ、これは!?


「美味い!」


私はあまりの美味しさに叫んでしまった。


何という美味しさだ、まさに絶品!


口の中に入った瞬間素晴らしい甘みが口いっぱいに広がり、幸せな気持ちになる。


こんな…こんなに美味しいトウモロコシは初めて食べたよ!


「そんなに美味いのか…わ、儂にも食わせるのじゃ!」

「拙者も食べるで御座る!」

(ぼくもたべるー!)

(このソイヤーにも食べさせて下さい!)

(私も食べたいです!)

(俺、食べる、言う)

(いただきますわ!)

(僕も食べさせてもらいますね)



私の反応を見たミミズさん達が我先とプラチナコーンを食べ始めた。


「う、美味い! 何なのじゃこの味は!?」

「美味すぎて涙が出てくるで御座るよ!」

(おいしいー! おいしいよー!)

(このソイヤー、あまりの美味しさに感動しました!)

(美味しいですー♪)

(俺、美味すぎる、言う)

(美味しいですわ! もっと食べたいですわ!)

(とっても美味しいですね)

「本当に美味いなこれは」


ミミズさん達があまりの美味しさに感動していた。


そのまま私達はプラチナコーンを一心不乱に食べ続けて、一箱分のプラチナコーンをたいらげてしまった。


「ふぅー…食べた食べた…」

「もう腹いっぱいじゃ…」

「満腹で御座る…」

(おなかいっぱいだよー♪)

「ヤタイズナさん達、凄い食べっぷりだったねーお姉ちゃん」

「ええ…でも沢山食べるヤタイズナさんも素敵…」


オリーブがうっとりとしている、どうしたのかな?


「さて、美味しい食べ物も受け取ったし、私達はギルドに行くとするかな」

「もう行くんですか?」

「はい、ギルドからも美味しい食べ物を貰う事になっているので」

「そうですか…あの、ヤタイズナさん!」

「はい、何ですか?」

「えっとですね、その…」


オリーブの顔がどんどん赤くなっていく、その隣でウィズが「お姉ちゃん、頑張って!」と言っている、何を頑張るんだ?


「その…ヤタイズナさんが大樹海に帰る時、私ヤタイズナさんにプレゼントしたいものがあるんです」

「プレゼント? 何ですか?」

「それは言えません、当日を楽しみにしていて下さい」

「分かりました、楽しみにしていますね、それでは私達はこれで」

「はい、ヤタイズナさん、また明日」


私達はオリーブに別れを告げ、木箱を持ってギルドに向かった。


「しかしプレゼントか…」


一体何だろう? やっぱり前みたいにクッキーかな?


「ふふふー、ヤタイズナさんお姉ちゃんが何をプレゼントしてくれるか気になってるー?」

「ウィズはオリーブが何をプレゼントしてくれるか知ってるの?」

「それは言えないよー、でも楽しみしてたらいいと思うよー」

「そう? それじゃあ楽しみに待つとするよ」


私達は一旦ウィズの家に木箱を置いて、ギルドに向かった。


私達がギルドに着くと、冒険者達がバノンに挨拶をしていた。


ギルドだとバノンはもう憧れの存在のようになっているみたいだな。


その後、私達はギルドマスターの部屋に入った。


「お祖母ちゃーん」

「ウィズ、よく来たね、ほらウィズの好きなメロンの飴だよ」

「わーい! お祖母ちゃん大好きー!」


…ひょっとしてウィズが来ると毎回このやり取りをやってるのだろうか?


「あのー…」

「おっと、すまないねぇ、約束の報酬はあそこに置いてあるよ」


ギルドマスターが部屋の隅にある一つの木箱を指差した。


あれ? あの木箱って…


「ひょっとしてプラチナコーンですか?」

「何だ、知ってるのかい?」


やはりプラチナコーンだったようだ。


私は城で貰ったプラチナコーンの事をギルドマスターに話した。


「被っちまったのかい…そいつは悪いことしちまったね」

「いや、別に良いですよ、あれ美味しいし」

「そう言ってもらえると助かるよ、それでウィズから聞いたけど明日帰るんだって?」

「はい、そうです」

「そうかい、あんた達には色々と世話になったね、ありがとうよ」

「こちらこそ、お世話になりました、それじゃあ私達はこれで」

「お祖母ちゃんまた来るねー」


ギルドを後にした私達はウィズの家に戻り、帰りの支度をし、その後家で食事を済ませてゆっくりと休んだ。










―翌日。


私達は朝早くから王国正門に来ていた。


私達を見送るためにオリーブが爺やを連れて馬車でやって来た。


さらにウィズがギルドマスターを連れてやって来たのだ。


ギルドマスターと爺やさんが一触即発の空気になりかけたがウィズが何とかしてくれた。


「ヤタイズナさん、久しぶりにヤタイズナさんに会えてとても嬉しかったです、それでこれを受け取って下さい」

「これは…」

「クッキーです」


やっぱりクッキーだったか。


「ありがとうございます、帰りの道中に食べさて貰いますね、それでは…」

「あっ、待ってください、その…プレゼントはまだあるんです…」

「? 他にまだプレゼントがあるんですか?」

「はい…」


オリーブの顔が真っ赤になっていく。


「あの、ヤタイズナさんを驚かせたいので目を閉じていてくれませんか?」

「はい、分かりました」


オリーブの言葉を聞き、私は目を閉じた。


一体どんなものをくれるのだろうか? 驚くほど美味しい物とか?


私がそう考えているとオリーブが近くに来たのを感じた。


そして。




「ヤタイズナさん…大好きです」



―チュッ



その言葉の後に、口に何か柔らかい物が当たった。


………んっ?


何が起きたのか分からない私は目を開けると、顔を真っ赤にしたオリーブが凄い速さで馬車に乗る光景が見えた。


「お姉ちゃん、おめでとー!」

「こいつはまた情熱的だねぇ…」

「姫様…そこまでヤタイズナ様の事を…」


ウィズ達が何か騒いでいる、どういう事だ?


「ミミズさん、オリーブは一体何をしたの?」


私はミミズさんに聞いた。


「…気付いとらんのか? お主接吻されたのじゃぞ?」

「…接吻?」

「分からんのか? キスじゃキス」

「…あー、成程」


そうか、私はオリーブにキスされたのか…キス…


「キスぅ!?」

「落ち着かんかたわけが」

「え、キス!? 私オリーブにキスされたの!?」

「だからそう言っとるじゃろうが」

「何で!?」

「何でって…それぐらい自分で考えんか馬鹿者が」


ど、どういう事だ…何て私はオリーブにキスされたんだ!? 分からない、今までこういう事に興味が無かったから全然分からない!


一体どういう事なんだぁぁぁぁぁぁ!?






―こうして、私は一つの悩みを抱えて大樹海に帰ることになった。











「第30回次回予告の道ー!」

「さぁ今回もこのコーナーが始まったで御座るよ!」

「おい待てこらぁ! レギオンの次はお前かぁ!」

「どうしたので御座るか非常食殿?」

「どうしたもこうしたもないわ! 久々のこのコーナーだと言うのにまた乗っ取られるのか! と言うかヤタイズナの奴はどうしたのじゃ!」

「殿はしばらくこのコーナーを休むと言っていたで御座る」

「あ奴め…」

「さて、それでは次回予告を始めるで御座る!」

「勝手に進めるな!」

「大樹海に戻った殿は非常食殿と一緒にある場所に向かうので御座る、そこは殿が生まれた場所であり、非常食殿と出会った場所…そして遂に殿は奴との戦いに向かうので御座る! 次回『地底洞窟再び』!」

「ちょっと待て、ひょっとして次からも他の奴がこのコーナーを乗っ取るのではないだろうな!?」

「それでは、次回をお楽しみにで御座る!」



・注意、このコーナーは作者の思い付きで書いているので次回タイトルが変更される可能性があるのでご注意下さい。

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