第60話 アメリアからの旅立ちⅠ

私達はオリーブに会いに庭園に行くと、オリーブが蝶と戯れていた。


「お姉ちゃーん! 来たよー」


ウィズがオリーブ向かって走っていき、オリーブに抱き着く。


「ウィズ、帰って来たのね、魔物討伐の話は聞いたけど大丈夫だった? 怪我は無い?」

「うん! ヤタイズナさん達のおかげで怪我一つないよー」

「それは良かったわ、ところでウィズ、ヤタイズナさん達は一緒に来てるの?」

「うん! あそこにいるよー」


ウィズの言葉を聞き、オリーブが私達に気付いた。


「!」


オリーブの視線が私に止まり、私を見つめる。


「お姉ちゃん、どうしたの?」

「や、ヤタイズナさんが…」


オリーブが震え始めた、どうしたんだ?


「や、ヤタイズナさんが…すっごくカッコよくなってるぅ!」


オリーブが目を輝かせて叫んだ。


「ウィズ! ヤタイズナさんが、ヤタイズナさんがすっごくカッコよくなってるよ!」

「うん、ヤタイズナさん進化したんだよー」

「そうなの!? 凄い!」


オリーブがとてもはしゃいでいる。


私はオリーブの元に向かった。


「オリーブ、数日ぶりですね」

「おかえりなさいヤタイズナさん、はぁぁ…近くで見るとさらにカッコイイ…」

「ウィズが言ったとおり進化しまして、どうですか?」

「とてもカッコイイです! 前のヤタイズナさんも素敵でしたけど、今のヤタイズナさんは漢らしくてとてもカッコ良くて素敵です…あの、ヤタイズナさん、進化したヤタイズナを触りたいんですけど、良いですか?」

「はい、良いですよ」

「ありがとうございます! それでは…」


いつものようにオリーブが私を撫で始める。


「はぁぁ…前より触り心地が素晴らしいです…」


オリーブがとてもうっとりとした表情で私を撫で続ける。


「うふふふ…」

「お姉ちゃんとっても嬉しそー、あ、私クッキーと紅茶を貰ってくるねー」

「さて、いつものように長くなるじゃろうし、儂らはクッキーを食べて待つとするかのう」

「そうだな」

「クッキーを食べるで御座る!」

(ぼくくっきーたべたーい♪)

(あの美味なるクッキーをまた食べられるとは…このソイヤー感激です!)

(私はゼリーが食べたいですー♪)

(俺、菓子食べる、言う)

(お菓子をお腹いっぱい食べたいですわ)

(僕もクッキーを食べたいですね)


ミミズさん達はもうこの展開に慣れたのか、すぐにティータイムを始めようとしていた。


毎回思うけど、私もクッキー食べたいなぁ…


「うふふふふ…」


こうして私はいつものようにオリーブに撫でられ、ミミズさん達はティータイムを満喫していた。














…二時間後、オリーブは満足して私を撫でるのを止めた。


「はぁぁ…ヤタイズナさん、撫でさせてくれてありがとうございました、とても幸せな時間でした…」

「それは良かったです、所でオリーブ、私達そろそろ大樹海に帰ろうと思いまして」


私がそう言うと、幸せそうな表情だったオリーブの表情が一瞬この世の終わりのような表情になったが、すぐに笑顔になった。


「そ、そうなんですか」

「はい、大樹海に残しているしもべ達の事も心配ですしね」

「そうですよね…そうだ! 実はヤタイズナさんに見せたいものがあるんです!」

「見せたいもの?」

「はい、私の部屋にあるので取ってきますね」


そう言ってオリーブは城内に入って行った。


「見せたいものって何だろう?」

「多分アレかなー」

「ウィズ、オリーブが私に見せたいものを知ってるの?」

「うん、多分だけどねー」

「その見せたいものは一体どんなものなの?」

「それは見てからのお楽しみだよー」

「?」



しばらく待っていると、オリーブが何かを抱きしめて戻って来た。 



「待たせしまって申し訳ありません」

「良いですよ、それで見せたいものって何ですか?」

「はい、それは…これです!」


オリーブが抱きしめていたモノを私に見せた。


「こ、これは!?」


オリーブが私に見せたのは、30センチ程のカブトムシのぬいぐるみだったのだ!


「す、素晴らしい! こんなに素晴らしいカブトムシのぬいぐるみは初めて見ました!」

「良かった、ヤタイズナさんならこれの素晴らしさを理解してくれると思っていたんです!」

「本当に素晴らしい…これは何処で手に入れたんですか?」

「ふふっ、これはですね、ウィズが私に作ってくれたものなんです」

「何ですって!?」


私はウィズの方に振り返る。


「それは本当かウィズ!」

「うん、そうだよー」


何と言う事だ…まさかウィズにこんな才能があったとは、今度私にも作ってもらおうかな…


「それにしても本当に素晴らしいぬいぐるみだ…見てるだけでうっとりしますね」

「そうですよね…私、このぬいぐるみを抱きしめて寝るとヤタイズナさんと一緒に寝ているみたいでとても癒されるんです…」

「カブトムシを抱きしめて寝る…なんて素晴らしいことなんだろうか…」


「…相変わらずあ奴らの会話にはついて行けんのう…」

「全くだな…」


ミミズさんとバノンが小声で何か言っている、どうしたのだろうか?



その後、私はオリーブと一緒に小一時間このカブトムシのぬいぐるみの素晴らしさについて話し合った。

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