第53話 開戦

王国を出発して早一日、遠征部隊は大草原を移動していた。


「そろそろ魔物の群れが見えてきてもおかしくはないはずだ、皆、いつでも戦闘出来るようにしろ! わかったな!」


「「「「「おおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」



バーニャの言葉を聞き、遠征部隊が大声を上げる。


「そろそろか…」

「うむ、まぁゴブリンなぞお主の敵ではないがのう」

「私も頑張るぞー!」


私達が話していると、冒険者の一人が叫んだ。


「副ギルド長! 遠方より複数の魔物がこちらに接近して来ています!」


遠征部隊に緊張が走る。


私達は前に出て、遠方を見る。


視線の先に見えるのは、およそ600は超えるゴブリンの集団。


「ギャギャギャー!」

「ギャッハハー!」

「ウキャッギャー!」


ゴブリンたちはグレーウルフに跨り、錆びた剣、木の槍などを持ち、猿のように甲高い声を上げながら、こちらに接近して来ていた。


私は接近するゴブリンの一体に鑑定を使いステータスを確認した。










ステータス

 名前:無し

 種族:ゴブリン

 レベル:2/5

 ランク:E

 称号:無し

 属性:地

 スキル:無し










他のゴブリンも鑑定してみると、全て同じステータスだ、やはり一体一体は強くないようだ。



「全員、戦闘準備!」


冒険者と王国兵士達が武器を構える。


「行くぞおおおお!」

「「「おおおおおおおおおおおおお!!!」」」


遠征部隊がバーニャを先頭に動き出した!


遠征部隊とゴブリン達がぶつかり合い、戦闘が始まった!



「よし、私達も行くか、ウィズ、すまないけどバノンとミミズさんを守っててくれないか?」

「分かったー! 任せといて!」



バノン達をウィズに任せて、私達はゴブリン達に突撃する!


「《炎の角》!」


私は炎の角を振りゴブリン達を焼き殺していく!


「ギャバーッ!?」

「キャギャーッ!?」


ゴブリン達は炎に包まれ、地面に転がり落ちるが、グレーウルフはそのまま私に向かって来る!


「オラァッ!」


私は炎の角で突進してきたグレーウルフを焼き殺す!


「ギャギャー!」

「ウッキャギャー!」


ゴブリン達はひるむことなく私に突撃してくる!


「殿! 上に飛んでくだされ!」


ガタクの周りに風の刃が出現した!


「喰らうで御座る!《鎌鼬》!」


ガタクが風の刃を射出する!


私は高くジャンプし、鎌鼬を避ける。

そして鎌鼬は私の前に殺到していたゴブリンとウルフ達を切り裂く!


「ギャバーッ!?」

「ウギャーッ!?」


切断されたゴブリンの四肢が大草原に飛び散る!





(くらえー!)


スティンガーの尻尾の毒針がゴブリン達を突き刺す!


「ギャバッ!?」

「ギャギャ!?」


毒を注入されたゴブリン達は痙攣し、泡を吹いて倒れる!


「ギャギャーッ!」


スティンガーの後ろからゴブリンが迫る!


(死ねぇ!)


スティンガーを襲おうとしたゴブリンがテザーの鋏によって両断される!


「ウギャギャーッ!?」


両断されたゴブリンが地面に転がる。


(ありがとーテザー!)

(俺、礼いらない、言う)





(行きますよー! 《風の翅》! 《鱗粉》!)


パピリオの翅が風を纏う!


(えーい!)


ハピリオが翅を羽ばたかせると、突風が起きた!


「ウギャギャ!?」

「ギャッギャ!?」


ゴブリン達が突風に飛ばされ、そのまま地面に激突する!


「ギャバ…」

「ガババ…」


パピリオに吹き飛ばされたゴブリン達が泡を吹き痙攣する。


パピリオのユニークスキル鱗粉は様々な症状を起こす鱗粉を発生させるスキルだ。


先程の突風にはパピリオの鱗粉が混ざっていて、それを喰らったゴブリン達は、麻痺、毒、幻覚など様々な症状を起こしたのだ。


(よーし! もう一回、えーい!)

「ギャギャーッ!?」

「ウキャギャー!?」


パピリオが再び鱗粉入りの突風を起こしゴブリン達を吹き飛ばす!





(我が技…受けてみよ! 《斬撃》!)


ソイヤーの斬撃がゴブリンを両断する!


「ギャギャーッ!」

「ギャギャハー!」


ゴブリン達が武器を構えソイヤーを襲う!


(そのような攻撃がこの私に当たるか! 《斬撃》!)


ソイヤーはゴブリン達の攻撃を難なく避ける、そのまま斬撃を喰らわせる!


ゴブリン達は胴体が真っ二つに分かれて地面に落ちる!




(ふふふ、さぁ私の元へ来なさい、《花の鎌》!)


カトレアの鎌から花の香りが漂う。


「ギャハ…」

「ウキャハハー…」


匂いを嗅いだゴブリンとウルフ達がうつろな表情でカトレアに歩いて行く。


(ふふふ…そうよ、もっと私の元に来なさい)


カトレアの周りに大量のゴブリンとウルフが集まっていく、その光景はまるで砂糖に集まる蟻達のようだ。


(たくさん集まりましたわねー、それじゃあ皆さん…さようなら!)


カトレアが鎌を振り、ゴブリンとウルフの首を刈っていく!


ゴブリン達はうつろな表情で声も上げずに首を刈られていく!


胴体が地面に転がり、辺りに鮮血が飛び散る!


(ふふふ…)


カトレアが鮮血に濡れた鎌を舐める。


(味は悪くないですわね…さぁ…もっと集まってきなさい…私の美味しい御飯たち)


カトレアは再び花の鎌でゴブリン達を集め始めた。





「ギャハハーッ!」

「キャッハハーッ!」


数体のゴブリン達がバノン達に迫る!


「ぬおお!? こっちに来たぞ!?」

「皆下がっててー! 私が皆倒してやる!」

「ギャッハハー!」


ゴブリンがウィズに攻撃する!


ウィズは攻撃を避け、大剣で構え大きく振りかぶった!


「えーい!」

「ギャギャーッ!?」


ゴブリンは頭から大剣で真っ二つに両断された!


ゴブリン達がウィズに殺到する!


「えい! とりゃー!」


ウィズがゴブリン達を斬り殺していくが、圧倒的な数の差に苦戦している!


「ウィズ! 大丈夫か! 助けに来たぞ!」

「ゴルトさん! ありがとー!」


ゴルトが仲間を2人引き連れてウィズを助けに来た!


「ふんっ!」

「ギャバッ!?」


ゴルト達が槍でゴブリンを突き殺していく!


しかしゴブリン達は続々とウィズ達に集まって行く、これではキリがない!



バノン達はミミズさんが突貫で掘った穴に避難し、ウィズ達を心配そうに見ている。


「おい、やばいんじゃないか?」

「やばいんじゃないではなくやばいのじゃ、どうしたもんかのう」



ウィズが苦戦していると、そこにベルがやって来る。


(ウィズさん、大丈夫ですか! いまサポートしますね! 《闘志の鈴音》!)


ベルが翅を立て、鳴き声を上げる!


リリリーン! リーン! リリリーン! リーン! リリリーン…


普段の鳴き声とは違い、荒々しい鳴き声が響き渡る。


「何これ!? 体に力が湧いてくるよー! よーし!」


ベルの鳴き声によってウィズ達は力を増し、ゴブリン達を斬り殺していく!






「《炎の角》!」

「ギャバーッ!?」

「《風の大顎》!」

「ギャギャー!?」


私とガタクは次々とゴブリン達を殺していく!


とその時!


「オーガだ! オーガが来たぞー!」


私は声のする方を向き、前を見る。


前方からウルフよりも一回り大きい熊のような魔物に跨る体長二メートル半はある茶色の体色の魔物が見えた。


「あれがオーガか」


私は鑑定を使い、オーガのステータスを見た。









ステータス

 名前:なし

 種族:オーガ

 レベル:15/35

 ランク:C

 称号:無し

 属性:地

 スキル:怪力

 







Cランクか、今の私ならそこまで苦戦はしないだろうが、油断はしない方が良いだろう。



オーガの後方から次々とオーガがやって来る、その数10体!


「グオオオー!」

「ぐああああ!」

「ぎゃああああ!」


オーガは手に持っている鉄の棒を振り回し、冒険者達を吹っ飛ばしながら突き進む!


「こっちに来る…行くぞガタク!」

「了解で御座る!」


私とガタクはオーガに突撃する!


「《鎌鼬》!」


ガタクが鎌鼬でオーガが乗る熊型魔物の足を切り裂く!


熊型魔物はそのまま地面に倒れるが、オーガは熊型魔物から飛び降り私達に突撃する!


「グオオオー!」


オーガが鉄の棒を振る!


私とガタクはオーガの攻撃を高くジャンプして避ける!


「ガタク! アレをやるぞ! 《炎の角》!」

「了解で御座る! 《風の大顎》!」


降下する私達はオーガを同時に攻撃する!



「「《斬撃!》」」

「グオオオオオオオオ!?」



炎と風の衝撃波がオーガの身体を三つに切断した!


「よし! この調子で他のオーガも片づけるぞ!」

「了解で御座る!」



他のオーガが私達に向かって来る!


「オラァ!」

「グオアアア!?」


私は炎の角で向かって来るオーガを焼き切って行く!


確かにゴブリンよりも手強いが、今の私なら楽に倒すことが出来る!


「喰らうで御座る!」


ガタクが風の大顎でオーガを真っ二つに両断する!


「グゥ…グオオオオオ!」


私達に勝てないと察したオーガ達が私達を避け冒険者達を襲おうとする、しかし。



(えーい!)

「が…グゥウウウ!?」

(あら、食べ応えがありそうな御飯ですわね)

「が…あぁぁぁ…」


パピリオの鱗粉で痙攣して倒れたり、カトレアの花の鎌によってうつろな表情でカトレアに近づき首を刈り取られ、オーガは全滅した。


「ギャヒ―!」

「ヒヒー!」


オーガが全滅したと知ると、残ったゴブリン達はあっという間に退散していった。


「取りあえず何とかなったな」


私は隠れているミミズさん達の元に向かった。







今回次回予告の道はお休みです

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